アニメ『フルーツバスケット 2nd season』由希を抱きしめたくなる涙の第21話

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『フルーツバスケット』公式HPより

 ああああ、涙しかない。もう由希のことを丸ごと抱きしめてあげたい。それくらいに由紀の根幹となる部分をたっぷり詰め込んだエピソード。原作の15巻84話、85話の2話分が丁寧に描かれていた。

 由希の過去の回想から物語はスタート。物心ついた年齢となり、初めて慊人と対面した時、由希は涙をこぼした。あえて嬉しい、会いたくなかった。触れたい、触れたくない、という相反する気持ちが渦巻きながらも、この人に会うために生まれてきたという他の人たちには理解することすらできない感情をにふれた由希。

 ネズミは十二支の中でも地位が高く、慊人からも特別な扱いを受けていた由希。他の十二支ともかかわることなく、長い間由希と慊人は二人だけの時間を過ごしていた。だが、ある日突然慊人の様子が変わり今現在のように強い癇癪を起すようになってしまった。その癇癪は由希に対してもむけられ、由希の存在や人間性を否定するものばかり。 

 さらにその発言を裏付けるかのように、両親からの扱われ方や他の十二支ともうまく接することが出来ないという状況から由希は自分自身を責め始めるようになってしまう。

 元々体の弱かった由希は、よく咳をしていた。その音が耳障りだと罵られたり、それが慊人の癪に障るのだから辞めろと母になじられたり、誰も彼を庇って親身になって心配してくれる者はいなかった。

 そして、夾と出会った。初対面の時、由希は彼の髪色をきれいだと思った。同年代らしい彼をみて、友達になりたい、と思った。だが、彼は由希を見るなり「俺は絶対にお前を許さない」と、憎しみのこもったまなざしと声で切り捨てられてしまった。

 なぜ自分がそんなことを言われてしまうのかわからない。だが、慊人曰く、夾の母親が自殺してしまい、その遺書には「ねずみ憑きだったらよかったのに」という文言が描かれていたこと、母の葬式で夾が由希を殺して自分も死ぬ、と叫んでいたことが知らされる。

 人に心から恨まれ、疎まれ、必要とされないことに愕然とすう由希。一方の夾の周りには人がいて明るく、楽しそうな雰囲気が漂っている。親ですら、自分を顧みようとはしないのに、夾には本当の親ではないのに誰よりも親身になり、抱きしめてくれる師匠がいる。

 だが、由希にも友達ができた。学校でいつも一人ぼっちでいた由希にはなしかけてくれたクラスメイト。「友達になろう」と声をかけ、遊びに誘ってくれた。初めての友達に由紀の心は踊り、浮足立ち、そして失敗した。女友達がふざけて彼に抱き着いてしまったのだ。そのせいで、由希はネズミの姿を見なの前にさらしてしまい、初めてできた友達の記憶を消さなくてはならない事態に発展した。

 初めてできた友達を無くしまたしても暗い部屋に引きこもらざるを得なくなったとき、由希は夾が落とした帽子を拾う。拾った相手が由希だとわかった瞬間、夾はその帽子を切り捨ててしまう。誰からも必要とされず憎まれてしまう自分が、いなくなったらもしかしたら喜ばれるのかもしれない。そんな想いが浮かんでくる。

 鏡の中で、夾が捨てた帽子をかぶってみると全く似合わない自分が映っていた。彼に返したいが、きっと受け取ってもらえないだろう。そう思うと涙が溢れるばかりだった。 そして、彼は明け方の街に走り出す。消えようと思ったのか、逃げ出そうと思ったのかとにかく走り出し、知らない町へとやってきた。

 そこで出会ったのだ。本田透、今日子親子に。透が行方不明になったと大騒ぎする今日子の姿を見て、走ってきた最中にその特徴に当てはまる女の子がいたことを思い出した由希は、お母さんが探していたよ、と声をかけようとする。

 だが、女の子に近づくことにトラウマがある由希は近寄ることが出来ない。だが、人の姿を見て安心したのか、迷子になっていた透は頼みの綱が見知らぬ少年しかおらず、必死で彼のあとを追いかけ始めた。由希は、今まで誰にも必要とされてこなかったが、今この瞬間迷子の少女には自分だけが頼りの綱であることを実感し嬉しく思った。

 声をかけるわけでもなく、ただ今日子の元へと扇動していく。そして、二人の住むアパートの前までやってきたところで「よく頑張ったね」の想いを込めて、かぶっていた夾のキャップを彼女にかぶせてやったのだ。

 彼女が母親に会えた声を聴きながら、彼も疲労困憊でネズミの姿になってしまう。だが、由希は初めて誰かの役に立てた幸福感をかみしめていた。いなくなってしまった友人や、まだ名前を知らない透くんの役に立てたこと。誰も覚えていなくても、自分だけはこの事実を覚えていよう。そう強く思った体験だった。だが、この小さな希望は度重なる慊人の言葉にどんどん打ち消されて行ってしまう。そのままに、彼はここまで過ごしてきた。そして、高校でそうとは知らずに透くんと再会したのだ。

 小さな希望を思い出し、夾に対する想いも最初は憧れや羨望だったものがねじれてねじれて嫉みとなり、犬猿の仲のようになってしまっていた。本当はずっと、友達になりたかっただけなのに。

 この、夾に対する由希の気持ちが一番つらかった。ずっと友達になりたくて自分にないものを持っている夾に憧れていただけなのにねじれてねじれて最悪の関係でここまできてしまったんだと知って悲しすぎた。

 この回想は、翔の隣でぼんやりと行われていたようだ。由希は過去の恥ずかしい思い出を思い出していた、と語り、そんな時に透くんと出会い、何度も何度も自分の話を呆れたり叱ったりせずただただ聞いてくれた彼女が「お母さんみたいに」話を聞いてくれたことがうれしかったのだ、と語る。

 初めてこれ聞いた時はポカンとした。お母さんって……え!? みたいな。三角関係ストーリーだと思ってたからお母さんっておいってなった。でも、由希にとって、透くんは恋心を持つ相手ではなく理想的なお母さんのような存在だったのだ。

 そこに至るまでのことは次回語られるかもしれないけれど、一つ一つの重たい過去と向き合って彼が全てのことを言語化してこの結論にたどりつくさまは素晴らしかった。一人のキャラクターの心の中がやっとクリアになってきたことで、物語はどんどん進んでいく。次回も楽しみだ。
(文=三澤凛)

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