いよいよ11月12日公開!『この世界の片隅に』片渕須直監督1万字超えインタビュー!!

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―― ああ、一機あたりに何発ぐらい積んでいるものなのか。

片渕 そうそう、何発あって、どんな感じで吊っているのか。それも全部調べてみて、実際の機内に吊ってある形からすると、どういう順序で投下されていくのが本当なのか調べてみたんです。だからバラバラバラと落とすような……。

―― 何十発積み込んできているんだ! みたいな。

片渕 そうそう。そういうことがないように、こういう順番でこれぐらいの量が落ちてくるはず、というものに置き換えてみて。さらに艦載機での空襲もあって、戦闘機だって飛んできますけど、それは何機ぐらい、何時に、どこから飛んできてどこへ飛んでいったのか? そしてすずさん家がここだから、飛行機たちがこう見えて、あっちの方向に飛んでいくのが見えただろうなと。

 B-29や艦載機も含めて、調べてみた結果、「こうだったんじゃないの?」と描いてみたら、自分でも想像していた以上の、めちゃくちゃ怖い空襲シーンができあがったんです。自分では意図していないんですよ、それなのに、変な演出をするよりもずっと怖いシーンに出来上がってしまった。怖いんだけど、事実がそうだったんだからこれでいこうと。 

―― 「1300日の記録」(「WEBアニメスタイル」で片渕監督が連載していたコラム)を見て、片渕監督はなぜここまで時間をかけて資料を調べているんだろうと不思議だったんですが、今まで描かれていたものがどうも違うらしいぞ、というのがスタート地点だったんですね。

片渕 そうですね……というか調べていたら、たまたまそういうところへたどり着いてしまったので、全部をひっぺがしてみようと。あと、そもそもこうのさんが原作コミックで「間違っていたら教えてください 今のうちに」と明記されていて、きちんと調べることをポリシーとされているわけですよ。

―― 単行本にも参考文献を明記されていますが、すごい数ですよね。

片渕 そんな原作を映像化するわけですから、我々も当然、しっかりと資料にあたるべきですよね。しかもこうのさんが調べられた時点よりも、我々は後になってから取り組むのですから、新たに得た資料があったら、どんどん付け足していくべきだろうと思ったんです。

―― 「なぜそこまで」と思う人もいるかもしれないけど、必然、必要な作業だったわけですね。

片渕 そうですそうです。だからマンガにある、街並みを描いた一コマにしても、実際何軒ぐらい建っていたのかを、当時の航空写真などから調べていきました。航空写真も含めて、当時の写真はできるだけ集めましたね、どう言い伝えられているかだけでなく、資料や写真をしっかりと探して。なんというか……“資料の探し方”がわかってきたころに、この作品と出会えたのは大きかったかなと思いますね。

―― 『マイマイ新子』制作の経験が生きた感じですか?

片渕 いや、『アリーテ姫』(01年公開)の作業が終わった00年ころかな。あれも完成までに8年ぐらいかかっているんですよ。もちろん、その間に他の仕事もやっていましたけど、とにかく8年間もずっと頭のどこかにあった『アリーテ姫』という仕事が一旦離れて、頭の中がぽっかり空いてしまったような気分になってしまって。何か趣味を見つけようと思ったんです。

 そこで、飛行機のことを調べてみようと思ったんです、ちょうどインターネットが手軽に扱えるようになったタイミングでしたから(※片渕監督は航空史の研究家としても有名。航空ジャーナリスト協会会員でもある)。

 飛行機を調べている人とも出会えて、「資料の調べ方ってこういうことなのかな」というのがだんだんわかりはじめてきて。当時の公的機関が作っていた文書があちこちのアーカイブに残っているんです。そういうのを見ると、個人の方の思い出とは全く反対のことが書いてあったりもするんです。

 パイロットの方の話、人が記憶していることと、当時の公文書、命令書や設計図とかですね、公文書とが食い違っていたら、どっちを信用すべきか。やっぱり一次資料からあたって、資料ではわからない部分やニュアンス的なことを人に聞くというほうがいいだろうなと考えたんです。それと同じことを『この世界』でもやったんです。大事にしたのは、まずは写真を集めること。そして公文書、新聞記事、日記を集めることでした。

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