テニミュとは壮大なる母性本能 ~The End~ ~男が観てみたテニミュ青春☆観戦記~【Part5】

 そんなシーンが終わると「泣いてるんじゃねーよ」と桃城武(キャスト:石渡真修)が舞台に登場。

 しんみりした場内に笑いが起こる。女性ファンたちは泣きながらも涙を拭って笑顔を見せる。どうやら3年生の卒業後、残った2年生の桃城と海堂薫(キャスト:木村達成)が青学を引っ張っていくことになったようだ。海堂は部長となり、バンダナを新調したことを桃城にいじられると照れて八つ当たりをした。その光景を優しく微笑みながら見守る女性ファンたち。さっきの卒業式といい、女性ファンたちから発せられるこのオーラは一体…!? 「見どころがありそうだ…」と桃城は舞台上から観客に入部を諭す。何ソレ、青学テニス部に入れるの? んーどうしようかな、血塗れになるのは怖いし。

「ラケット振りたいヤツはいるか!?」

 と桃城が呼びかけると、客席の女性ファンたちが次々と手を上げる。筆者もこの時、気が付いた。今、自分がアリーナ前方の通路側に座っている意味を。同行した編集女史の顔を見ると、ニヤついている。

こ、これかーーー!

 編集女史は顔で「やれ…!」と無慈悲な指令を出す。もう背中に銃を突きつけられているようなものだ。もう挙げるしかない。逃げられないシチュエーションである。恐る恐る手を挙げる筆者。見渡す限り女性だらけのアリーナで、通路側の席に男が1人ってこれ、卑しいくらい選ばれたい精神丸出しだ。は、恥ずかしい…。

 桃城は舞台を降りて、アリーナ席の筆者側の方向に歩いて来た! こ、これは…もう逃げられん…! 「振りたいやつはいるか!」と練り歩く桃城に向かって、女性ファンたちは元気に手を挙げる。拙者、完全にビビった。目立たぬようにこっそり挙げた。「もっとちゃんと挙げろ」と銃口を押し当てる担当編集。ああ無理無理これ以上無理。

 桃城は筆者周辺まで急接近し、周りの観客をぐるりと見渡した。桃城、間近で見るとこっちが照れるぐらいイケメン…。何という爽やか笑顔、何というキラキラ度。周りの女性ファンと一緒になって、完全に筆者も頬を赤く染めていた。そして、思いっきりこっちに向かって桃城は言った。

「じゃあお前、振ってみろ!」

 うわっマジで筆者か!と震えた。が、何と筆者の後ろの席の女性を選んだのだった。うわーうわー良かったような、記事的には悪かったような…。女性ファンは照れながらラケットを振り、桃城に「いいスイングだ」桃城に「好きなやつはいるか?」と聴かれ、「(桃城)センパイです…!」と答え、場を和ませた。桃城も「それが訊けただけで嬉しい!」とハッピーエンドに相応しい選択だった。筆者も「センパイです…!」って言いたかった。いや、最悪の事故だ、それ。

 残念ながら完全にビビった筆者は選ばれなかったが、あの瞬間、桃城の的確な判断能力に涙した。気のせいかもしれないが、男が1人で通路側の席を陣取り、相当ワル目立ちしていたはずだが、桃城は筆者と目を合わせないようにしていた(気のせい)。これは桃城に対する恨み節でも何でもなく、賞賛である。あの時、筆者を選んでいたら会場の空気をぶち壊していたに違いない。桃城は咄嗟に「あ、コイツは選んじゃアカンやつだ」と素晴らしい勘が働いたのだ。

それ正解!

 いい仕事してますね…。鑑定士ばりに唸った。選ばれていたら緊張して、毒にも薬にもならないどうしようない対応で記念すべき日の場を盛り下げたに違いないからだ。素晴らしい洞察力、素晴らしい状況判断能力、素晴らしい感性だ。桃城役の石渡真修は、きっとこれから頭角を現すに違いない。センスある。そう感じた。

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