初音ミクを文化にまで昇華させた者は単なるオタク?

 彼らの、技術力、企画力、創作能力、コミュニティ力、そして、新規の文化をすぐに取り入れられる柔軟性、そしてN次創作を許容できる認容性。

―本当にすごいじゃないか、この国の若者たち。

 彼らは、世界に対して胸を張って自慢できる若者たちであると、私は断言します。

【3】ボーカロイドや初音ミクコンサートなどを異端視する人は多い。しかし、その理由は観念の域を出ず、論理的でない

 第一にボカロを異端視する人は、きちんとこのボカロ文化と正面から向き合っていないのではないかと思います(それを一概に「悪い」とは言いませんが)。

 私は、このコラムの執筆が決まってから、中学2年生の娘に、初音ミクの歌を5曲選曲してもらい、人生最初のボーカロイドの試聴に挑戦しましたが、結論から言いますと「歌詞が、全くわからん」という感想でした。楽曲の嗜好以前の問題でした。初音ミクの歌より「TOEICリスニング」のほうがはるかに簡単と思えるくらいでした。

 私は、娘に対して、

「YouTubeとかニコニコ動画では、歌詞がタイトル(字幕)で出てくるから、みんな歌詞を理解できるのだよね。最初から歌詞は聞き取れないよね」

と言ったのですが、娘はキョトンとした表情をして、不思議そうに尋ね返してきました。

「なんで? 字幕なんかなくても、最初から歌の内容は聞き取れるよ」

 そう言った娘の顔は、特別な勉強をすることなく、毎回TOEICスコア900点台を叩き出していた、あの同僚の顔とそっくりでした。

 なんてこった。娘は「ボーカロイドに愛される中学生」であり、私は「英語」ばかりではなく「ボーカロイドにも愛されないエンジニア」であったのです。

―なんか、面白くない。

 私は、昨年のコラムの執筆開始時から、正月休みの全期間を通じて、娘の選曲した5曲、

『千本桜』
『みくみくにしてあげる♪【してやんよ】』
『はちゅねミクのうた』
『ブラック★ロックシューター』
『初音ミクの暴走』

を、何度も何度も聞きまくり(多分、200回以上は繰り返したと思う)、ようやく歌詞の9割を聴取できるに至りました。

 何事も「正面から向きあうこと」でなんとかなる(場合もある)のです。

 歌詞が理解できてくれば、「おお、これはこれで、実に味わいのある歌だ」と、縁側でお茶菓子を嗜むご老公のような気分で、初音ミクを楽しむことができるようになりました(もちろん、私にははなはだしく聞くに堪えない曲もありますが)。

 さて、話を戻しまして、ボカロ曲を「気持ち悪い」、初音ミクのコンサートで「愛しているよー!ミクー!!」と絶叫する観客を「怖い」と思う人がいるのは、当然だと思います。正直、これだけの徹底した調査とインタビューを実施したと考える、この私でさえも、まだ「引きます」。

 しかし、初音ミクが気持ち悪くて、アニメ映画やアイドルのコンサートなら気持ちが悪くない、というのは論理的に筋が通らないのです。これに対しては、「それは、『質の問題』ではなく『程度の問題』なのだ」とおっしゃる方もいると思います。

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