マイノリティーは排除せよという考えは本当に豊かな社会を招くのか? 異能者たちの果てしなき闘い『X-MEN』

 アポカリプスはマグニートーに命じて人類の文明をすべて破壊させるのと同時に、拉致してきたプロフェッサーXの肉体とテレパス能力を乗っ取ろうとする。この過程で、「恵まれし子らの学園」は無惨にも崩壊。プロフェッサーXの頭髪もみるみるうちに失われ、ついにスキンヘッド化するはめに。プロフェッサーXは「恵まれし子らの学園」の運営難によるストレスからスキンヘッドになったのではなかったのだった!

1608_xmen_ap03.jpgマグニートー(マイケル・ファスベンダー)はアウシュビッツ経験者。人間には何度も苦汁を飲まされ続け、ついに怒りが爆発。

「最後の敵は、神」という本作の宣伝文句を聞いたときは、てっきり『サイボーグ009』の「天使編」もしくは「神々との戦い編」みたいな観念的な内容になるのかなと思ったけど、アポカリプスはすごい能力を持ってはいるけど、009たちが戦おうとした人類の創造主とは異なる存在。宣伝文句であおりすぎだよと思いつつも、前作『フューチャー&パスト』に続いての登場となるクイックシルバー(エヴァン・ピータース)が今回も009ばりの超高速移動を披露するシーンがふんだんに用意され、大いに楽しませてくれる。特にユーリズミックスが83年に放った大ヒット曲「スイート・ドリームス」が流れるシーンは、めっちゃかっこいい。『サイボーグ009』が実写化される折りには、ぜひこれを上回るものを目指してほしい。

 それにしてもマグニートーは不憫だ。人より優れた能力を持つがゆえに恐れられ、迫害され続ける。彼が愛した者たちまで次々と殺される。『X-MEN』はマイノリティーに対するヘイトクライムの物語であることを改めて思い知らされる。マイノリティーを排斥することが、本当に豊かな社会に繋がるのか。自分の価値観では計れないものを切り捨てた、ひどく脆弱な世界ではないのか。相模原市の障害者施設で起きた悲劇を伝えるニュースを見ながら、そんなことを考える。異なる価値観を許容する理想社会を目指し、X-MENたちの闘いは終わることなく続く。
(文=長野辰次)

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『X-MEN アポカリプス』
監督/ブライアン・シンガー 出演/ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、オスカー・アイザック、ニコラス・ホルト、ローズ・バーン、エヴァン・ピータース、タイ・シェリダン、ソフィー・ターナー、オリヴィア・マン、コディ・スミット=マクフィー、アレクサンドラ・シップ、ルーカス・ティル、ジョシュ・ヘルマン、ベン・ハーディ、ラナ・コンドール
配給/20世紀フォックス映画
8月11日(木)より上映
(c) 2016 MARVEL & Subs. (c)2016 Twentieth Century Fox http://www.foxmovies-jp.com/xmen/

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