■黒のアーチャー:ケイロン(ギリシャ神話)
ケイロン(ケイローン)は、ギリシャ神話に登場する「ケンタウロス」という、馬の身体に、首の部分から人間の上半身が生えている、という怪物の個体名です。ただし『FGO』では能力が低下することを受け入れた上で、あえて人間の姿をとっています。
ギリシャ神話におけるケンタウロスは「未開、野蛮の象徴」として文学や美術に現れることからもわかる通り、非常に野蛮で乱暴、かつ好色です。また酒癖が悪く、お酒を飲むと必ずといっていいほど大暴れします。ギリシャ神話のエピソードにも、ケンタウロスたちが酒に酔ってその勢いで狼藉を働く、というものが見られます。
・ケンタウロスだけどケンタウロスじゃない
ケイロンは非常に賢く、数多くの神々から音楽、医術、芸術、狩猟、天文学、武術などの数々の叡智を授けられています。さらに森で狩りをして暮らしていたことから弓術、薬草学にも長けていました。
神の血を引き、学問に優れ、さらに武芸にまで秀でているという、まさに文武両道の賢者と言うべきケイロンは、数多くのギリシャ神話の英雄を教育しています。ヘラクレス、イアソン、アキレウス、カストル、アスクレピオスなど、神話に名高く知名度も高い英雄はほぼ漏れなく彼の教えを受けている、と言ってもよいほどです。
ケイロンの最後は、教え子の1人であったヘラクレスによってもたらされました。ヘラクレスとケンタウロスたちが激しく戦っている折、ケイロンはその戦いに巻き込まれてしまい、不幸にもヘラクレスの放った必殺の毒矢「ヒュドラの毒矢」の流れ矢に当たってしまうのです。
ケイロンは不死身であったのですが、ヘラクレスの毒矢はそれを受けた者を必ず死に至らしめる、解毒不可能なものです。ケイロンは死ねない身体で死の苦しみを味わい続け、結局はゼウスに頼んで不死身の能力をプロメテウスという神に譲ります。そしてケイロンは死亡、地獄の苦しみから解放されました。
賢者の死を惜しんだゼウスは、ケイロンを天に上げ置きました。それが現在の「射手座」なのだそうです。
――さて、いかがでしょうか。元ネタを知れば、キャラクターのエピソードや設定をより深く掘り下げられ、別の角度からも楽しめるようになるはずです。
次回はキャラクターの原典のほか、知名度の高さに反してその実態がよく知られていない「人工生命体」についてもご紹介します。
■文・たけしな竜美
オタク系サブカルチャー、心霊、廃墟、都市伝説、オカルト、神話伝承・史実、スマホアプリなど、雑多なジャンルで記事執筆、映像出演、漫画原作をしています。お仕事募集中です!
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