「テニミュ」とは一体何だったのか ~男が観てみたテニミュ青春☆観戦記~【Part1】

1409_tenimyu_2.jpg会場で販売されていた公演パンフレットと生写真。

 夏が足早に過ぎ去った9月上旬、テニスプレイヤー錦織圭選手の全米オープン男子シングルス準優勝という活躍に日本中が沸きに沸いていた。

 グランドスラム制覇こそならなかったものの、日本人初となる決勝進出という快挙でもあり、連日メディアによる報道合戦が激しく繰り広げられた。さらに同選手の凱旋帰国も重なり、錦織フィーバーは過熱。久々に松岡修造の都市伝説以外で日本全土を巻き込んだテニス熱の盛り上がりをひしひしと感じていた。それに乗じて、高校の体育の授業以来触ったことすらないラケットを振ってみたくなるという卑しむべきミーハーな衝動を必死に抑えていた頃、1本の電話が鳴った(LINEが入った)。「サービスエースは許さん!」とメッセージを即確認してみる。

「中学生テニスの全国大会決勝戦を観てみませんか?」

 中学生? はて……何それ。さらに、全国大会の決勝戦だなんて競技としても相当レベルの高い話。そんな汗と情熱と青春が詰まった神聖な場に筆者ごときが何をしに? 質問を返してみる。

僕「何事ですか、それは?」
おたぽる「テニミュです」

 あ、テニミュのことね。確かに汗と情熱と青春が詰まった神聖な場ね。想定していたものとはだいぶ違ったけど、だいたい方向性は同じはずだ、たぶん。

 東京では全米オープンと時を同じくして、もう1つテニスの大きな試合が行われていたことをご存知だろうか。そう、“ミュージカル『テニスの王子様』全国大会 青学vs立海”東京凱旋公演である。通称“テニミュ”。「週刊少年ジャンプ」で連載していた人気漫画『テニスの王子様』を舞台化したもので、アメリカ帰りの天才テニスプレイヤーで主人公の越前リョーマを中心に、常人離れした中学生たちによる“もはやテニスではない”バトルとその成長物語を描き、3次元化不可能と言われた原作のストーリーを独創的・意欲的な発想で再現した作品である。原作は錦織選手が愛読していたことも有名で、現在もその続編『新テニスの王子様』が「ジャンプSQ.」(いずれも集英社)で連載中だ。

 2003年に初演が行われたテニミュは、原作の連載終了後もその人気の高さから公演回数を重ね、キャスト(※役者のこと)を入れ替えながら、内容としては“2巡目”となる2ndシーズンに突入。そして、2011年からスタートし、全国を“転戦”してきたその2ndシーズンもついに青春学園中等部と立海大附属中学校(以下、青学と立海)の全国大会決勝戦をもって決着、先日の9月28日には大千秋楽を迎えたのである。

 テニミュは多くの若手イケメン俳優が“特盛りツユダク”状態で出演し、キレのある激しいダンスと三ツ矢雄二作詞によるド直球かつ独特の世界観をぶちまけた歌で、原作の破天荒な試合展開を情熱的に舞台上で表現。一度体験すれば脳内エンドレスリピートを免れないという恐怖のダンスと歌を擁した“いわくつき”のミュージカルだ。キラキラと眩しすぎるイケメンたちがテニスコートの上で必死に歌い踊り、喜び、苦しみ、憎しみ、楽しみ、時に激怒し、恋をし(←重要)、そして涙して成長していく舞台は、ある意味ジャンプのキーワード「友情」「努力」「勝利」のエッセンスをあらゆる面で間違った(正しい)方向に過剰投入されてきたと考えられる。こうして、テニミュの“何か”が女性ファンの鼻息を荒くさせ、圧倒的な支持を獲得し、動員を増やし続けてきたのだ。今なお日本各地に目がハートのまま戻らない“テニミュ廃人”を増産しており、原作漫画やアニメ、ジャニーズのような王道アイドルとはまた少し異なる“ホットスポット”を創造することに成功した“2.5次元”の金字塔的な作品なのだ。

 というわけで、かねがね噂を耳にしていた試合を観る機会を得られたことは大変光栄なのだが、何しろテニミュについてハリボテの情報しか持っておらず、「“イケメン俳優のジャニーズ的部活動”みたいなものかな」とぼんやり捉えてきた程度。そもそも原作自体もネットのまとめ記事をササッと読んだくらいで、取材の打ち合わせで担当編集女史に「原作について何か知っていますか?」と訊かれ、「主人公は越前リョーマですよね?」と返し「その程度でドヤ顔されても……」とすでに本気でドン引きされている。“男の目で見たテニミュ”ということで今回の記事を引き受けることになったが、それでいいのか、おたぽる。

「テニミュ」とは一体何だったのか ~男が観てみたテニミュ青春☆観戦記~【Part1】のページです。おたぽるは、その他演劇の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!