「言った言わない」トラブルは相手の良心に訴えろ! 報酬未払いにライターが挑む【司法書士相談編】

「こちらでそんなメモをとっても、『そんなこと言ってない』になるだけでは?」

「でも、相手の良心には訴えられますよね」

 法って、案外情緒なのかとうなった。また、裁判になってしまった場合、相手の良心に届かなくても裁判官の良心には訴えられるだろう。メールで残ればなおいいとは思うが、メールで相手も自分の首を絞めるようなことなど、なかなか言わないだろう。

 先方の言い分のメールを見てもらおうとしたら、これは30分と時間の限られた相談だから、という理由が大きいのだろうけれど、「相手の言い分なんて考えなくていいですよ。あなたは働いたのに報酬がもらえないから受け取りたい。それだけ考えればいいんです」と言われ、はっとした。それまでDVに悩み、でも別れられない、と話す女性をテレビで見るたびに、殴り返せばいいのに、自分に酔っているのだろうか、と思っていたが、平行線のやりとりを続ければ疲れてきて、不安にもなる。洗脳のメカニズムが分かった気がする。

 このへんで30分は過ぎてしまい、係の人に引き剝がされながら「裁判をする場合、控訴されたら長引きますけど、裁判所も和解を勧めてくると思いますし、自力でやるなら1万円以下でできるはずですよ」と聞いて相談は終了になった。

 やはりトラブルの相談で30分は相当短い。こちらの状況説明だけで、10分はかかってしまうのだ。緊急で困っている場合は(私もそうだが)民間の相談所、それも、未払い系に強い事務所で90分から2時間くらい話す方が、お金はかかれども、「一回でスッキリ」になれるのではと思う。30分の相談は、概要をつかんだり、セカンドオピニオンとして使うのが効果的だろう。いいアドバイスはいただいたし、専門家に聞いてもらうことで安心感も得られたが、主力で行くにはそもそも時間的に心もとなさすぎる、というのが実感だ。

■個人と企業の仕事なら、個人は警戒と注意を重ねてようやくイーブンという認識を

 今までの仕事でトラブルがなかったせいもあって、私自身脇が甘かった。出版業界が契約を後に交わし、口約束で進むようなゆるい業界であるからといって、その業界から仕事をもらう側が同じようにゆるくやっていたら、トラブルのときに困るのは立場の弱い側だけだ。この出来事はアンラッキーな事態ではなく、今後も起きうることであり、私はもっとこのことから学ばなくてはいけない。

 すべての仕事で記録をとるのは難しいが「規模の大きい仕事で、初めての相手先」なら、一冊専用のノートを用意しようと思う。打ち合わせのあとで議事録を作ってメールし、情報を共有するようにするのも方法のひとつだろう。また、編集者から全然返事が来ない、というのは普通によくあることなので(レスをくれる編集者ももちろんいる、と一部編集者の名誉のためにフォローしておく)、そんなものだろうと思っていたが、トラブルが起きたときにこれでは「そっちだって放置していたよね?」となってしまう。少なくともこちらは報告/連絡/相談においてベストを尽くしておき、その記録を残しておく必要はある。

 会社と個人が仕事をするときに、顧問弁護士もおらず法務部もないフリーランス側は、たとえ問題がなさそうな現場であっても、背後で公安とモサドとCIAが最悪の事態に備え有益な情報を拾わんと常に目を光らせている、くらいでようやくイーブンなのだろう。もともとが「結果オーライならいいじゃん」という性格なので「治において乱を忘れず」の意識は正直欠けている分野だ。これからは、意識的でなくてはいけないと痛感している。歴史好きのおじさん上司みたいだが、「治において乱を忘れず」と手帳に書き記しておいた。
(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])

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法律ってなかなか難しいですよね……

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