11月11日、アニメーターや演出家らで構成された一般社団法人「日本アニメーター・演出協会」(JAniCA)が、「アニメーション制作者 実態調査報告書 2019」を公開しました。調査は2018年11月6日~12月19日にかけて行われ、382件の回答(有効回答率24.2%)に基づくものとなっています。
なお、JAniCAは2015年にも同様の調査を行っており(調査期間は2014年8月1日~9月30日、有効回答数は759件)、公式サイトから当時の結果を確認できますので(気になる方はこちらから)、見比べながら、収入が安い安いと言われているアニメクリエーターの実態調査を紹介いたします。
■平均年収は440万! アニメクリエーター、意外ともらっていた?
まずはざっくりと回答者の年間平均収入(2017年)を紹介すると、約441万円(中央値は370万円)。日本全体で見ると平均年収は約420万円と言われていますから、「意外ともらっているじゃん」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、この調査はシナリオ、絵コンテ、監督、演出、原画、動画、編集、プロデューサー、制作進行など、アニメ制作に携わるあらゆるクリエーターを合算した数字。19.4%が600万円以上の年収を得ている一方で、約4割が年収300万円以下で、さらに100万以下が8.3%、100万以上150万以下も5.3%存在します。
さらにアニメクリエーターはフリーランスの方が多いです。会社員の年収420万円と同じようには考えない方がいいでしょう。なかなかシビアです。
また、今回の調査では、クリエ―ターの職業別の数字は出ていませんが、2015年版の調査では各職ごとの数字が出ていますので、紹介してみます。
絵コンテ 372.3万円 | 監督 648.6万円 |
演出 380.3万円 | 総作画監督 563.8万円 |
作画監督 393.3万円 | 原画 281.7万円 |
LOラフ原 234.1万円 | 第二原画 112.7万円 |
3DCGアニメーション 383.9万円 | 動画チェック 260.7万円 |
動画 111.3万円 | 色彩設計 333.5万円 |
仕上げ 194.9万円 | キャラクターデザイン 510.4万円 |
背景美術 341.6万円 | 版権 342.9万円 |
撮影 319.4万円 | プロデューサー 542.0万円 |
制作進行 309.2万円 | その他 389.4万円 |
「アニメーターは年収がわずか111万円!超ブラック!」みたいな文脈で語られる記事やコメントをご覧になったことがある方も多いと思いますが、この「111万円」という数字はこの調査が出展となっています。
動画はもちろんですが、第2原画の112.7万円、仕上げの194.9万円という数字にも戦慄させられますよね。2015年では年収100万以下が8.2%、100万以上150万以下が6.6%、一方で600万以上が7.7%となっています。低賃金にあえぐクリエーターの存在割合はあまり改善されているようには見えません。
ちなみに2015年版の平均年収(2013年)は332.8万円で、2015年から2019年で平均年収が110万円も上がっています。アニメ業界に携わるクリエーターの平均年収がわずか4年間で、本当に100万以上も上がっているのなら喜ばしい限りですが、ふと「この調査、信用できるのだろうか」という想いが脳裏をよぎりました。
2015年は有効回答数759件で、男性60.1%、女性39.3%、平均年齢は34.27歳。2019年は有効回答数382件、男性57.%、女性41.3%、平均年齢は39.26歳と、回答数に違いはあれど、男女の構成比などはあまり変化がありません。
平均年収の上昇に平均年齢の上昇が関連しているのかもしれませんが、回答数に大きな差があるのが気になるところ。しかし、ここまで記事を書いてきて、ボツにするのはあまりにもったいないので、違和感を振り払い、強引に先を進めます。
アニメーターの平均年収は420万円!? JAniCA「アニメーション制作者実態調査2019」を読み解くのページです。おたぽるは、アニメ、話題・騒動、アニメーター、JAniCA、馬場ゆうすけの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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