【実写映画レビュー】大衆が求めるのは“奇人”ではなく“常識人” 16年版『ゴーストバスターズ』を見て感じたヒーロー像の変化

 繰り返そう。大衆が求めるのは「理解できない奇人」ではなく「共感できる常識人」だ。それは、エリンの日本語版吹き替えを担当しているお笑い芸人・友近の芸風にも近い。彼女が巧みに形態模写する「返しの手慣れたホステス」「おせっかいな旅館の女将」「エステの受付嬢」などは、大衆が日常的に目にしたことのある、いかにもいそうな人々だ。決して、常人に理解しがたいパーソナリティの持ち主ではない。

 ちなみに、友近はエリンを演じたクリステン・ウィグと同じ1973年生まれだが、かつてヴェンクマン博士を演じたビル・マーレイと同じ1950年生まれにして、日本のアラフォー男性がカリスマ視するお笑い芸人がいる。志村けんだ。両者とも土曜日のTV番組(マーレイは『サタデー・ナイト・ライブ』、志村は『8時だョ!全員集合』)で70年代後半にブレイクしたという共通項がある。そして、いずれも30代当時からいい感じで若ハゲだった。

 お笑い芸人としての志村が扮する代表的なキャラクターといえば“バカ殿”や“変なおじさん”だが、彼らは共感などしようもない奇行だらけの反社会的存在。「常人に理解しがたいパーソナリティの持ち主」だ。常に人を食ったような態度を取り、ゴーストを前にしてもまったく動じることのないピーター・ヴェンクマン博士のカリスマ性に、どこか通じる部分がある。なお、“バカ殿”がレギュラー放送化されたのは86年。“変なおじさん”は87年に初登場した。ヴェンクマン博士と同じ、80年代の産物である。

 別に、カリスマ不在の現代は80年代に比べてつまらないとか寂しいとかいった、クソみたいな感傷に浸って本稿を〆るつもりは、毛頭ない。ひとつだけ言いたいのは、アラフォーオヤジに志村けんの話を振ると、『ゴーストバスターズ』どころではなく話が長くなるということだ。御年41歳の筆者は、そう思う。
(文/稲田豊史)

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ゴーストバスターズ 1

ゴーストバスターズ 1

アラフォーは心くすぐられる!?

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