タイトルの「エクス・マキナ(Ex Machina)」とは、「機械から現れた(From Machine)」のラテン語。人工知能(AI)を搭載した女性型ロボットをめぐる SFスリラーである。
物語は非常にシンプル、かつミニマムだ。
検索エンジンを開発するIT企業に務める文化系ナードっぽい男性・ケイレブは、社内の抽選に当たり、謎多きカリスマ社長・ネイサンの自宅に招待される。が、そこは極秘裏のAI研究施設を兼ねていた。
施設にいたのは、最新のAIが搭載された女性型ロボットのエヴァ。ケイレブは社長から、エヴァに搭載されているAIが完全かどうかを、対話によってテスト(チューリング・テスト)してほしいと依頼される。
テストを進めるうち、エヴァに好意を抱きはじめるケイレブ。一方、エヴァはケイレブに「一緒にここから出たい」と胸中を告白するが……。
登場人物はケイレブ、ネイサン、エヴァ、そしてケイレブのメイドであるキョーコのたった4人だけ。そして、物語のほぼすべてが、この研究施設内だけで展開する。
演出トーンは終始抑えめで静謐だ。時に哲学的対話の様相を帯びるケイレブとネイサンの偏差値高めな会話が、それに拍車をかける。
低予算映画ゆえにスケール感はないが、モダンでスタイリッシュ、そこはかとなくサードウェーブ感をたたえた研究施設のインテリアデザインは、決して安っぽく見えない。いかにも2010年代のIT社長が住んでいそうな佇まいだ。
また、どこぞの超大作SFアメコミ映画のような、ドヤ顔の建物大量破壊や多人数高速アクションなどは皆無だが、ロボットのメカボディ描写で一点豪華的に使用されるVFXなどは、実に上手い。ナイスセンスである。
とはいえ、「人工知能に愛や打算は存在するか?」という本作の基本テーゼは、SFとしてさして新味があるとはいえない。アニメ・マンガ・ゲームを中心とする日本のオタクカルチャー空間にどっぷり身を浸している方々にとっては、なおさらそうだろう。オリジナルが海外SF小説なのか、孫引きとしての日本の深夜アニメなのかはさておき、「どっかで見聞きしたことのある設定・展開」である印象は拭えない。
筆者の隣のオジサンは、中盤あたりでがっつり寝息を立てていた。もしかすると、序盤で展開が読めてしまって(実際、読める)、物語を追う緊張感が途切れてしまったのかもしれない。
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オタクは「デウス・エクス・マキナ」とか、大好きですよね
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