アニメ業界人が語る、ひそひそ秘話 【第5回】

フリーはつらいよ? アニメ業界で働くクリエイターが直面する“税金”の話

■浮上してきた“消費税”の問題

 会社員と違って、フリーランスではいろいろ面倒な税金事情。さらに最近では「消費税」の話題がクローズアップされるようになっています。昨年末、このようなニュースが流れました。

【東映アニメに勧告 消費増税分の報酬支払わず 公取委】
http://www.asahi.com/articles/ASGDK5DP6GDKUTIL027.html
(朝日新聞デジタル 2014年12月17日)

 簡単に言うと、消費税率が5%から8%に上がったことで、フリーランスのスタッフの報酬も3%分上乗せして支払うべきだったにもかかわらず、東映アニメーションが対応しなかったことで公正取引委員会からお叱りを受けたということです。

 売上1000万円以下の事業者(この場合、フリーのアニメクリエーター)は消費税の納税が免除されるため、寂しい話ですが、多くのアニメクリエイターは消費税を納める必要がありません。言ってしまえば、1年の売上が1000万円を超えない限り、発注者から支払われた消費税分はクリエイターにとっての“取り分”です。

 それを踏まえ、東映アニメーション側は「売上1000万円以下のフリーランスは納税免除だから消費増税は関係ないと勘違いしていた」とコメント。これは言い訳としては稚拙ですし、本当にそう認識していたとすれば大手アニメ制作会社としては問題があると言わざるを得ません。もちろんこれは東映アニメーションだけの問題ではなく、アニメ業界全体としては氷山の一角でしょう。

 そもそも、アニメ制作現場での消費税の扱いは、ずっとグレーのままでした。フリーランスに対する仕事の報酬として、消費税込みか別かすら、発注者が明示しない場合が多々あるのです。そのため、税込みで処理されてしまい、フリーランス側が消費税8%分を「とりっぱぐれる」状況は確かにあります。発注者である制作会社は、資金の出どころ(製作委員会各社)に対し、クリエイターに支払うべき消費税分を請求しているわけですから、受注者であるフリーランス側も消費税を請求して何ら問題はありません。8%といえば少なくない額になりますし、今後消費税が10%に増税されれば、売上1000万円以下のフリーランスは年収が1割変わることになるわけですから、仕事を請け負うときにしっかり確認することが大切です。

 上の例だけでなく、これまでアニメ業界全体が「フリーランスに支払う消費税」について認識が甘かったといえます。しかし、先の増税に伴って、アニメ業界ではようやく発注時の金額が消費税込みなのか別なのか明示されるよう、改善されつつあります。実際、筆者も2014年末にいくつかの会社から増税分の調整として、いくばくかの振り込みを受けました。
 
【まとめ】

 フリーランスとしてアニメ業界で働く人は、文字通り「事業主」として自分の身を守る=お金の仕組みを知って、収入を確保する必要があります。制作会社も、フリーランスの知識不足や立場の弱さにつけ込んだ曖昧な発注方針は改めるべきです。

「新人アニメーターの時給は500円以下」などのニュースがしばしば流れ、アニメ業界全体がクリエイターの労働力を二束三文で買い叩いているかのような印象が一部に広がりつつあります。悲しい話ではある一方、クリエイティブスタッフはあくまで実力主義・単価仕事であるため、求められるクオリティやスピードを達成できず「食えない」人が出てくるのは、ある程度仕方のないことだと筆者は考えます。

 であればこそ、しかるべき実力を備えたクリエイターは、きちんと評価されるべきです。制作会社などの発注者が、彼ら個々人の生活を気遣い、尊重し、成果に見合った報酬を用意する――それが徹底されることで初めて、アニメーションが「産業」として胸を張れるものになるのではないでしょうか。

■安康頂一
 仮名。都内某アニメスタジオに制作進行として勤務、現場の辛酸をベロベロ舐め尽くしたのち、同業別職種に転じる。現在はギョーカイの深海底でひっそりとコンテンツの明かりをともす、その日暮らしのチョウチンアンコウ。

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