ミリオタライター・二木知宏の「武器で見る映画」第7回

西部開拓時代に思いを馳せる! 同じ名前の銃の数奇な運命『マグニフィセント・セブン』

西部開拓時代に思いを馳せる! 同じ名前の銃の数奇な運命『マグニフィセント・セブン』の画像1映画『マグニフィセント・セブン』公式サイトより

 今回はちょっと趣向を変えて、かなりレトロな武器・兵器を紹介します。黒澤明監督の名作『七人の侍』をモチーフとした西部劇映画『荒野の7人』をさらにリメイクし、時代背景はそのままに現代風に再構成した『マグニフィセント・セブン』。アントワーン・フークワ監督、デンゼル・ワシントン主演の西部劇映画です。

 実は西部劇モノでは絶対出てくる代名詞的拳銃があります。武器を知らない人でも聞いたことがある人も多いであろう“ピースメーカー”です。もちろん、正式名称ではありません。コルト社製45口径6連発回転式拳銃「シングル・アクション・アーミー」の通称です。

『マグニフィセント・セブン』でも、主要キャラクターが所持している拳銃はピースメーカー。まずこのピースメーカーから紹介していきます。正式名称の「シングル・アクション・アーミー」からもわかるように、シングルアクションなんですね。と言ってもわからないという方のために説明します。

 銃の仕組みは、撃鉄を起こし、引き金を引くと、撃鉄が実包の雷管を打ち発射薬が爆発し、弾丸を撃ち出す、という流れです。撃ったあとに落とすのが発射薬が入っていた薬莢ですね。これは、西部開拓時代から今日まで100年以上、大きく変わってはいないのです。

 シングルアクションというのは、撃鉄を自分の手で起こし、引き金を引く動作で撃鉄を落とします。つまり、引き金を引いたら撃鉄を落とすという一つの動作だけ、というのがシングルアクション。一方、引き金と撃鉄が連動していて引き金を引く動きで撃鉄起こしと、落としの二つの動作を行うのがダブルアクション。現代のリボルバーはシングルアクション方式とダブルアクション方式の両方の機構が搭載されていて、使い分けできるようになっています。

 同作品は西部劇なので、シングルアクションの銃が登場します。「シングル・アクション・アーミー」の「アーミー」の部分は、陸軍のこと。1872年から20年間、アメリカ陸軍に正式採用され、陸軍での正式採用名は「M1873」です。単純に1872年ってすごい数字ですね。日本だと明治5年で、岩倉使節団とかの時期です。

「シングル・アクション・アーミー」の意味がわかったところで、通り名である“ピースメーカー”の説明をしましょう。皆川亮二先生の漫画『PEACE MAKER』(集英社)など、作品名になるくらい有名な名称で、意味は“平和を作る者”です。銃は凶器で、人殺しの道具なのに、なんとも皮肉な名称です。

 アメリカはご存じの通り、移民が先住民を駆逐した死体の上にできた国なので、移民たちにとっては“平和を作り上げた銃”であることは変わりないのでしょう。他にも“アメリカを作った銃”“西部劇の代名詞”と呼び名の多い名銃なのです。

 現代でも大人気で、いまだに製造されています。アメリカ、テキサス州公安局の法執行官「テキサス・レンジャー」では、現在でも使用している例があるほど。シングル・アクション・アーミーの話は、1万字でも足りないので、この辺でやめておきますね。

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