初音ミクを文化にまで昇華させた者は単なるオタク?

Aさん まだ一般的に受け入れられていないため、少なくとも初対面の人には言いづらいです。少しでも自分を知っている人でないと、あらぬ誤解を受けそうという恐怖はあります。

 なぜなら、中高生時代には、いわゆる「『オタク』というレッテルを貼られること=いじめの対象」となるという現実的な脅威がありました。自分は、その時代の恐怖体験を今なお引きずっているのだろうと思っています。

Bさん 私は、初音ミクの文化を認めないなら、そこで生まれた優れた音楽を自己否定することなり、自分がその音楽を楽しむことができなくなります。そんなことは嫌です。

 私自身は、初音ミクのファンであることを恥ずかしいと思いませんが、それをカミングアウトするか否かは、次元の異なる話ではないか、と考えています。これは、「私がどう思われるか」という話ではなく、「相手がどう思うか」という問題だと思うのです。

 相手がいわゆるオタク文化に寛容であれば、ボカロ好きを隠す理由はありませんが、相手がそうでない場合は、オタク文化に触れていること自体を隠す(=ボカロ好きであることも隠す)ことになっても良いのかな、と。

 なぜなら、オタク文化に不寛容な人に、わざわざ苦痛(不快な気分にさせる等)を与える必要はないと思うからです。

― 色々なご意見をいただき、誠にありがとうございました。

●まとめ

 今回、3回にわたり初音ミクについて考察してきましたが、最後に筆者が至ったボカロに対する感想を述べさせていただきます。

【1】初音ミクを具現化しているボカロ技術は、最先端マルチメディア&ネットワーク技術の集大成である。

 前回、前々回でご紹介させていただきました通り、初音ミクを支える三大技術は、エンジニアとしての私を震撼させるすごい技術です。

 ・歌唱音声技術は「コンピュータにしゃべってもらう」程度の技術とは次元の異なる高み―「コンピュータに歌ってもらいたい」―というエンジニアたちの執念の産物です。

 ・また、動画映像技術は「絵心」を母親の胎内に置き忘れてきた私にすら、たった一枚の絵を描くことなく初音ミクのアニメーションの作成を可能にさせました。

 ・そして、ソフトウェアのインストール後30分で、生まれて初めての作曲を完了してしまったという、作曲演奏技術に至っては、もう「魔法」と断言してよいと思います。

 加えて、あまりに高速になったパソコンの演算能力と、優れたマルチメディアデバイス、膨大な情報転送を可能とするインターネット回線、そして情報圧縮転送技術がなければ、初音ミクは、あなたの自宅にやってくることもなかったでしょう。

【2】かかる最先端技術を、研究機関などに閉じることなく、(サブ)カルチャーとの見事な融合を果たし、アミューズメントの一大産業にまで発展させたのは、若い世代の人間である。

 このようなコンピュータの人工歌唱を「気持ち悪い」と切り捨てることは簡単なことですし、「そんな市場はない」との経営的な判断をする方が楽に決まっています。

 しかし、我が国には、

・この得体の知れないボーカロイドという技術を信じ、それを文化として昇華するまでコンテンツ(ボカロなど)をつくり続けたボカロP
・そのボーカロイド技術を心の底から愛して研究開発を続けたエンジニア
・技術開発に出資を決断した経営者
・信じられないほど高機能なソフトウェアを無償で公開するプログラマー
・ボカロのコンテンツを発表する場を提供するプロバイダ
・N次創作を支えるコミュニティメンバー

そして、

・その文化を、辛抱強く、しかし温かく見守り続けたファン

の、初音ミクを守る「7人のサムライ」がいたのです。

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