実写映画レビュー

【実写映画レビュー】研ぎ澄まされた“ふつう”が顧客を満足させる、『バクマン。』の王道とは…?

1510_bakuman.jpg映画『バクマン。』公式ページより。

 原作は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で2008年から12年まで連載されていた同名コミック。マンガ家を目指す二人の高校生、佐藤健演じる真城最高(ましろ・もりたか/サイコー)と、神木隆之介演じる高木秋人(たかぎ・あきと/シュージン)が、憧れの「ジャンプ」編集部に作品を持ち込み、連載を獲得すべく奮闘する物語である。

 原作・大場つぐみ、作画・小畑健による『バクマン。』の原作コミックは、とにかく過剰・過多な作品だった。
 「ジャンプ」連載に至るまでの徹底的なプロセス解説、理詰めで説くマンガ創作論、劇中連載作のプロットや世界観の徹底的な構築。それらを緻密な絵と文字で記述し尽くし、埋め尽くす。余白も隙も許さない、饒舌の極み。脇キャラに至るまで、登場人物のパーソナリティは言葉で網羅する。「語り逃しは絶対に許さない」と言わんばかりの脅迫観念的な気迫が誌面に漂う、歪(いびつ)な作品だった。

 ところが、映画『バクマン。』は、とてつもなく「ふつう」である。
 歪さは消え、角が取れ、おとなしくなっている。パクチーがキャベツに置き換わったような、マニュアルのフェラーリからオートマのカローラに乗り換えたような、交際相手がオタサーの姫から三軒茶屋在住のOL(趣味はホットヨガ)に変わったような、そんな感じだ。
 床上浸水級だった情報の洪水度は抑えられ、くるぶしが濡れる程度のマイルド仕様に。好き放題繁茂していた物語の枝葉も、大幅に刈り込まれている。概ねコミックス第6巻までの話をたった120分に収めなければならないので、ダイジェスト感が半端ない。そのため、ストーリーはとても追いやすい。

 主人公のふたりがマンガ家になろうと意気投合し、最高が想いを寄せるヒロインの亜豆美保(小松菜奈)に想いを伝え、ジャンプ編集部にマンガを持ち込むまでのくだりは、原作読者からすればほとんど一瞬。まるで打ち切りが決まった連載マンガを、「あと10週」で無理やり終わらせるために、残りの冒険を不自然な急ぎ足でまとめにかかるような飛ばしっぶりだ。連載に至るまでの細かいプロセスや、「ジャンプ」名物の読者アンケートシステム解説、制作上のテクニックなども、かなり省略されている。

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