華山みおの物語探索 その74

『二ノ国』設定も役者も上手く活かせず終始意味不明…いったい何がいけなかったのか?

『二ノ国』設定も役者も上手く活かせず終始意味不明…いったい何がいけなかったのか?の画像1
映画『二ノ国』オフィシャルサイトより

 今回は映画『二ノ国』をレビューします。

 冷静沈着で車椅子のユウ、バスケ部の人気者のハル、ハルの恋人コトナの3人は幼なじみの親友。ある日、突然襲われたコトナを助けようとしたユウとハルは、現実世界と並行する魔法世界「二ノ国」へ引き込まれる。ニノ国で出会ったもう一人のコトナ、アーシャに惹かれていくユウは、コトナの命を救うためアーシャの命を奪おうとするハルと敵対することに。“大事な人の命”をかけた究極の選択が迫る時、ユウとハルが下した決断とはーー?

 数か月前から何度も映画館に行く旅に目にしいていた予告。「命を選べ」という重たい文言とともに繰り出される映像に期待が高まり、公開される日を首を長くして待っていた。
 
 ちなみに私は映画を見る際には、予告以上の前知識を一切調べたりすることなく見に行くことが多いです。「面白そうだな」というその感覚のみで見に行くことを決めており、余計な先入観や予備知識、作品についての下調べなどは全くせずに、今回の『二ノ国』も観に行きました。
 
 しかし今作については前情報を知らな過ぎたことを後悔したので、事前に伝えておきたい事柄を挙げておきます。

 原作はレベルファイブで展開されるゲームシリーズ『二ノ国』。こちらのオリジナルストーリーという位置づけの作品。製作総指揮・原案・規約本にこのレベルファイブ代表の日野晃博氏。監督はスタジオジブリ出身の百瀬義行氏。声優陣には山崎賢人さん、新田真剣佑さん、永野芽郁さんというフレッシュな面々を迎えての布陣で製作された力のこもった映画、とのことです。

 ワクワクとスクリーンに物語が紡ぎ出される瞬間を心待ちにし、いざ! となってから劇場の明かりが再度点灯されるまでの間、冒頭のシーンからエンドロールの終わりまで私の頭の中は混乱と疑問で埋め尽くされました。消化できない気持ちが渦巻いたまま映画館を後にすることとなりました。

 端的に言うと、「ものすごい作品を観てしまった」のです。あまり良くない方の意味で。ここ最近邦画の作品は軒並み傑作が多いです。もちろん好みではない作品があったりもしますが、それでも作品として「すごい!」と思わされる部分はたくさんあり、うならされることが多いものです。

 特にアニメーションは日本の誇る文化であり、「ジャパニメーション」と称されるだけあってストーリー、作画、声優の芝居など圧倒的な力で最高の世界に連れて行ってもらえます。

 冒頭のシーンから「あれ?」と思う部分がありました。それが開始15分ほどで確信に変わり最後まで続きました。

 とにかく駆け足で進む物語。展開が速すぎてキャラクターそれぞれの関係性についてしっかり描かれず、何故ハルとユウとコトナは「3人で親友」なのか、コトナのことをそれほど愛している描写もないのに(むしろ浮気疑惑すらある)、ハルが親友の話を聞かずに暴走するほどの愛情深さを見せるのかなど分からないことだらけ。
 
 とにかくハルというキャラクターが暴走するというか人の話を聞かないのです。頭より体が先に動くタイプなんだと言われたらそれまでなのですが、それにしても所々に口では「親友」と称するユウに対して小ばかにするような、見下すような言動が見受けられて不快に感じることが多く、メインキャラクターなだけに残念に思えました。

 そして何よりも疑問に感じたのが設定です。現実世界と並行する魔法世界「二ノ国」では命のつながったもう一人の自分がいる…という設定は、予告の時点から何度も描かれていたこともあり、基本なのだという認識で物語を見守っていました。

 それなのにその設定を大元でぶった切るような発言で、ラストに大どんでん返しのように片付けられてしまう展開となるのです。

 壮大な物語をご都合主義みたいにコロコロ変わる設定でまとめてはいけないですよね。いったい私たちはどこに視点を置き、ドキドキハラハラと冒険を見守り、最後に感動すれば良かったのでしょうか。
 
 見終わってすぐは自分の理解力の足りないのか、原作の勉強不足から作品を理解できなかったのではないか、と不安になりSNSで感想をあさってみました。ところが、おおむね私の感想も的外れではなかったようです。
 
 音楽も役者も第一線の方を起用して宣伝していただけに、とても残念です。話題性が先行していた作品も中身が素晴らしければみんな黙りますが、これは戦える武器が少なすぎるように感じます。

 夏休み映画ということで小さな子供たちも多く映画館に足を運んだことでしょう。映画からゲームをやってみようという層を取り込むにも難しそうですが、ゲームは名作と聞くのでいつかどこかでプレイしてこのモヤモヤを晴らしたいです。次回作に期待しています。
(文=華山みお)

『二ノ国』設定も役者も上手く活かせず終始意味不明…いったい何がいけなかったのか?のページです。おたぽるは、人気連載映画その他の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!