いよいよ11月12日公開！『この世界の片隅に』片渕須直監督1万字超えインタビュー!!

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――　実際それはどなたがお描きになったんですか？

片渕　これは水彩画に関しては四宮という、専門のスタッフさんを立てて、描いてもらいました。すずさんが学校でスケッチしていた絵なんかも描いてもらいましたね。

――　絵もそうですし、使っている道具も違っていますし、その辺もひっくるめて大変な作業っぽいですが。

片渕　そうですね。ただ、ちょうどこうのさんが朝日新聞で連載されていて、毎日挿絵を描れていたんです、しかもカラーで（14年『荒神絵巻』／宮部みゆきと共著／朝日新聞出版）。見本がたくさんありましたから、なるほどこういう感じになるんだなと、随分研究、参考にさせてもらいました。

――　食事シーンとかもすごく細かく描かれていました。当時の食事も、やはり念入りに調べられたんですか？

片渕　本当は、ずっとすずさんの毎日の食事を細かく再現できたら面白かったのになと思ったんですよ。

――　毎日の献立を再現、みたいな。

片渕　そうそう。ただ、呉なら呉市で、毎日何が、どれぐらいの量、配給されていたか、というところまでは記録が残っていないんです。1カ月単位なら、野菜をこれぐらい配給しました、という記録はあるんですが、それも野菜の中身・種類にまでは触れられてないし。そこはちょっとあきらめちゃった部分もあるんですが……。ただ、すずさんが野草を摘んできて、食卓の彩りにするというエピソードがありましたけど、それはちゃんと自分たちも野草を摘んできて、実際に食べてみました。

――　それはすごい、実食されたんですか？

片渕　青梅とか、山の近くまで行って採ってきました。ただ、大変なのはいつでも採れるわけではないんですよ、季節によっても違いますし。で、何度か行って料理してみて……ちゃんと普通にガスではなくカマドがあるところで、料理して食べてみましたよ、楠公飯とかも。

――　味はいかがでしたか？

片渕　美味しいやつは美味しいですよ、ただ楠公飯は……マズいって感じではないんですけど、ご飯だと思って食べると、ちょっとげんなりするかもしれないですね。

――　サクサクふわふわ、みたいな食感なんですか？

片渕　お茶漬けにアラレが入っているでしょ？　ふやけたアラレがご飯茶碗一杯になっている感じ（笑）。玄米を炒って、それを膨らませているわけですから、小さいポップコーンみたいなんですよ。それをふやかして、膨らませているので、結構香ばしい香りもするので温かいうちはそれなりにいいんですが……昔『名犬ラッシー』をやっていたとき、オートミールを作って食べたこともあるんですが、（楠公飯は）牛乳かけたら、オートミールの代用食になるかもしれません。ちょっと食べ方を工夫したら、もっと美味しく食べられるかもなと思いましたかね。

――　ただオートミールも、それほど美味しいものではないと聞きますが……。

片渕　たしかにそれほど美味しくはないですね（笑）。ただ、『名犬ラッシー』（96年）のころから、作中に出てくる食べ物を一度は作って食べてみようということはやっていたので。

■“自然”に聴こえるのんの演技は、努力の賜物だった!?

――　キャストさんがたの演技についても、特に広島弁、呉弁についてのご苦労も、お伺いしたいです。たしか新谷真弓さん（周作の母・北条サン役）が広島出身なんですよね？

片渕　『ブラック・ラグーン』に発破屋トー・チーというキャラクターが出てくるんですけど、このキャラクターのモデルになった俳優の栩野幸知さんという方がいらっしゃって。俳優であり、映画などに出てくるガン・プロップの制作者、あと劇用のメイクとして背中に入れ墨を描いたりと、俳優と美術を両方やっている人なんですが、栩野さんが呉出身で、お父さんが海軍の兵曹長で、その後広島市で育ったという方なんですよ。

　まずは栩野さんに広島弁、原作にない新しいセリフは広島弁として正しいのか、監修してもらいました。その後、アフレコ収録にも立ち会っていただきました。新谷さんにもアフレコは立ち会ってもらいました。

　全体の方針として……栩野さんの俳優としてのデビュー作は映画『仁義なき戦い・頂上決戦』（74年）なんですが、そういう映画の荒々しい広島弁ではなくて、女性がしゃべる柔らかい感じの広島弁にしましょう、と大きな方針を決めまして。そこから、全セリフを広島弁で新谷さんに吹き込んでもらって、それを各役者さんにガイドラインとしてお渡ししたんです。新谷さんにはお母さん役をやってもらいましたけど、お母さんの出番がないときでも現場にいてくれて、広島弁を聞いてもらいました。特に気をかけてもらったのは、やっぱのんちゃんの時ですよね。栩野さんと新谷さんの2人は、ずっといてくれました。

 
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