テニミュは男たちの不器用な友情1000本ノック!?  ~男が観てみたテニミュ青春☆観戦記~【Part4】

1410_tenimyu4_03.jpgミュージカル『テニスの王子様』公式サイト(「Dream Live 2014」特設サイト)より。

 そして、「お前を仕上げてやる」と真田弦一郎が貫禄十分に登場。カ、カッコいい! 「オレがお前を仕上げてやる」的な発言、言われてみたいわー、こっちが仕上がりたいわー。青学の部長・手塚国光(キャスト:多和田秀弥)を破った真田と対峙することで、自然と才能を開花させていくリョーマ。「ほう、“無我の境地”を自然に使いこなすところまで来ていたか」と真田を驚かせ、そのまま見事に真田の技も返すのだった。神がかってくる主人公。

 最後は、氷帝の跡部様こと跡部景吾。「ブリザード!」と跡部による相手の死角を狙った技に、リョーマは反応することができない。跡部が技やセリフを放つたびに、悲鳴とともにリョーマより先に客席側で氷の墓標に幸せそうに眠る女性ファンを大量生産。跡部様! 技が違う効力を発揮しています! これはこれで確かに氷の世界か! うん何だ、技として成立してるし、これでいいのか!

 だが、目覚めた主人公は止まらない。最後には、この短時間では破れないのではと思われた跡部の技をリョーマは見事に破り、記憶も取り戻した。跡部もまた試合中にリョーマを挑発しながらも、「再生しろ!」と鼓舞し続けたのだった。グッジョブ・ナイスガイ、イケメン・フォーエバー。ふと周りを見渡すと、女性ファンたちはまだキレイに凍り付いたままだ。しばらくコレ解けなさそうだな……そうか、跡部の標的は元よりリョーマではなく観客……ゴクリと唾を飲むと筆者も安らかに凍り付いた。

 ついにライバルとの戦いを通して、リョーマの記憶が戻った。すると、ライバルたちが『リメンバ~~ パッションッ!』『リメンバ~~ セッションッ!』と歌い出す。イケメンたちが『リメンバ~~……』で溜めてからの『パッションッ!』『セッションッ!』で解き放つ歌詞の衝撃は、1口目はそのダサさが直球すぎて最悪なのだが後味が……あ…後味スゴい。後味長続き。で、だんだん美味しくなって、今や筆者の脳内再生率の高さではダントツNo.1ソングである。この曲に『スクール☆ウォーズ』的なアツいエッセンスを感じられば、男性でも盛り上がれるに違いない。

「時代を変えちまいな、テメエの力でな!」

 のちにそういう跡部様のリョーマに向けた豪快な応援も、ある意味時代を変えちゃったテニミュともリンクして感慨深い。すると、記憶を取り戻したリョーマの後ろのスクリーンに、巨大なサムライのシルエットが浮かび上がる。王子の完全復活である。

 しかし、ここで真田が動いた。「だが、これはどうだ!! 動くこと雷霆の如し!」とリョーマに今まで一度も見せたことのない技「雷」を叩きこむ。なぜ真田は仕上がったはずの主人公にそこまで!? 強力な技を食らったリョーマの運命は!? とにかく真田、カッコいいぞ!

 リョーマ VS 真田の結末が気になりつつも、場面は決勝戦会場へ。四天宝寺中学校(以下、四天)の遠山金太郎(キャスト:松岡広大)がコートに膝をついて倒れ込んでいた。それを平然と見つめるのは立海の幸村だ。遠山は激しく肩で息をしているが、幸村はジャージを羽織ったまま悠然と立ち尽くしている。幸村はジャージを肩から落とさずして、リョーマと互角の実力を持つ遠山をテニスでねじ伏せたのだった。状況を説明すると、遠山もまたリョーマのために決勝戦の時間稼ぎを買って出て、幸村に1球勝負を挑んでいたのだ。

