テニミュとは壮大なる母性本能 ~The End~ ~男が観てみたテニミュ青春☆観戦記~【Part5】

 難病を克服し、勝つためだけにガチガチの重苦しいテニスをしてきた幸村にとって、“楽しいテニス”に負かされるというのは屈辱でしかない。幸村役の神永圭佑の「ふざけるな!」のセリフにも、その想いがしっかり乗っていた。幸村は意地で盛り返し、覚醒状態のリョーマと対等に渡り合う。おおおおお! さすが“神の子”幸村! 強い! い、一体どちらが勝つんだ!?

「サムライドライブッ!」

 その時、リョーマが渾身の新必殺技を繰り出す。それに沸く青学メンバー。どうやら凄まじい技のようだ。外野の青学・立海ベンチ、四天スタンドによる状況説明によると、高速のテニスボールがネットとポールの間のワイヤーにヒットし、真っ二つになったと……

ボボボボ、ボールが真っ二つ!

 ボール割れたーーー! ここここ、これは無理、返せるわけがない! どう頑張っても幸村の負けだーー!

しかし、幸村の根性は伊達じゃなかった。

 2つに分かれたボールを何とぉー幸村ぁーーー、「立海3連覇に死角はない!」とヒラリと身を翻し、両方拾って打ち返すーーー! ええええ!? すげーーーー! それどんなスゴ技ぁーーー!!? 神がかる神の子! これは幸村の勝ちだーーー!

「幸村、勝たんかぁーー!」

 と、ちょっと泣きそうな(雰囲気の)真田渾身のアツい声援が飛んだのも束の間、その声をぶった切るようにリョーマ翔ぶーーー! 幸村会心のリターンで2つのボール片が奇跡的に空中で1つにまとまり、それをそのままリョーマが非情にも打ち下ろすーーー! 舞台上で火花ドーーン! ハングアップゥカベドゥーーン!!

なななな、なんという結末……!!!

 この衝撃的瞬間で、リョーマが幸村に勝利したのだ。3勝2敗、ついに王者・立海を破って青学の優勝、全国制覇が決まったのだった。いやったー! テニスボールサイズほどの脳が考えていた想像を遥かに上回る壮絶な戦いだったー! 中学生のテニス、油断したら死ぬー! 半端ないー! やっとこのレポも終わるー!

 とんでもないミラクル最終決戦だった。開眼に次ぐ開眼。2人とも“神の子”とかいうより、もはや神。ラケット振りながら、全然天地創造してた。真っ二つになったボールを打ち返す幸村の執念もスゴいが、そのリターンをまた1つのボールにまとめて打ち返すリョーマのよく分からない非情さ。これが神々の戦いか……。というか、ボール真っ二つになっても試合続行されるのか、テニスって。

 すると、「勝ったぜ! 勝利だ! 優勝わっしょーい!」とあられもない歌を歌い出す青学メンバー。ゆ、優勝…わ、わっしょい!?

……喜びが軽っ! というか古っ!

 あれだけシリアス路線な戦いを繰り広げてきておいて、“わっしょーい”言っちゃう? “わっしょーい”でコレ締められる? キミたち平成っ子だよね…?

 地区予選から数々の死闘を生き抜き、基本的には重厚な内容だった決勝戦を戦い、全国制覇した喜びが“わっしょい!”って言葉に変換されるっていうね。もっと「レペゼン青学、レペゼン立海!」とか「今ここにある命、育ててくれた父と母に敬意、共に戦った仲間に感謝」とか湘南で風吹かせるとかB-BOY風とか、ONE OK ROCK的なロックサウンドに乗せたりとかそういう感じにならないか!? …ならないね。

 中学生っぽいと言えば中学生っぽいかもしれない「勝ったぜ! 勝利だ! 優勝わっしょーい!」のそのまま過ぎる歌詞のインパクトに動揺していると、舞台の中央で青学メンバーの胴上げが始まった。すると、バックスクリーンでも、先ほど(Part4参照)の微笑みPVのような事前に撮影された胴上げ写真(ステージ上で青学メンバーによる笑顔溢れる胴上げ)が映し出される。リアルな胴上げと写真のシンクロが見事に……

まったくしてない!

 斬新な演出だ。一体どっちの胴上げ見ればいいんだ……。え、やはりここはリアルの方か。そうだよね、せっかくだからやっぱり生がいいよね。女性ファンたちを見てみると、みんなまるで自分のことのように、嬉しそうに目を細めて微笑んでいる。わぁ、なんかみなさん、仏さまみたい…! すごく多幸感がある…! こっちもありがたくなっちゃうっていうか。TOKYO DOME CITY HALLを埋め尽くした観客が、後光で輝く壮観な神々しさに筆者もうっとり目を細めた。

 青学メンバーにより、コート上で“GRADUATION”が歌い出される。『培った経験で世界を変えよう プラス思考でガンガン進むぜ』 さっきの「わっしょい!」に続き、いきなり世界を変えちゃうレベルのすこぶるポジティブな歌詞が強烈だ。もう日本は目じゃないのか、キミたちには。プラス思考でガンガン進むような部員、そんな人材がたくさん居たっけ? もっと思慮深くなかった!? そういう感じのキャラでしたっけ、皆さん? フレーズがもう無理難題すぎて、筆者は途中から「そんなにガンガン進めない…、そんなに人は強くない…!」と断末魔の叫びを上げていた。

 そんな歌を歌い終えると舞台はガラリと変わり、どうやら青春学園の体育館のようだ。中学3年生である手塚国光(キャスト:多和田秀弥)部長、“ゴールデンペア”こと大石秀一郎(キャスト:山本一慶)副部長と菊丸英二(キャスト:黒羽麻璃央)、不二周助(キャスト:矢田悠祐)、乾貞治(キャスト:稲垣成弥)、河村隆(キャスト:章平)の5人が学生服を着て登場。

あれ? 学ラン? いきなりどうしたの?

 それぞれ意味ありげに、これまで共に戦ったことへの感謝、今後の進む道について言葉を交わしていく。観客席からはすすり泣く声が……これはまさか……

そそそそ、卒業式だー!

 始まったのは、3年生の卒業式だった。これはズルいぞテニミュ…! 5人が一列に並ぶと、1人1人に卒業証書が手渡されていく(打球と同じくエア卒業証書授与である)。2ndシーズンの終わりに向かっていくキャストの心境と重なるのか、女性ファンたちもどんどん高まり、場内全体の嗚咽が大きくなっていた。泣いてるのか、みんな。続々と幽体離脱し、現世を卒業していく女性ファンたち。これは……! ガチンコの卒業式だ。3年生たちはそれぞれ言葉を掛け合い、舞台から去っていく。みんな目を潤ませ、顔を紅潮させていた。

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