【実写映画レビュー】野心的なアレンジと相反する曲調――骨太なクイーン・松岡茉優のゴルゴ的存在感が救い!?『ちはやふる 下の句』

1605_tihaya.jpg映画『ちはやふる』公式サイトより。

 競技かるた(小倉百人一首)の世界を舞台にした青春部活モノの人気作『ちはやふる』(作:末次由紀/講談社)は、既刊31巻を数える人気コミック。その実写映画版が、前後編の二部作として作られた『ちはやふる 上の句』(2016年3月公開)、『ちはやふる 下の句』(2016年4月公開)だ。

 前編『上の句』は、天才的なかるたの資質を持つ高校生・綾瀬千早(あやせ・ちはや/広瀬すず)がかるた部を創設して部員を集め、初出場ながら団体戦で全国大会出場を決めるまで。後編『下の句』は、千早が宿命のライバル若宮詩暢(わかみや・しのぶ)と出会い、対戦して大敗するまでを描く。

 ここで映画の内容に行く前に、原作ものの実写化について考えてみたい。

 紙に定着した文字や絵である原作を、現実の俳優が演じる映像作品にうまいことコンバートするには、さまざまな工夫が必要だ。その意味で、原作ものの実写化は、楽曲の「アレンジ」にたとえられる。

「アレンジ」には多くの方法がある。オリジナル曲のメロディラインはそのままに、演奏する楽器だけを変えるのか。Aメロ、Bメロ、サビの展開ごといじるのか。オリジナルに存在しなかった楽器を追加してトラックを増やすのか。主旋律の音量を下げてベースやドラムを際立たせるのか。いっそ、使用楽器と歌い手だけを残して、まったく違うメロディを創作してしまうのか。 曲の展開構造を変えるのは、長い原作を短くまとめる際に有効な「プロットの再構成」というテクニックだ。トラックを増やすのは、短編原作を長編映画にする時、脇役の描き込みを肉付けして尺を稼ぐ手法にあたる。ベースやドラムを際立たせるのは、主人公の描写を減らして脇役の存在感を前面に出すやり方。最小限の要素を残してほとんど別の曲を作ってしまうのは、設定だけ借りてオリジナルストーリーをこしらえるトリッキー技。これは「原作レイプ」に陥る危険度が高い。

 どんな「アレンジ」を施すかは監督の手腕にかかっている。原作ファンのご機嫌、製作委員会や俳優事務所の意向、予算など、さまざまなオトナ要素が競合する場合もある。原作を無視してファンの総スカンを食らったものの、野心作として後世まで残ることもあれば、ファンの機嫌をとって慎重にまとめた結果、誰の記憶にも残らない無難作になったケースも少なくない。

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