いよいよ11月12日公開!『この世界の片隅に』片渕須直監督1万字超えインタビュー!!

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―― なるほど。ちなみに収録には抜き録りですか?

片渕 抜き録りですね。最初、細谷佳正(北條周作役)くんだけは何年も前から「周作をやってね」とお願いしていたんですよ。他作品で一緒になって細谷くんの声を聞いたとき、周作っぽいなと思ったし、彼も広島県出身ですし。それは多分11年か12年ぐらいだと思うんですけど、その頃ならともかく、最近の細谷くんはもうめちゃくちゃ忙しいわけですよ(笑)。

―― クールごとに必ず何役か出演されていますね(笑)。

片渕 そうそう、だから彼のスケジュールがとれました、というところでまず細谷くんから収録を始めて。細谷くんも「こういう役をやってみたかったんです」と言ってくれたんですよ。気張った感じではなく、普通の人が普通にそこで存在しているような演技をやってみたかったと。そんな細谷くんのセリフがまず入り、他の役者さんたちがそこに乗っかるという感じで全体を作っていったんです。

 全体的に芝居が日常寄りになっていて、平凡な人たちでありながら、なおかつそれぞれの個性が出てくるし、しっかり広島弁もしゃべっているという感じにまとまりました。で、最後の収録になったのがすずさんとリンさん(演:岩井七世)だったんです。特にすずさん役はキャスティングが難航しました。なかなかこういうことを出来る人がいないんです。

 まずすずさんの年齢、18歳。どこか少女っぽさも残していないといけない。もう一つはすずさんがユーモラスな存在であること。18歳の演技ができるコメディエンヌというのが果たしてどれぐらいいるのか。今はアイドル化しちゃっているというか、18歳の美少女だったら演じられる人は多いんですけど、そうではないんですよ。オーディションをやっても、可愛い、美少女っぽい演技をされる人が多くて。

 そこで自分たちとしては、のんちゃんだったら大丈夫なんじゃないかという想いもあったものですから、一番最後に来てもらったんです。で、のんちゃんのアフレコが始まったころには、他の部分はあらかた終わっていたんですよ。

―― 残りのキャストさんの収録は終えられていたと。

片渕 そうです。で、周作以来、皆さん、自然な演技ができていて、しかもものすごく芝居として高度な芝居ばかりされていて。潘めぐみちゃんのすみちゃんなんて、すごいじゃないですか。

―― 潘さんはお若いのに、本当達者ですよね。

片渕 でしょ!? そういう上手い人ばかりが揃っているところに、「声優をあまりやったことがないんです」という彼女が来たわけです。でも彼女のセリフが一番多いし、すでに声が入っている径子さんや周作さんと会話していかなきゃいけない。それは本来、かなり難しいことなんですよ。

 彼女自身は(このインタビューの時点では)まだ細谷くんと会ったことがないはずなんです。でもずっと「細谷さんの声と一緒に練習していました」というんですよ。ずっと細谷さんの声を聞きながら、自宅なんかでこう演じよう、ああ演じようと練習していたと。すごく努力家だと思いますし、その努力がうまく実を結んだと思います。

 パッと少し聞いてみただけだと「自然に演技している」と思われたかもしれませんし、のんちゃんがそういう姿勢で収録に臨んだことに気づかれないと思いますが、自然に聴こえる、伸びやかに聴こえる演技というのは、本人がただナチュラルにやるだけでは出ないものなんです。

―― 自分はのんさんの声を聞いて、序盤はちょっと違和感というか……中盤以降は全然気にならなくなりましたけど。癖になる声だなと思いました。

片渕 声優さんがたと発声の仕方が違うところがあるのかもしれませんね。もちろん彼女の方が、より演技はしているんですけど、発声の仕方としては普通にしゃべるときみたいに話しているのかもしれません。だからちょっと印象の違いが感じられるのかもしれません。

 ただ、先ほど触れた栩野さんには、最初に出てくる船頭を演じてもらっているんです。最初のシーンが、非声優の役者さん同士となるようにと配慮してみたりもしたんですけど。

―― 最後の質問です。異例の超ロングラン上映となった『マイマイ新子』公開前、監督は「子どもたちに見てほしい」と仰っていました。『この世界の片隅に』は、どんな人たちに見てもらいたいとお考えですか?

片渕 う~ん、難しいですけどね。マンガの表現領域が広がっていて、広がったところでこうのさんがいらっしゃるわけですよね。マンガがより高度化された時代にこの作品があって、その上読んで面白いものを描かれている。そういった作品を映像化していますから、「あ、こういうことやっているんだな」とわかってほしい。若い人たちに見てもらっても面白いと感じてもらえると思いますけど、まずは大の大人の人たちに見てもらうことが大事かなと思います。

■『この世界の片隅に』
11月12日(土)より全国公開!
・公式サイト http://konosekai.jp/
・公式Twitter @konosekai_movie

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

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