ボカロPが語る「初音ミクの作り方」

Pさん 単なる作品の公開に留まらず、「コラボレーション(共同作業)」ができるようになったことです。例えば、初音ミクの楽曲をニコ動にアップロードすると、その楽曲に対して、プロモーションビデオ(PV)、イメージ画像を描いてくれる人や、ソフトウェア「ミクミクダンス」で、初音ミクを踊らせてくれる人が出てきます。
 または歌詞がついていない曲をアップすると、歌詞をつくってくれる人もいるのです。

―ボカロは、「一人で閉じた世界での創作活動」であるからこそ、現在1万曲を超える音楽が誕生したのだと思っていましたが……。

Pさん ボカロは、ある人の創作物に対して、さらに色々な変更を加えていくという、いわゆる「N次創作」に特徴があります。これは「一人で閉じた世界での創作活動」を妨げませんし、むしろ、そのように改変され続けていくところに、ボカロの魅力があると思います。

―ボカロが、わずか数年でここまで世間に浸透したということには、脅威というか、ちょっとした恐怖を感じます。

Pさん そうですね。例えば初音ミクなどに関しては、ゲーム化され、またアニメ化もされています。このようなN次創作は、これまでの創作物では例がないのではないでしょうか。

●独立した一個の人格

―では、次に初音ミクについてお伺いしたいと思います。初音ミクとは、「人間の言語という音声信号を発する新種の楽器」という解釈も可能かと思うのですが。

Pさん 当初は、ただ人間の代わりに歌ってくれる楽器という考え方もあったようですが、現在では、独立した一個の人格として取り扱われていると思います。これに最も近い概念は、「好きなアニメのキャラクター」だと思います。

―しかし、初音ミクは、アニメのストーリーの中で、笑ったり、泣いたり、恋をしたりして、活躍するキャラクターではありません。そもそも、キャラクターとしての設定が存在していないように思います。これを「好きなアニメのキャラクター」と同様に取り扱うのは、ちょっと無理があるように思えるのですが。

Pさん 初音ミクに初期設定はありませんよ。

―え? 「キャラクター設定定義書」みたいなものがあるでしょう。例えば、16歳の少女で、葱(ネギ)を振り回すのが好きである、とか……。

Pさん 初音ミクに最初に与えられたものは、原則としてソフトウェアパッケージに描かれている初音ミクの外観と情報(年齢、身長、体重等)だけです。そこから、多くの人が、初音ミクには「こうあってほしい」「こうだったらおもしろい」というキャラクターとしての性格づけが行われて、その中で、多くの人によって受け入れられた性格だけが生き残って、今の初音ミクの設定に至っているのです。

「葱を振り回す初音ミク」は、後発的に設定され、それが多くのユーザに支持された結果、設定に至ったものです。初音ミクなどの人格は、いわばユーザの支持という自然淘汰によって決定されているのです。

―これもバーチャルアイドルならではの設定ですね。人間のアイドルでは難しそうです。では、そもそもPさんがボカロPを始められたきっかけを教えていただけますか?

Pさん 私は、ゲーム音楽のアレンジなどのインストゥルメンタルな音楽をやっていたのですが、ずっと歌モノを作ってみたいとも思っていました。ただ、歌モノを作った経験もないし、いきなり歌手さんにお願いするのも気が引けるということで始めました。はやっていたから、というのもありますね(笑)。

●ボカロPになる人々

―どういう人がボカロPになっているのですか?

Pさん 最近はバンドをやっていた流れで始める人も多いようですが、やはり、DTMから入ってきた人が多いように思います。ボカロPになるには、一定のパソコンスキルが必要となるのは事実ですから。

 業種でいうと、IT系の会社員や理工系の学生が多い気がします。ギターやピアノの先生という人もいます。また、30歳前後の方々には、リズムゲームに影響されて始める人、40歳前後の中高年世代においては、マイコン時代の打ち込みからやっている人が多いようです。

―ボカロ楽曲を作って公開に至るまでに、必要となる「道具」はなんですか?

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