華山みおの物語探索 その73

『記憶にございません!』底抜けに明るく、嫌味のない爆笑政治ムービー!さすがは三谷幸喜監督!

『記憶にございません!』底抜けに明るく、嫌味のない爆笑政治ムービー!さすがは三谷幸喜監督!の画像1『記憶にございません!』公式HPより

 今回は三谷幸喜監督の映画『記憶にございません!』をレビューします。

 病院のベッドで目覚めた男(中井貴一)は一切の記憶がなく、病院を抜け出して見たテレビで、自分が国民から石を投げられるほど嫌われている総理大臣の黒田啓介だと知る。国政の混乱を避けるため、記憶喪失になったことを国民や家族には知らせず、真実を知る3人の秘書官に支えられながら日々の公務をこなす中、アメリカの大統領が来日する。

 日本のコメディ映画といえば真っ先に名前が挙がる三谷幸喜監督。監督自身のユーモラスなキャラクターも相まって、小さなころから何度も作品に触れてきていています。でも、まだ監督作品の映画ってまだ8本しかないんですね。もっとたくさん撮っていると思っていました。

 日本の政治が題材となる作品は、どこかドロドロとしていたりピリピリしていて、鼻白むものが多い印象です。でも、そんな印象をドカンと覆して笑い溢れる三谷節の作品に仕上げるのはさすがの一言です。

 冒頭に「この作品はフィクションであり、実在の人物とは関係ありません。でももし似通っていたとしたらそれはたまたまです」というような文言が提示されます。記憶を失う前の主人公、黒田総理は低すぎる支持率・増税を繰り返し暴言を吐くなど、なるほど、おや…現実でも既視感が……? と思わざるをえません。

 政治について思うことがある方たちは内容についてあーだこーだとした意見はあるかもしれません。でも、このコメディ娯楽映画の中にはそんな小言は場違いというか、最初に提示された文言の通りです。意識の奥に誰かの姿が思い浮かぶのは、日本国民なら仕方がないことでしょう。

 だけどこの作品では「日本」という言葉も日本国の国旗も一度も出てこないのです。日本に似た、どこか別の国の政治家にまつわるトラブルのドタバタ劇なのです。

 出演者の豪華すぎて、どのシーンを切り取っても見どころしかありません。主役の中井貴一さんの悪徳総理から、記憶をなくしてからごまかしごまかし総理として、夫として改めて対人関係を作っていくところ演技は圧巻です。石田ゆり子さんのチャーミングな奥様、ディーン・フジオカさんの圧倒的美しさ……。眼鏡+スーツで秘書とか、もう何その完璧さ。

 小池栄子さんのキリっとしつつも、どこか面白い絶妙さもすばらしい。何より草刈正雄さんの悪役最高です! 悪役だけど憎めない……あの適当そうだけどやり手な感じがたまりません。今をときめく田中圭さんに最初と最後に見せ場があるのですが、そこが最高にかわいかったです。

 脇役という脇役が全くいない豪華な布陣。画面が切り替わるたびに豪華な役者人が渾身のお芝居を見せてくれます。これぞ贅沢!!

 政治の話はやっぱり難しいですよね。それに、怖いとかネガティブな側面を持ちがちだし、そこに関わったり考えたりすることをつい遠ざけてしまいます。でも、こうやって底抜けに明るく見られる作品が生まれると、政治に興味を持つきっかけにもなるんじゃないかと強く思いました。

 自分が明日政治家になったらどうするか。その着想から生まれたというこの映画。記憶を失ってあなたは総理大臣です、といわれて右も左もわからずに最高権力者の席に身を置いたらあなたはどうするだろう。

 そんなことを入り口に政治に興味を持っていいし、もちろんただ純粋にコメディ映画を楽しむでもいい。この映画は見ていてどこにも嫌になる要素がありません。場面の展開もテンポも「これこれ!これを待ってた!」とつい前のめりになってしまいます。ぜひ映画感でこの至福の体験をしてもらいたいです。
(文=華山みお)

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