ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ソング」第6回

花總まりさまの歌う「私だけに」に しがらみの中を日々生きる世の女性たちの声なき声を学ぶ

 宝塚はいつの時代も、窮屈な思いをしながら、それでも平凡に日々を生きていかざるを得ない女子の心の支えであったのでしょう。2014年4月に宝塚100周年の記念式典で歌われた、瀬戸内寂聴さん作詞の「虹の橋 渡りつづけて」には、「ああタカラヅカ それは母の切なくすがる夢のいこい ああタカラヅカ それは祖母の永遠(とわ)の甘い夢のゆりかご」という歌詞がありました。また少し古い小説ですが、有吉佐和子『紀ノ川』にも、主人公の娘である文緒が生徒規則に反抗してタカラジェンヌを真似た緑の袴で通学するくだりがありました。

 つまりこの「私だけに」は、宝塚で夢のひと時を過ごした後、それでも現実の生きづらさとなんとか折り合いをつけながら生きていく、世の圧倒的大多数の女子の気持ちを、身もふたもなくそのまんま歌詞にしてしまった“共感ソング”なのではないかと思います。wojoが初めてこの曲に接した時はまだまだお気楽な18歳でしたが、そんなwojoでさえも、「なんか、すごくわかる!」と激しく胸に迫ってくるものがあったことを記憶しております。

 ミュージカルの中で「私だけに」を歌い終えたエリザベートはその後、長く、決して幸せばかりとはいえない人生を歩んでいきます。みずからと葛藤しながら、そして傍らには、「死」の象徴である「トート」(トップスターが演じます)が常に寄り添いながら……。最後は、そのトートと相思相愛になり死んでいく、というストーリーです。決して死を美化しているわけではないと思うのですが、ただ、人生を一生懸命に歩んだ先には素敵な人(=「死」なのですが)と結ばれる、という、ある意味においては希望に満ちたメッセージをも放っています。

「トートみたいな素敵な人が最後に待っていてくれるなんて、そんなおとぎ話みたいなこと現実にあるわけないやろー!」と思いつつも、「もしかして……」とどこかで期待しつつ、「今日の苦労は明日の楽!」と自分に言い聞かせ、今日も馬車馬のごとく働く……。ああ、宝塚って、女子の気持ちを恐ろしいほどにもてあそびますね……。ふう。

 エリザベートも、一生懸命自己を主張しながら彼女自身の人生を生きたのだから、私もがんばるか……。そう思いながら今日も、患者さんが待っておられる病院へと向かうwojoなのです。

wojo(ヲジョ)
 都内某病院勤務のアラフォー女医。宝塚ファン歴20年で、これまでに宝塚に注いだ“愛”の総額は1000万円以上。医者としての担当科は内科、宝塚のほうの担当組は月。

 先日、東京・日比谷で仕事の研究会があった後に、宝塚ファンではない女医さんと2人でビックエコー有楽町店にカラオケに行きました。たまたまかの有名な「宝塚歌劇ルーム~アンコール・ステージ~」の部屋が空いていたので、一緒に行った女医さんにお願いして、その部屋にしてもらいました。

 入口からすでに華やかで、中はもう宝塚そのもの! 前のお客さんの歌った履歴が見られるのですが宝塚ソングばかりで、しかもかなりマイナーな曲も選曲されており、すごかったです。一緒に行った女医さんはただただ呆れておいででしたが、最後は「愛あればこそ(有名なベルばらの曲)」の男役の旋律を無理やり歌っていただき、私が女役の旋律をハモるという、かわいそうな目に遭わせてしまいました。もう一緒にカラオケには行ってもらえないかもしれません……。

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