日本のアニメーターが中国に流出? 「なら中国のアニメ会社で働こう」と思っても就労ビザがなかなかもらえない問題

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イメージ画像/Photo by BriYYZ from Flickr

 先日、中国メディアの『環球時報』に掲載された、「日本がアニメーターの中国移籍を懸念している」とする記事が注目を集めている。

 この記事では日本のアニメ産業が低賃金であることを記し、待遇がよい中国アニメ業界へ転職をすることを望んでいるとしている。記事によれば、中国ではアニメーターは経験5年以上で月給1万8000元(約27万円)であることに加えて、昇給の機会や無料の住居が与えられるなど、日本よりはるかに待遇がいいのだという。

 つい10年ほど前まで「日本の下請けとしては技術の水準が高い」程度だった中国のアニメ産業は急速に発展している。日本国内では知名度は低いが、大人気となるアニメ作品は今年だけに限っても何本も登場している。不安定な雇用契約や低賃金労働に喘ぐなら、中国への移住もありなのか?

 しかし、そうは簡単にはいかない。14億人の人口を抱えて経済発展が著しい中国では外国人への就労ビザの発給に制限を設けるようになっているのだ。

 観光旅行であれば中国はビザなし渡航が可能だが、いざ各種のビザを取得しようとしたら審査が厳格だとされている。SNSに中国政府に反対するようなことを書いたりしたら、ビザが取得できないという説もまことしやかに語られていたりする。

 中国で働くために必要な就労ビザで、もっとも一般的なのはZビザ。これは経験によって点数によってランクに分類されるようになっておりA類・B類・C類にわけられる。A類は、ノーベル賞を受賞しているとか世界的な企業の管理職や技術者など、中国政府としても住んで欲しい人材の枠である。そうした経歴がなくても点数が85点以上ならA類に入ることはできるが、そもそもそんな点数がもらえない。その下であるB類は、それなりに必要とされる人材。C類は言うなれば「来てくれるな」という分類になる。

 さて、この点数であるがネット上にはいくつかの計算式やツールが公開されている。就労ビザが下りる可能性が高いB類は60点以上とされているが、日本で低賃金労働にあえいでいるアニメーターが取得できるかは疑問だ。

 というのも、この計算式では学歴が高く年齢が若く、かつ仕事の経験年数が多いほど点数が高くなる。たとえば20代前半の専門学校卒業後にアニメ会社に就職したけど貧困に喘いでいる人がいたとする。そんな人が年収35万元(約530万円)の中国のアニメ会社の求人に応募し、無事に採用されても就労ビザが取得できない可能性は高い。

 アニメーターになる前は専門学校で学んでいたとすると、学歴はゼロポイント。かつ、経験年数が2年未満だとゼロポイント。中国語が喋れないとこれまたゼロポイントと、まったくの門前払いなのである……。

 これが大卒で、中国語はHSK5級以上(だいたいコミュニケーションできるレベル)。かつ経験年数が10年以上で26歳以上45歳未満だと、就労ビザ取得の可能性は高まる。

 中国政府が求める高度に専門的な人材であれば、点数によらず就労が可能ともいわれるが、そこまでのレベルのアニメーターは限られている。

 日本で貧困に苦しみながらアニメーターをやるなら中国で稼ごう! そんなことを思いついても、決してうまくはいかない。
(文=昼間 たかし)

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