『Fate/Apocrypha』から学ぶ! 一番わかりやすい『FGO』原典紹介(前編)

 このほかにも、ジークフリートがある城に泊めてもらおうとした時など、(おそらく深夜にも関わらず)閉じられた門を激しく叩きながら「武者修行中の俺様が来たぞ、門を開けてくれ。寝ている者を全員叩き起こして俺を迎え入れろ」と言い放っています。高飛車な物言いに、当たり前のことながら怒りを買って巨人の衛兵に襲われるのですが、それをねじ伏せ、城主に「あなたに仕えますので、どうかその者の命を助けて下さい」と言わしめました。

 これ以外にも妻を張り倒す、よくわからない理屈で部下を血みどろになるまでボコボコにする、女性を組み伏せて持ち物を盗む、ブンゴルドという国に美しい姫がいるという噂を聞き及んでその国へ向かい、王に向かって「この国を俺の力で征服してやる、ついでに美しい姫も俺様のものだ、覚悟しろ」と言い放つ(この時に王はジークフリートを食客として迎えもてなし、何とか穏便に済みましたが)など、乱暴なエピソードには事欠きません。

 また、北欧神話の影響が比較的薄いことによるのでしょうが、ドラゴン退治のエピソードは非常に軽く、別国の重臣が王に対して「ジークフリートは昔、竜を退治しており、その際に竜の血を全身に浴びて肌が不死身の甲羅と化したのです。どんな武器でも肉体には傷一つ付けられません」と進言しているだけです。

 これら『ニーベルンゲンの歌』と、『FGO』におけるジークフリートの設定を顧みるに、どうにも北欧神話の英雄「シグルス」、あるいは『ニーベルングの指環』の「ジークフリート」とごっちゃ混ぜになっている感があるのですが……。

ジークフリートさんまたやってしまったねぇ

1705_fgo01_03.jpg Wikimedia Commonsより。王妃によって天井に吊るされたブンゴルド国王

 ジークフリートが暗殺されたのは、彼がブンゴルド国の王に頼まれた恥ずかしい密約(王が王妃より弱かったため、夜の営みを力づくで断られていた。そこでジークフリートの提案により、ジークフリートが姿を隠せる魔法の外套を使って王に成り代わり、怪力で王妃をねじ伏せ「二度と夜の営みを断らない」と宣言させた)を妻にバラしており、さらにその証拠となる物品を妻へすべて与えていたことが原因でした。

 ある日のこと、ブンゴルド国の王妃とジークフリートの妻はささいなことから口論を起こし、激昂したジークフリートの妻は、大衆の前で夫から聞いた密約の内容とその証拠を挙げて、王と王妃に大恥をかかせたのです。

 これは王と王妃に対する大変な裏切りでもあり、特に「決してそのようなことはしていないが、別の男と寝た、と勘違いされても仕方がない」という、貞淑を疑われかねない立場となった王妃は「ジークフリートを殺して恥辱を晴らすか、自殺をするか」の二択を迫られます。

 それを察したハゲネという家臣は、ジークフリートは自分が暗殺する、と申し立てるのです。あのように口が軽いジークフリートを生かしておけば、今後もこの不名誉な話をほうぼうで吹聴するだろう、という考えもありました。

 そしてハゲネは綿密な暗殺計画を立てます。日取りを決め根回しを行い情報を集め、「竜の血を浴びた際に、背中に1枚の菩提樹の葉が張り付いていたため、そこだけは柔らかい」という唯一の弱点も確認します。そして計画通りジークフリートに武装を解除させてそこを刺し貫き、ハゲネは無敵の英雄を暗殺したのです。

『FGO』では「自身が死ぬしかないという状況に追い込まれた」とされていますが、ここまで紹介した『ニーベルンゲンの歌』のエピソードを顧みれば、思慮の浅い相当なろくでなし。おそらくほとんどの方が「自業自得、暗殺されてもしょうがない」と思われたのではないでしょうか。

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