ボカロPが語る「初音ミクの作り方」

―その他、ボカロPならではの、お話をご存じでしたら教えてください。

Pさん 演歌や昭和歌謡など、若年層向けでない音楽をやっているボカロPの方もいらっしゃいます。おそらく、中高年の方が作られているのだと思います。作曲ソフトとしては、「ぼかりす」という自分の歌声をメロディとしてキャプチャーしてくれるソフトウェアもあります。まだあまり使われてはいないようですが。

 ほかには、初音ミクコンサートで使われている巨大なディスプレイですが、あれは「透過型ディスプレイ」といって、レンタルであっても大変高価なものだそうです。このディスプレイが故障したら、コンサートは一瞬で台無しになりますので、3重化して使っていたという話があります。

●ボカロはサブカルか、カルチャーか?

―ボカロは、オタク文化(サブカルチャー)なのでしょうか? 私が調べた限り、新しい表現方法として確立しつつある、立派な文化(カルチャー)であると思いますし、すでにマジョリティ(多数)を獲得できていると思いますが。

Pさん 新しい文化は、それがマジョリティになりつつあっても、一定の時間を経ないと社会全体に認知されません。実際に初音ミクのようなバーチャルアイドルを、しかも、それをプロデュースする側にいるということ自体、一般的には異端であると思われているは事実ですから。

―それはわかります。私も初音ミクコンサートをYouTubeで見た時のことはよく覚えているのですが、大型ディスプレイに表示された映像に対して熱狂している観衆は、はっきりいって怖かったです。正直、「一体、何考えているのだろう」と思いました。

Pさん まあ、それは仕方がないことかもしれません。しかし、アニメのキャラクターや映画のスクリーンに出てくる俳優に声援する心情と、あまり変わりはないと思います。

―それにしても、アニメのキャラクターに対する思い入れと、初音ミクコンサートで観客が見せる初音ミクへの思い入れは、ちょっと異質(異様)すぎる感じがするのです。うまく表現できないのですが。

Pさん それは、先ほど申し上げた、初音ミクの「無設定」にあると思います。コンサートに集った観客は、同じ初音ミクを見ているわけではないのです。

―えっと、よくわからないのですが……。

Pさん 初音ミクというキャラクター設定には、観客一人一人の接し方によって、無限のパターンが生まれます。つまり、1万人のコンサート会場においては、1万パターンの「自分だけの初音ミク」を見ているのです。「自分だけの初音ミク」に熱狂するというのは、ある種、自然なことです。

―「自分だけの初音ミク」ですか。それはもう、完全な「恋愛プロセス」ですね……。

Pさん AKB48などのアイドルファンと、あまり変わりはないと思いますけどね。

―それでは最後の質問をさせてください。ボカロは、これから広い世代に広がっていくべきだと思いますか? 例えば、私の娘(中学2年生)などは、ボカロ曲を毎日聴いているのですが、「パパの世代に、無理して理解してもらう必要はない」と言い切っています。

Pさん そのような意見もあると思います。実際に新しい文化、しかも、コンピュータリテラシーを前提とする文化に対して、世代の異なる人が冷淡であるばかりでなく、批判をしてくることは事実です。

 しかし、私個人としては、もっと多くの人に、ボカロ楽曲を聞いてもらいたいのです。ボカロ曲のリスナーの多くは若い人たちですが、これはちょっと残念なことだと思うのです。事実、ボカロの曲(歌詞)は「ハイティーン」世代を狙って作成されたものが多く、ジャンルがひどく偏っています。私がやや年齢層高めの人たちにウケるジャンルの楽曲を作っていることもありますが、私としては、どの世代においても、誰もが楽しめるボカロになっていってほしいと願っているのです。

―「誰もが楽しめるボカロ」という観点を、もう少し説明してください。

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