基本はメール、それでもダメなら録音だ! 報酬未払いにライターが挑む【弁護士相談編】

――こういったトラブルへの対応策をネットで調べたのですが、話し合いで解決せず、裁判に行く前に、「内容証明を送る」というフェーズを挟んでいるものもありました。内容証明とは、どのような位置づけなのでしょうか?

山岸:内容証明は、なくても構わないものですね。今までメールでやりとりしていたものが郵送で来るので相手がちょっとドキッとする、という程度です。それまで十分やりとりをしていて、それでもダメなら内容証明を挟まずに裁判に行っていいですよ。

■裁判は「主張と証拠」。主張を裏付けるための証拠を、どこまで用意できるかが鍵

――裁判は、1人でできるものでしょうか?

山岸:簡易裁判、少額訴訟なら1人で、知識がなくともできますよ。訴状の作成は司法書士の方にお願いするケースもありますが、これも「訴状の書き方」でGoogle先生に聞いてみれば、たくさん出てきます。

――簡易裁判と少額訴訟の違いは何でしょうか?

山岸:請求できる金額の違いです。140万円以下なら簡易裁判、60万円以下なら少額訴訟ですね。手間も少額訴訟の方がさらに楽で、敷金の返還トラブルなどで利用されるケースが多いですね。簡易裁判、少額訴訟とも簡易裁判所に行って、受付の人に「裁判をしたいんですが」と聞けば、無料で丁寧に教えてくれます。チェックボックスがついたマークシートのようなものが用意してあって、選んでいくだけで大体の形はできてしまいます。

 また、簡易裁判、少額訴訟ともに、裁判官以外に司法委員という、世話を焼いてくれる人がいます。切った張った、ではなく、和解を勧めてくれるんです。

――当事者同士ではもう平行線で、というときに間を取り持ってくれる司法委員の人がいると助かりますね。ちなみにこういったトラブルの際に、「支払ってほしい原稿料」以外の「このトラブルで被った時間的損失」や「弁護士事務所、司法書士事務所等の相談費用」などを相手に請求することはできるのでしょうか?

山岸:これは原則としてできません。「自分の権利を実現するために使った費用は自己負担」が原則です。あらゆる裁判においても同様で、たとえば夫が不倫していて、不倫相手に損害賠償を請求する、というケースがあったとします。不倫の損害賠償請求は100~200万円が相場です。ここで、夫の不倫の証拠をつかむために探偵を30万円かけて雇った場合、この探偵分の30万円は不倫相手に請求できません。相手に請求できるのは損害賠償のみです。

 気持ちの問題もありますので、あくまで一例ですが、支払ってほしい原稿料が20万を超え、かつメールなど証拠も揃っているのであれば、少額訴訟をお勧めします。しかし今回のケースのように原稿料は数万円で、しかも証拠も口約束という場合、手間もありますし、負ける可能性もあるのでお勧めとは言いにくいですね。

 裁判は「主張と証拠」なんです。主張だけですと苦しい。それを裏付ける証拠がないといけません。また、このようなケースの場合、裁判ではライターの仕事を「請負」とするか「委任」とするかが争点になるのですが、これは難しいところですね。

――請負と委任の違いは何でしょうか?

山岸:請負は「完成しないと1円も報酬をもらえない仕事」です。大工さんがそうですね。柱だけ建てたところで作るのをやめた家には、お金は支払われません。一方、委任は仕事の完成を問わず、仕事を行ったことに報酬が支払われる仕事です。弁護士、医師がそうですね。請負だととらえられれば途中までの仕事にお金は出ませんし、委任だと見なされれば支払われます。

――たしかに、患者が亡くなっても、医師はお金をもらえますもんね。

山岸:前例を見ると、ライターなどのクリエイティブな業務に関しては、「請負」と「委任」が混ざったものとしてとらえられているケースが多いようですね。

――法廷においても、そこは判断がつきにくいんですね。

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立場によって言うことがやっぱり変わるんですね

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