【実写映画レビュー】ありがちと思うなかれ、モテない男にちょっと辛い!?“すこし・フェミニズム”な『エクス・マキナ』

 そこで、オタクカルチャー・リテラシーの高い人に向けて提案したいのが、SFとは無関係の補助線を引いて鑑賞するという、眠気防止ライフハックだ。ずばり本作は「女性の肉体的成長と社会的自立」を、8日間という物語経過時間内で描ききった作品である。

 まずは「肉体的成長」から見ていこう。
 エヴァは登場時から成人女性の背格好だが、人間を基準とすれば、実に“不完全”なビジュアルを与えられている。
 後頭部はツルンとしたスキンヘッド調の透明部材で、頭髪はない。胴体も四肢もところどころスケルトンで、中のメカが透けている。まるで臓器をそのまま見せつけられているかのよう。端的に言えば、グロテスクだ。
 エヴァは、成人女性でありながら、意図して“観客が性的に興奮しにくい造形”にデザインされている(内臓スケスケでも十分興奮するぞという方、誠に申し訳ありません)。

 ところが、主人公ケイレブとの何度目かの面談から、エヴァは服を着て短髪のカツラを装着しはじめる。
 ここで、観客は不思議な感覚に襲われる。さっきまで内臓むきだしのグロテスクな“モノ”だった存在が、内面は同じはずなのに、急速に“ヒト”に見えてくるからだ。観客は、エヴァを「女性」として意識しはじめる。

 例えるなら、ついこないだまで性別を意識していなかった幼女の体が、思春期を迎えて急速に丸みを帯びだしたようなもの。かしましく乳臭かったガキンチョが突然、色気を撒き散らしはじめたときに周囲が戸惑う、アレだ(乳臭いガキンチョでも十分【以下略】という方、誠に申し訳ありません)。

 終盤のエヴァは、さらに変貌を遂げる。短髪のカツラから美しいロングヘアに、スケルトンボディは本物の人間と見分けのつかない人工肌に!
 エヴァは、まるでクローゼットから服を出して身に付けるように、顔にメイクをするように、すでにお払い箱になった先代の女性型ロボットから皮膚を拝借し、文字どおり自分を「オンナ」として作り上げていく。このシーンは時間をかけて、ねっとりと描かれる。

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