 どんなショットを打っても確実に返してくる“幸村のテニス”は、どこに打っても返されるイメージを相手に植え付けていき、やがて“五感さえを奪う”という。四天の白石蔵ノ介(キャスト:安西慎太郎)が遠山をコートに救護しにいくも、元気な遠山が「あいつのテニス、怖いわぁ…」とのちに恐怖を吐露するほどだ。

 そこから始まる立海メンバーによる“デッドエンド”の歌。青学に力の差と惨めさを植え付けた上で、立海の余裕ぶりを歌ってしまう、これまた凄まじい歌詞の曲だ。幸村の歌う『今お前にやろう、オレの余裕ぅ~』の歌詞が頭にこびりついて離れない。これほどまでに壮大な余裕は観たことがない。本当にスゴい余裕だ。どこまで観客の心を弄ぶ気だ、三ツ矢雄二よ。もう心のキャパ的に余裕ないぞ、こっちは。恐るべしテニミュ。

 いろんな意味で絶望感に襲われていると、突然バックスクリーンに本物の野外のテニスコートの上で歌うリョーマの映像……というか、もはやPVが始まる。すると先ほど戦いを繰り広げたライバルたちも映し出され、試合へ向かうリョーマを微笑みながら見守る……といった、キャストたちがTOKYO DOME CITY HALLを飛び出して実際のテニスコートで撮影した、イメージビデオ兼ミュージックビデオが流れ始めたのだ。

ざざざざ、斬新!

 そして、これまでのシリアスな展開との温度差に困惑する場内。「この演出は……」と息をのんだのが筆者だけではないことが場内から感じられ、少し安心した。その後、リョーマが有明スタジアムに辿り着き、競技場への扉を開けたところでPVが終わると、場内のアリーナ席の後ろからPVにいた本人が登場し、颯爽と舞台へ上がる。

「お待たせ」

 復活したリョーマが、ついに決勝戦の会場で幸村と邂逅したのだ。この「お待たせ」ももっと胸に迫るセリフだったはずだ。仲間たちの友情によって記憶喪失から回復できた感動が、PVのせいで全部飛んでしまった。非道なりテニミュ。そのまま頭を整理する暇を与えず、最後の決戦、越前リョーマ VS 幸村精市の戦いの幕が切って落とされたのだ。

 リョーマは「ツイストサーブ」「ドライブA」「COOLドライブ」と、序盤から必殺技を連打。そのプレイには輝かしいまでのキレが復活している。特に、小越勇輝のフォームの美しさはキャストの中でダントツだった。打撃の軌跡まで本当に美しい、いや“麗しい”のだ。『テニスの王子様』でも錦織圭でも松岡修造でもなく、「テニミュを観てテニス始めました!」という男の子が現れても何ら不思議じゃない。それは「ゴールデンボンバー観てバンド始めました!」と同義である。何のための例えだったか分からなくなったが、とにかくテニミュにそういう新しい可能性を感じたのだ。

 幾多のライバルたちを沈めてきたお墨付きの必殺技だったものの、幸村にはアッサリと返されて得点されてしまう。しかし、リョーマもただポイントを取らせただけではなかった。「あれ? ジャージが肩から落ちてるよ」と、幸村の羽織っていたジャージをコートに落とさせていたのだ。何があっても一度も落とすことのなかったジャージである(中学生のジャージです)。王者の顔に泥を塗る行為だ。カチンときた幸村が「これはジャージを落とすゲームじゃないよ」と返すと、「あっそ! じゃあこのゲームはオレの勝ち!」と応じるリョーマ。リョーマの生意気さが気持ちいい。……何、この感覚は? 時間を追うごとにだんだん何かを開花させられていくよう……テニミュの舞台、怖いわぁ…。

「んじゃ行くよ、神の子さん…!」

 と、リョーマのイケメン生意気フレーズとともにダンサブルな音楽が鳴り響き、いよいよ本格的なラリーが始まった。ここでゾワッと鳥肌立つ。もう完全にテニミュの世界に飲まれているのが自分でもよく分かる。よくよく考えると「リョーマが生意気」というデータは知りつつも、記憶を取り戻した万全な状態の主人公の試合という意味では、やっと第3幕の後半、この決勝戦で初めて観戦できたわけだ。そのストレスがリョーマの生意気なセリフでスカッと発散されていく。むむむ、テニミュのお預け戦略見事なり。すでに筆者は、ラリー音を聴けばヨダレを垂らすパブロフの犬に成り下がっていた。

