アニメ業界人が語る、ひそひそ秘話 【第5回】

フリーはつらいよ? アニメ業界で働くクリエイターが直面する“税金”の話

――日夜アニメが放送・放映され、盛り上がりを見せるアニメ文化。そんな中、アニメに関する事件や風聞、ムーブメントが話題になることも数知れず。それでは、実際にアニメの“中の人”はそんな万物事象をどう見ているのか? アニメ業界に身を置く安康頂一(仮名)が、大きな声ではいえないあんなこと、こんなことをひそひそと語ります。

1503_hisohiso.jpgイメージ画像:フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。(きたみりゅうじ/日本実業出版社)

 2月から3月にかけては確定申告のシーズン。フリーランスで働く人の多いアニメ業界では、「確定申告、もう済ませた?」が時候の挨拶のようになっています。

 アニメに関わる仕事をしていて、フリーランスという肩書きまで付けば、なんとなく派手で格好いいイメージを持たれるかもしれません。しかし普通なら会社がやってくれる税金の計算・手続きなどを自分でやらなければならない煩わしさや、知識不足によって報酬の一部を取り損ねたりするリスクも抱えています。

 今回はそんなアニメ業界における“フリーランスの税金事情”を、ギョーカイの隅っこに身を置く者として少し語らせてもらおうと思います。

■フリーランスが多いアニメ職種は?

 まず、フリーランスとは「個人事業主」のこと。会社に所属せず、個人で仕事を請け負う働き方です。正社員や契約社員などの雇用契約で給料をもらうのではなく、個別の作業ごとに契約を交わして報酬を得ています

 アニメ関係の職種の中で、アニメ制作会社の「社員」なのは、経営陣、プロデューサー、制作進行(制作デスクを含む)、総務・経理関係、広報の人たちなど。一方で、脚本家、アニメーター、仕上げ、特殊効果マンなどの人たちは、その多くが「フリーランス」です。撮影、編集、背景マン、3Dアニメーターは、所属するスタジオの方針によって正社員、契約社員、フリーランスとさまざま。監督はフリーランスがほとんどですが、社員の監督もいます。監督自らが立ち上げたスタジオの場合や、制作会社が「囲い込んでおきたい」と思うほど優秀な人材などであれば、社員監督になることがあります。

■フリーランス率が高い理由=なぜ社員スタッフ率は低い?

 冒頭に。アニメ業界はフリーランスで働く人が多いと言いました。それはなぜでしょう?

 アニメは、企画や宣伝、販売といったプロデュースをする製作委員会(もしくは製作会社)から出される資金を使い、制作会社が実際の作品を作ります。制作会社は作品の受注が途切れなければ常にクリエイティブスタッフに仕事を供給できるものの、作品の切り替わり時期などによってはスタッフを「遊ばせて」しまうこともあり得ます。ひと作品に数百人が関わるといわれるアニメ制作現場のこと、全スタッフを社員として丸抱えすれば人件費は膨大なものになり、経営が圧迫されかねません。だから必要な時にだけ仕事を受けてくれるフリーランスの存在は、制作会社にとって欠かせないのです。

 一方のクリエイター側にも事情があります。フリーランス最大のメリットは「受注する仕事量をコントロールしやすい」ことです。社員スタッフはスケジュールが悪化したとしても仕事量をセーブするなんてことはできません。仕事を断ろうものなら、会社からの査定、給料に響いてしまいます。

 その点、フリーランスは状況に応じて自分の割り当て量を調整する交渉ができますし、無理だと思えば仕事そのものを断ることもできます。さらに時給・月給などではなく単価仕事ですから、こなした作業量に比例して報酬を増やせます。このように制作会社側、クリエイター側の利害が一致した結果、現在のように、アニメ業界では「フリーランスとして働くクリエイター」が一般化したのです(反対に、クリエイターを積極的に正社員として雇用していたスタジオジブリなどは少数派といえます)。

■フリーランスを悩ませる“お金”の話

 フリーランスという働き方には、当然デメリットもあります。一番大きいのは福利厚生の部分でしょう。正社員であれば会社が半分負担してくれる健康保険(社会保険)と年金(厚生年金)ですが、個人事業主はこれらを自分で賄わなければいけません。さらに、収入に応じて「国民健康保険」とさまざまな組合保険のどちらが得かを考えるなど、工夫も必要になってきます。

 そしてフリーランスに特徴的なのは、今回のテーマでもある税金関係です。社員であれば会社が代わりにやってくれる煩雑な処理を自分で行い、「確定申告」して納税しなければなりません。この確定申告によって、税金を払い過ぎていた場合は後に「還付金」として還ってくるので、フリーランスにとっては死活問題です(半面、確定申告によって次年の納税額が上がる場合もあります)。

 このように、フリーランスはその言葉の響きに反して、金銭的な面では多くの煩わしい縛りを受けています。独立後に「ああ、自分は会社にいろいろ助けられてたんだなぁ…」と実感するのは、たいていこういった税金関係の手続きをしている時です。

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