専業同人作家、必見! 日本ネットクリエイター協会に聞く、同人活動で知っておきたい税・保険の知識

 2011年に発表されたコミケ35周年のレポート内のアンケートを見ると、参加サークルの前年度同人収支の項目で一番多かったのが「5万円未満の赤字」で全サークルのおおよそ半分ほど。一番景気のいい「20万円以上の黒字」と回答したのはおおよそ1割程度にとどまった。「同人で稼ごうなんて思ってないけど、楽しいし生き甲斐だから続けてる」層が主流なのだろう。しかしながら同時に、イベントに行くと「いったいこの人は、この日一日でいくら稼ぐのか?」と思うほど、すごい人気を誇るサークルも、ごくわずかながら存在しているのも事実だ。

 そんな同人長者や専業同人作家に限らずとも、正社員でなく、主に同人活動で生計を立てている人なら必須で考えないといけないのが、“税金と国民健康保険”についてだ。学校では教えてくれないこれらの知識は、「知っている」「知らなかった」の違いだけで年間の負担金額に大きな差が出ることもある。そんな中、ボカロPや歌い手、絵師、小説家といった同人クリエイターに向けて、税金などに関する啓蒙活動を行っている日本ネットクリエイター協会、仁平淳宏氏に話を聞いた。

――日本ネットクリエイター協会はどういった趣旨で設立されたのでしょうか?

仁平淳宏氏(以下、仁平) きっかけは、ボカロPなんです。ボカロPの曲がニコニコ動画で共有され、趣味の、内輪の楽しみとしてそもそも始まったものが、何百万回も再生され、ボカロPの人気楽曲を「着うた」で配信しよう、という話になりました。

 着うたがダウンロードされれば、回数に応じた報酬がボカロPに入りますが、その報酬は源泉徴収され、あらかじめ税が引かれた金額になります。ただ、曲を作るのにもソフトや機材など、費用がかかります。数百万円の機材を自宅に持つボカロPも少なくありませんし、こうした活動は自宅でしている人がほとんどで、自宅の家賃の一部も費用として計上できます。それらの費用を確定申告すれば、納めすぎた税金は戻ってきます。

――細かな計算や書類整理などの事務作業があるので確定申告は苦手、という人も多いですよね。面倒というイメージが先行し、始める前から苦手意識を持っている同人クリエイターも少なからずいそうです。

仁平 税や保険については社会人が生活していくに当たって必須の知識だと思うのですが、学校では教えてくれないですからね。ボカロPでも確定申告が苦手、分からない、という人が多かったんです。そこで日本ネットクリエイター協会設立前から「教育活動を行っていこう」と、税理士さんによるボカロPのための確定申告講座動画をニコニコ動画で流したんです。その時の動画は、当協会のホームページから、会員でない方でも見られます(外部参照)。確定申告の基本的な流れがわかりますので、ボカロPでない方にも参考になるかと思います。

――会員でなくても動画が見られる、となると、貴団体の会員になることのメリットは何でしょうか?

仁平 一番大きいのは健康保険です。当協会は「文芸美術国民健康保険(以下、文美国保)」の加盟団体のひとつで、当協会を通じ、文美国保に加入申請を出すことができます。文美国保に入ると、月の負担額が1万6900円(介護保険料別)になります。会社員とオタク業を兼業している人なら会社の健康保険組合に入れるケースがほとんどですが、そうでない方ですと自治体の国民健康保険(以下、国保)に加入することになりますよね。

※当該保険料は予告なく変更される可能性があります。詳しくは文美国保組合のサイトにてご確認ください。

――私自身会社員からフリーランスのライターになり、国保の負担額の多さに驚きました。自治体によって違いはありますが、だいたい年間の保険料は、前年の所得(収入から必要経費を除いたもの)の10%強くらいかかるケースが多いですよね。比率をかけて算出するから、所得が上がるほど負担が増してしまう。文美国保は所得に関係せず一律の料金、というのはとてもいいですよね。

仁平 文美国保側の審査が別途あるので必ず加入できるとは限らないのですが、文美国保側の審査に通らず加入できなかった場合は、当協会の入会費(1万円)、年会費(2万4000円)はお返ししています。

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