アニメーターの平均年収は420万円!?　JAniCA「アニメーション制作者実態調査2019」を読み解く

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■月の平均休日5.4日　相変わらず過酷な労働状況

　調査報告書はかなりボリュームがあり（2019年81P、2015年123P）、回答も多岐にわたります。とても紹介しきれませんので、印象的な数字を羅列しています。（以下、カッコ内は2015年の数字）

・仕事での契約書の取り交わし状況
「必ず契約書を取り交わしている」が13.9％（25.0％）、「時々取り交わしている」が31.4％（14.0％）

・就業形態
「正社員」14.7％（15.5％）、「契約社員」6.0％（23.1％）、「フリーランス」50.5％（37.7％）

・就業場所
「制作会社」68.3％（90.6％）、「自宅」27.2％（7.1％）

・1日あたりの平均作業時間
平均値：9.66時間（11.03時間）　中央値：10時間（11時間）

・1カ月あたりの平均休日
平均値：5.40日（4.63日）　中央値：5日（4日）

・最長無業日数
平均値：6.90日（6.52日）　中央値：0日（0日）

「最長無業日数」とは、仕事をする意思があっても仕事が入らなかった期間のことです。56.3％が0日と回答していますが、31日以上という人も5.0％いて、平均をとると6.9日になったわけです。

　休日は月に4～6日しかなく、仕事は途切れず舞い込む一方で口約束がほとんどで、長時間労働を強いられている……全体的に改善されつつあるようですが、アニメクリエーターの労働環境は相変わらず過酷です。

■「過労死か餓死の未来しか見えてこない」

　報告書では、アニメクリエーターによる自由回答も掲載されています。

「仕事上の問題」についての回答では、高クオリティー、あるいはデザインが複雑な作画を求められる一方で、低賃金にあえぐ声が多数挙げられています。

　加えて切羽つまったスケジュール、各セクションの知識不足や教育不足、制作会社からの事前の説明がないといった指摘も。

　中には、「過労死か餓死の未来しか見えてこないだけ 鬼畜な無駄の多い重労働と低賃金。毎日踏みにじられる人間の尊厳、作監のいじめ、社長のパワハラ（以下略）」といった、地獄のようなコメントもありました。

　また「技術・技能向上のために必要なこと」という問いには、圧倒的に「報酬アップ」という回答が目立ちました。技術向上の時間やモチベーションを確保するためには、とにかくお金が必要ということなのでしょう。

　なお、「一人で作る」「家でひたすら研究」という声も散見されました。人間関係に悩みを持つアニメクリエーターも少なくないようです。

「今後の仕事計画」では「働ける限り、アニメーション制作者として仕事を続けたい」という回答がぶっちぎりトップの63.4％を占める一方で、アニメ制作を続けながら、他の収入源を探したいという声も目立ちました。ギャラのアップについては諦念の域に達しているのかもしれません。

　報告書の最後には、業界に関する自由意見が掲載されています。製作委員会方式への不審、上前をはねる人間が多すぎるといった声が多い一方で、業界全体として制作本数が多すぎる、制作会社の乱立を憂慮する声も目立ちます。

　制作会社におけるスタッフ間のコミュニケーション不足、教育不足、アニメ業界のルーズさを嘆くクリエーターも見受けられました。さらにやはり職人っぽいタイプが多いようで、周囲のクリエーターの技術不足に憤る声も。技術不足のアニメーターの単価を下げるべき、といった意見もあったり、お子さんが熱を出したのに会社が全く配慮してくれない、3Dに切り替えたほうがいい、フリーランスの不安定さを嘆いたり、制作会社による作画料の不払い、口約束を守らないといった報告もあったりと、読んでいると、暗い気持ちになる意見がびっしりと掲載されています。

　アニメ関連企業は意外と稼いでいますし（参照記事：テレ東アニメは海外で大稼ぎ！ 東宝は過去最高を更新！ なお制作会社は……【アニメ系企業の決算報告まとめ】）、こういったお金が現場に回れば問題の多くは解決しそうな気もしますし、実際制作会社の社員クリエーターの労働環境は改善傾向にあるようですが、まだまだ道半ばといった感じのようです。

　ともあれ、こういったクリエーターの声や現状が世に公表されたのは、有意義なことでしょう。JAniCAには継続的な調査や報告、待遇の改善に期待したいと思います。
（文・馬場ゆうすけ）

 
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