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元・夢追い人が綴る“俳優奮闘雑記” 第7回

舞台稽古に現れない女優の身に一体何が……? 舞台俳優たちの連帯感を左右するある離婚問題の話

 いやいや、彼女に何が起きたんでしょう? 見た感じ、かなり憔悴し切った様子で、とても稽古できる状態ではありませんでした。

 彼女は、「すいませんでした、よろしくお願いします」とボソリと言って、隅のほうでうずくまっていました。私自身は、少し安心していました。体さえ稽古場と本番の舞台にあれば、なんとかなるものだからです。

 ところが彼女は、ただでさえ出遅れているのにもかかわらず、出演しないシーンの時間は隅で寝ており、出演するシーンも立ちながら寝るという、普通なら「やる気がないのでは?」と思われるような状態でした。しかし、この時彼女は何か病的にまいってしまっているように見え、誰も責めたりできなかったのです。とはいえ、演出家だけはやはり彼女に「散々休んでおいて、どういうつもりなんだ!」と叱責せずにはいられません。その都度、どうしようもない、不穏な空気が漂っていたのを覚えています。

 ある日、私は彼女と2人になる機会があり、心配になったので聞いてみました。「体調があまりよくないようですが、何かあったんですか?」と聞くと、彼女は「実は……離婚したんです」と返すのです。「それで、引越ししたり、お金のこととかいろいろ大変なんです」と、話してくれました。

ーーそういうことだったのか……!!

 その後、やはりここは相当キャリアのある女優さん。生活も安定してきたのか、役を仕上げるスピードも速く、本番前にはきっちり出来上がっていました。

 舞台の仕事は、やはり集団の凝集性が問われることも多く、誰かが不安や悩みを抱えるとそれが他の人にも影響することは多々あります。「離婚した」と聞いて私も動揺しましたし、何より本番が成立するのか、その不安に巻き込まれました。しかし、そんなプライベートのゴタゴタも含めて、舞台創りの面白さとも言えるのかなと思います。

●SHINOBU
1983年、兵庫県生まれ。信州大学卒。「劇団山脈」出身の元俳優。同劇団では、脚本、演出も担当した。震災をテーマにした「関西少年」が話題となり、地元のテレビや新聞に取り上げられる。出演した主な舞台に、『水の話』(演出:中嶋しゅう)『血の婚礼』(演出:門井均)「黄金の刻」(演出:なかにし礼)「アセンション・ミロク」(演出:上杉祥三)など。

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