華山みおの物語探索その44

『アメリカン・アニマルズ』若さゆえの過ちは時に取り返しがつかなくなる…“普通でいたくない”という平凡さを痛烈に風刺!

 何度も言っているけど、映画館の予告で「絶対にこの映画見に行かなきゃ」と思わせられる映画ってありますよね。期待外れだったこともあるけれど、予告のワクワク感がそのまま本編の最後まで持続すると満足感が倍になる気がします。

 今回は予告から本編最後まで、そしてパンフレットまでも満足度の高かった映画『アメリカン・アニマルズ』をレビューします。

 アメリカ・ケンタッキー州で退屈な大学生活を送るウォーレンとスペンサーは、自分が周りの人間と何一つ変わらない普通の大人になりかけていることを感じていた。そんなある日、二人は大学図書館に時価1200万ドル(およそ12億円相当)の超える画集「アメリカの鳥類」が保管されていることを知る。「その本が手に入れば、莫大な金で俺たちの人生は最高になる」そう確信したウォーレンとスペンサーは、大学の友人を巻き込み、『オーシャンズ11』『スナッチ』などの犯罪映画を参考に強盗計画を立て始める。

 映画の冒頭に、「これは真実に基づいた物語ではない〝真実の”物語だ」と注釈が入ります。真実に基づいた物語の場合、監督の想いから盛大に盛ってしまい、現実とはかけ離れたものになる事も多々あります。

 本作は、作中にインタビューという形で事件を起こした本人達が登場します。作中に本人のインタビューが挿入される手法は珍しいというわけではないかもしれませんが、この作品の中に登場する彼らの表情や当時を振り返った言葉は、この作品にとてもいいスパイスを与えています。

 登場シーンでは軽い感じの笑顔で、事件が起こったときは沈痛な面持ちをカメラに見せる彼ら。一体、あの当時彼らは何を考えていたのでしょうか。「何者かになりたい」大学生くらいの年代なら誰しもが思う感情。様々な方法をもって、私たちは何者にもなれないことを知っていきます。自分は自分でしかなく、TVの中のスターや、クラスの人気者に突然変化することなんてないのです。

 彼らは薄々そのことに気づきながらも、最後の一線を越えてしまいます。止めるタイミングはいくつでもありました。人数が足りないと思ったとき、処理をする人が決まらなかったとき、ためらう気持ちが生まれたとき……。その無意識の「無理かもしれない」という思いが計画のそこここに現れてしまいます。

 とにかく詰めが甘すぎなんです。私たちが見てきた映画やドラマの中で窃盗を企てる犯罪組織は、綿密な計画と強運と、そして確かな自信をもって行動しています。彼らが憧れたのもそういったイメージだったし、頭の中の映像は完璧でスタイリッシュな計画の遂行でした。

 しかし現実には段取りしていた通りには全くいかないし、突然のトラブルは起こるし、全然スタイリッシュにはいきません。緊張とストレスでみんなイライラして怒鳴り散らし、さらに集中力が切れて失敗する悪循環。見ているこちらがハラハラしてしまいます。

 そのハラハラ感を煽るような音楽と映像の作り方が、この映画は最高にうまいんです。最初から音楽の緩急やカットの仕方が、観る者の期待と不安をうまく煽るように、あたかも計算されているようです。

 どの作品でも、オープニングからタイトルが出てくるところまでが個人的に気になるポイントなのです。この作品は時計の音が鳴り響き、いら立ちや不安、急かされているような気持ちにさせられたところでタイトルが現れるんです。ここ好き!

 他にも印象的だったのが映画後半の、登場人物の過去と現在が一瞬交差するシーン。大きくネタバレになってしまうので詳しくは書けないですが、とても特徴的でゾクリとさせられます。いま自分たちも、過去の自分と邂逅するとしたらどんな目を向けるでしょうか。過去の自分は、今の自分を自分だと気づくでしょうか。どんな目で、自分を見るのでしょう。

 愚かだったというしかない、学生時代の過ち。誰しもが彼らのように最後の一線なんて超えるはずがないと思いながら、止められず道を踏み誤ってしまう可能性を持っているのです。本当に彼らは何ひとつ変わり映えのない、普通の大学生だったのです。いつだって自分が向こう側に行く可能性があるという、そんな事実を叩きつけられた気持ちです。

 視覚的にもとても趣向が凝らされた映画でしたが、本編以外にもその趣向は活かされています。作品のパンフレットもこの作品らしさが散りばめられた装丁となっていて、映画館を出た後もその世界観を楽しめます。作中で見られる絵も多く収録されているので、この作品を楽しんだ人にはぜひ手に取ってもらいたいです。今年観た映画の中で一番すてきなパンフレットだったので、本好きとしても嬉しい一品です。

 この監督はドキュメンタリーを主に作っていたそうですが、今回のように実際にあった事件をリアルに切り取る映画を今後も作っていってほしいな。次回作が楽しみです。
(文=華山みお)

オーシャンズ11

オーシャンズ11

若気の至りもほどほどに

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