ミリオタライター・二木知宏の「武器で見る映画」第3回

“軍縮っていうのは、実は軍拡”戦時下に生きる呉の人々の息遣い『この世界の片隅に』

bukikonose1124.jpg

 「武器で見る映画」連載第3回は、公開中のアニメ映画『この世界の片隅に』です。舞台は昭和18~20年、太平洋戦争中の日本です。戦時下の広島で、懸命に、そして健気に生きていく主人公、北條すずを描いています。すごく感動して、涙ながらに見てきました。戦中なんで、劇中に兵器がいくつか出てきます。特に、大日本帝国海軍の軍艦は、物語や登場人物にも大きく関係しています。そんな海軍や軍艦を紹介していきますよ!

 すずは、広島市の江波地区で海苔すきを営む浦野家に生まれ、呉市の北条家に嫁ぎます。呉といえば、戦艦大和を建造した呉海軍工廠で有名です。ちなみに、有名な話ですが、呉海軍工廠は東洋一の兵器工場で、ドイツの重工業企業クルップと並び、当時、世界2大兵器工場といわれていました。嫁ぎ先の呉で、すずが湾を眺めていると、さまざまな駆逐艦や巡洋艦、戦艦が見えます。
 
 さぁ、駆逐艦? 巡洋艦? と豊富な種類がある軍艦。ちなみに僕は、コーエーから発売の人気ゲーム『鋼鉄の咆哮』シリーズで覚えました。

 まず、「駆逐艦」、元は水雷艇駆逐艦と言い、水雷艇を駆逐するための艦でしたが、第二次大戦では、対空、対潜を得意とする軽装甲で高速の比較的小型の船を意味するようになります。有名なのは日本の「雪風」です。

 次に、巡洋艦です。巡洋艦の定義は、時代や国でさまざまですが、だいたい、駆逐艦以上、戦艦未満の中間的な大きさの軍艦を指します。さらに比較的小型の軽巡洋艦、大型の重巡洋艦と分類する場合も。有名なのは、ナチス・ドイツ海軍の「プリンツ・オイゲン」です。ちなみにクルップ製です。 

 そして、戦艦ですね。大型のやつです。よく誤解されているのが、「戦艦って軍艦のことで、駆逐艦とかも戦艦の一種でしょ?」というやつです。違います! 軍艦の一種に戦艦があります。別名主力艦ともいわれています。日本の「大和」、ドイツの「ビスマルク」、アメリカの「ミズーリ」、イギリスの「プリンス・オブ・ウェールズ」などなど、ひとつは耳にしたことがあると思います。第二次大戦の初期の頃までは、戦艦ってのは最大最強兵器でした。ただ戦争に使うだけの戦術兵器ではありません! 戦争の勝敗を決し、政治や外交も左右する、超重要な存在だったのです。

 あと、航空母艦、略して空母、この空母って呼び名の方が知られているでしょう。これは航空機を多数搭載している艦です。文字通り航空機の母艦なので、これはわかりやすいかと思います。

 ここで挙げた分類はあくまで、第二次大戦中のものなので、勘違いしないようお願いします! そもそも、「なんでこんなわかりにくく分類してあるんだ!? 大きさだろ!?」そうお思いの方も多いと思います。実はこれ、軍縮条約が関係しているんです。映画でも、「軍縮」という言葉が出てきます。すずの旦那さんの周作の父は工廠の技術者で、軍縮のせいで一時、解雇されていました。

“軍縮っていうのは、実は軍拡”戦時下に生きる呉の人々の息遣い『この世界の片隅に』のページです。おたぽるは、映画ミリタリーその他の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!