クラウドファンディングで3,374人ものサポーターから3,912万1,920万円もの製作資金が集めた、劇場アニメ『この世界の片隅に』。支援者数は国内クラウドファンディングの過去最高人数で、金額も国内映画部門では国内最高記録。
しかも主役のすず役を務めるのは女優・のん、音楽はコトリンゴが担当と話題豊富で、11月12日からの全国公開を前に盛り上がりを見せているが、オタク向けニュースサイト「おたぽる」としては、やっぱり内容に注目したいところ。
監督の片渕須直は、ジブリの名作『魔女の宅急便』(1989年)で演出補を務めるなどした後、「世界名作劇場」枠で96年に放送された『名犬ラッシー』にて、TVアニメシリーズの監督デビュー。その後も監督としてイギリスの創作童話『アリーテ姫の冒険』を原作とした映画『アリーテ姫』(01年)を制作、さらに最近作『マイマイ新子と千年の魔法』(09年)では第14回文化庁メディア芸術祭最優秀賞を受賞。
一方で、全く作風が違うように見える、ガンアクション&ピカレスクの匂い漂う人気コミック『BLACK LAGOON(ブラック・ラグーン)』(作:広江礼威/小学館)のTVアニメ&OVAを格好良く可愛く描いたことでも知られる、注目のクリエーターだ。
そんな片渕監督は、昭和18~20年の広島と呉市、そして戦争をテーマとしたこうの史代の名作コミックのアニメ化に、どんな思いのもと臨んだのか。
制作にあたり、徹底的に資料を読み込んだとあって、質問に答える様子がまるで大学の先生か学者のような佇まいであった、片渕監督へのインタビューをガッツリ1万字超えで掲載!!
■ “戦争の時代”というのがわからなくなってきたんです
―― 監督が今作のアニメ化を思い立たれたのが『ブラック・ラグーン』OVA(『BLACK LAGOON Roberta’s Blood Trail』全5巻)制作時期だったいう記事を拝見しました。改めて原作との出会いからお聞きしたいのですが。
片渕須直(以下、「片渕」) 原作コミックの下巻が出たのが09年4月ですから、単行本が発行されて少し経ってから出会ったんだと思います。10年の夏ごろかな――『マイマイ新子と千年の魔法』(09年11月公開)の制作作業が終わってからも舞台挨拶したり、公開イベントをしたりしながら、『ブラック・ラグーン』OVA作業も同時に行っていて、次はどうしようかなと考えていたときに原作と出会って、すぐにこれだと。
―― 作中の舞台が、『マイマイ新子』よりちょうど10年前、新子のお母さんが『この世界の片隅に』のすずさんと同年代なんですよね?
片渕 そう、新子のお母さんが多分すずさんの1つ下、(すずの妹の)すみちゃんと同じ年齢になるはずなんですよ。ほぼ同世代で、同じぐらいの年頃にお嫁に行っていて、しかも2人とも“戦争”が似合わないタイプ。新子のお母さんを、僕らはもう中学生ぐらいの女の子をイメージして描こうと思ったんです。ちょうど中学生ぐらいの、人形作家さんがアートとして作られた、お下げの女の子が本を読んでいる人形がちょうどありまして。これがいいや、これをお母さんのモデルだと思うようにしようとなったんです。のどかで、戦争とは縁がなさそうに見える。でもあのお母さんにしてもたかだが10年前にさかのぼると、そういう時代に直面していたんですよね。
それが不思議に思えたんです。今まで知ってるようなつもりでいた“戦争の時代”というのが、逆にわからなくなってしまった感じがしたんですよね……。
―― たかが10年前は、そういう状況に置かれていたということが不思議ということですか?
片渕 というよりも、そういう状況に置かれて、どんなことを思っていたのかがわからなかったんです。たとえば戦争を取り扱う作品となるとモンペを履いて――みたいな描かれかたをよくするわけですけど、戦争も結構長い期間やっていて、空襲に晒されるようになるのは最後の1年間ぐらい。そもそもモンペは空襲の危険があって逃げるときに逃げやすいから履いていたわけです。ではなぜ、空襲が実際に来る前から履いていたのか?
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