 埒の明かないラリー戦に痺れを切らしたリョーマは、爆発的なパワーを生み出す「無我の境地」を発動。コートが白いライトで照らされる。過去に対戦したライバルたちの技までも自在に操り、幸村を圧倒しようとするが、「ボールは分身などしない!」「ボールは消えたりしない!」と“確かに!”と頷くしかない理論とともに、どんな打球も打ち返される。幸村の存在によって、テニミュに犯された記憶の中から本来のテニスを若干思い出し始めた筆者。そうだよね、サーブって波動拳じゃないものね、テニスって血塗れにならないよね。ありがとう、幸村! セリフも身のこなしも普通(本来のテニス)だが気品のあるプレイだ、幸村!

 そう思えたのも束の間、リョーマは厳然とテニミュ・ワールド全開だ。何と、先ほど見たばかりの真田の技“風林火陰山雷”の「雷」を使用。憶測だが、元のコンディションまで戻ったリョーマは、真田の新たな技と対峙したことにより、それを破り、会得し、さらにパワーアップしたということだろう。信じ難いことだが、マンガ『ドラゴンボール』なら「スカウターの故障かな?」って侮ってブッ倒されるキャラね、僕が。「フーン、見せたんだ……」と真田を見る幸村。真田に対する冷たさというよりは、ちょっとした幸村の嫉妬心を感じてしまった筆者はもう手遅れだ。

 しかし、「雷」を持ってしても幸村には通じない。追い詰められたリョーマは、さらに「無我の境地」の先へ開眼。歓喜する青学メンバー、驚愕する立海・四天のメンバー。強大なパワーを1カ所に集中する「百錬自得の極み」を発動しショットを放つも、「さして脅威ではない」と幸村にサクッと返される。何も通用しない幸村、強い!

 他者の技を次々と会得し、あまりに早過ぎるスピードで成長してしまったリョーマを見て、真田は経験が伴わず能力を持て余している様子を感じ取り、「あの1年は成長が早すぎた」「時代が創り上げてしまった悲しき産物かもしれんな」と解説。その瞬間、筆者は反射的に場内のファンたちを見回していた。ここにもテニミュが創り上げてしまった情報摂取能力が極めて高く、成長(舞台の観戦回数)・増殖(テニミュクラスタ)の早い悲しきのさn……殺気を感じましたので筆を止めることにしました。

 ここまででも、リョーマ役・小越勇輝の運動量が尋常ではない。桃城たちとの練習から始まり、ライバルたち、そして幸村との試合と計11戦ブッ続けである。感動すら覚えた。どれだけタフなんだ……。まさにこれはスポ根ミュージカル……! リョーマとライバルの戦いの時など、「そんなに本気で試合をして、この後の決勝戦、大丈夫なのかよ……!」と完全に青学のベンチ要員のセリフみたいな心配を口にしていた。

 個人的にライバルたちとの戦いは面白かったが、やはりこれまでの経緯を見ていないため(全国大会 青学vs立海の舞台が初観戦)、多くの女性ファンのように深い読み取りや思い入れができなかった。ここらへんの事情も分かると、よりフィナーレへの感動が高まっていくのだろう。テニミュへの道は始まったばかりということか、2ndシーズン終わったけど。

 リョーマ渾身の技をことごとく返してしまう“神の子”幸村。果たして、この男に死角はあるのか!? リョーマはもっと生意気な口を叩いてくれるのか!? いよいよ最後の戦いもクライマックス! ……え!? まだ続く!? それ、筆者も思った! 続く!

(文/ノグチアキヒロ)

※続きは近日公開!

テニミュは男たちの不器用な友情1000本ノック!?  ~男が観てみたテニミュ青春☆観戦記~【Part4】のページです。おたぽるは、その他演劇の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!