交通事故のように唐突に襲い掛かる制御しがたい感情、それは“ひと目惚れ” 2016年の注目監督・今泉力哉の世界

 靴職人見習いとして、韓国の青年・レオン(レン)は東京の小さな靴工房で黙々と働いている。昼休みは近くの広場にあるベンチに腰掛け、自分で握った塩おにぎりを食べ、また仕事に戻るというストイックな生活を送っていた。2年前、自分が信号無視をしたために交通事故が起き、日本人男性が車に轢かれるという事態に遭遇してしまった。それ以来、レオンは心の咎を感じて、職場の同僚たちとも交流することなく孤独に過ごすようになっていた。そんなレオンがいつものようにベンチで昼ご飯を済ませようとすると、その日は先客がいた。酔っぱらった若い女性・ソナ(韓英恵)がベンチで横になっており、心配そうに見ていたレオンに絡んできた。二日酔い状態のソナは悪態を突きながら、ヒールの折れた靴を手に去っていく。しばらくして、韓国人のサンス(ミンヒョン)の名前でヒールの折れた靴がレオンの職場に持ち込まれる。サンスはソナと同じコンビニでバイトしており、ソナの代わりに修理を頼んだのだ。

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 レオンはサンスの書いた住所を手掛かりに、ソナの居場所を探し当てる。その日からレオンは毎晩、仕事が終わってからソナの後をこっそりと追いかけるようになる。心を閉ざして生きてきたレオンだったが、ソナのことを想うと心がどよめいて仕方がない。夜ごとレオンはソナの後を追うが、そのレオンの後を追うもうひとつの影があった。レオンと同じ職場で働く小風(青柳文子)だった。レオンが心を閉ざしていることが気になっていた小風は、最近になってレオンの様子に変化が生じたことに気づき、やはり後を追うようになったのだ。夜の街に、忍び足で歩く男女の影がひとつ、ふたつ……と続く。数日後、小風は靴の修理を頼みにきたサンスに好意を抱かれ、ラブレターを手渡される。さらにソナの恋人・ジウ(JR)、ジウが片想いしている日本語学校の教師・加奈子(木南晴夏)が絡み、回転木馬のような一方通行の恋愛絵巻に。みんな自分が惚れてしまった相手のことに夢中で、自分のことを想っている人がすぐ近くにいることにぼんやりしている。愛すべきうっかりさんたちの輪舞曲が奏でられる。

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