実写映画レビュー

【実写映画レビュー】研ぎ澄まされた“ふつう”が顧客を満足させる、『バクマン。』の王道とは…?

 とにかく話を前に進めなければならないので、登場人物も思い切り良く間引かれた。特に女性キャラは、美保以外まったく登場しない。ライバルマンガ家の描き込みもそこそこだ。彼らは最高と秋人が紡ぐ美しき青春物語を120分で完結させるための兵隊に徹する。
 そのおかげで映画『バクマン。』は、極めてストレートな青春映画に仕上がった。「ストレート」とは文字通り、寄り道をしない、過剰なものがない、クセやひっかかりがないということ。それが「ふつう」の意味だ。

 「ふつう」チューニングは、悲しむべきことではない。パクチー嫌いにとってタイ料理屋での飲み会は憂鬱だし、都内の狭い道で超じゃじゃ馬エンジンのフェラーリに乗るのは恐怖だし、オタサーの姫からのメンヘラ気味な長電話は、容赦なくHPを削り取るからだ。
 「歪」は多くの人間に不快な思いをさせる。それを避けるべく、映画用に物語を大幅改変して「ふつう」仕上げとした大根仁監督(『モテキ』『恋の渦』)の判断は、実に正しかったと言えるだろう。

 なにより、映画『バクマン。』は、佐藤健、神木隆之介、山田孝之、染谷将太ら、旬の男優陣を巻き餌に、巨額の宣伝予算をかけて東宝が世に放つ大衆娯楽映画だ。断じて、出版社就職志望者や、「ジャンプ」崇拝者や、専門学校のマンガ学科生“だけ”を相手にした、職業うんちく作品ではない。合わせるべきチューニングは前者の「ふつう」志向であって、後者の「歪」志向ではないのだ。
 マンガ業界ウォッチャーでもない限り、読者アンケートの細かい運用ルールやアシスタント雇用の実情、マンガ編集者の仕事の流儀なんぞ、興味はない。だから大根監督は、これらの要素をばっさりカットした。原作を読んでいない、「ジャンプ」など一度も開いたことのない、マンガ業界にこれっぽっちも興味のない層も、予備知識なしで楽しめるよう、物語を単純化し、シンプル極まりないたてつけとした。その結果が「ふつう」だ。

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