CGWORLD2014 クリエイティブカンファレンス・レポート

『ウサビッチ』制作のカナバングラフィックス10周年! 「CGクリエイターを目指すのではなく、目指すものを考える」

1412_kanaban1.jpgCGWORLD2014 クリエイティブカンファレンス内「CGクリエイターを目指すこと」の様子。

 2014年7月20日、ショートアニメ『ウサビッチ』などで知られる映像プロダクション・カナバングラフィックスが会社設立10周年を迎えた。代表の富岡聡さんは、去る11月23日、CGWORLD2014 クリエイティブカンファレンスにて「CGクリエイターを目指すこと」と題してトークを行った。

■モデラーから3DCGデザイナーへ…創作の原点と過程 当時の“CGバブル”も体感

 富岡さんの創作の原点は、3歳の頃にアメリカにいた際、親に買ってもらったリチャード・スカリーの絵本だったという。6年ほど前に実家から送られてきた絵本を見たら、『ウサビッチ』の絵コンテに似ている部分があるなど、クリエイティブのリソースが幼稚園の頃に見ていた作品の影響があることに気付いたそう。

 小学生時代は『21エモン』『ウメ星デンカ』『モジャ公』や『トムとジェリー』から『機動戦士ガンダム』へと移行しながら傾倒。『ガンダム』はプラモデルも作っていたため、高学年ではMSV(モビルスーツバリエーション)シリーズにもハマった。さすがに中学生になってからはやめないと友達がいなくなると思ったものの、『機動戦士Zガンダム』が始まった上に、制作したプラモデルが地元の模型店のコンテストで優勝、模型誌に掲載……とやめられなくなった。高校生の時は『マシーネンクリーガー』、大学(東京農工大学)に進学してからはチェコ、ロシア、フランスのアニメーションや映画にハマっていく。

 3DCGとの出会いは、大学院時代。ゲーム会社がPhotoshopとIllustratorを使えるパッケージデザイナーをアルバイトで募集していたので応募したところ、初日に「奥行きのあるPhotoshopだよ」と言われて3DCGを覚える羽目になったという。当時は「CGWORLD」などの専門誌もなかったので、中野にかつてあった映像系ショップ「マンダレイ」が扱っていたフリーペーパーのような洋書や、その後「design plex」(BNNが発行していた雑誌)で笹原和也さんが開始した3DCGソフト・LightWaveの連載「BORN TO BE WAVY」で学んだ。3DCGはガンプラみたいで面白いと感じて、この道に進むことを決意した。

 当時の個人のパソコンではモデリングと1枚絵のレンダリングが限界で、アニメーションの連番を出すのは難しかった。そのためキャラクターや車など、モデリングしたものでポートフォリオを作った。1997年、一度採用に落ちているドリーム・ピクチャーズの門を再び叩き「2回応募してきた奴は始めてだ」ということで採用された。

 ドリーム・ピクチャーズでは、1人1000万円くらいする機材が割り当てられていた。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でデロリアンがタイムスリップした時に残すタイヤ跡の炎を作ったVFXデザイナーなどがハリウッドから来てたのもあり、ワクワクしながら毎日を過ごす。CGアニメーターも手描き出身が大勢を占め、彼らから手描きならではのデフォルメの仕方を教わった。富岡さんの役職はモデラーだったが、すべての工程が楽しく、これだったら1人でもアニメーションを作れるのではないかと確信、家に帰ってから個人で作品を作り始めた(当時はドリーム・ピクチャーズも含め、3DCGで長編映画を作るというプロジェクトが国内でいくつかあったが、完成したのはスクウェア・エニックスの映画『ファイナルファンタジー』だけだった)。

 こうして自主制作した『Sink』は、子供の頃から潜水夫が気になっていたので作ってみた作品で、これをショーリールとして営業を開始。CSの番組が増え始めて作品が不足していた時期でもあったので、15秒から1分のアニメーションを2、3週間で納品する仕事などもこなした。またテレビ朝日でクリエーター発掘番組『D’s Garage 21』が始まった。NHKの『デジタル・スタジアム』もそうだったが、自主制作作品を人に見てもらうのが非常に困難だったため、それをテレビで発表できるというのは衝撃的だった。テレビで取り上げてもらうと、露出度が非常に高いので、おじちゃんおばちゃんからも「見たことがある」と言ってくれるだけでなく、番組がサポートする形で新しいオリジナル作品を作らせてもらえたり、『D’s Garage 21』を放送していた同じテレビ朝日系列の『トゥナイト2』に出演したこともあった。

 04年にカナバングラフィックスを設立。06年からシリーズがスタートする『ウサビッチ』は、MTVから話が来た。自分のテイストの作品は番組があったから成り立っていたとして、作品の世界観をモデラーの宮崎あぐりさんに委ねて企画書を制作。アートディレクターと相談して作っていく形をとった。そして、「モーションを手付けで調整するCGアニメーションの集大成にしたい」という思いで『ウサビッチ』を作った。

『ウサビッチ』はMTVでの放送と携帯での配信だったが、海外のユーザーがYouTubeに違法転載、それがニコニコ動画にも転載と広がったことでヒットにつながった。ちょうど「初音ミク』の流行と同じ時期でもあり、“メディアが変わる瞬間”に乗れたのがヒットの要因として大きく、今また同じような作品を作っても同じように広がらないのではないかと富岡さんは分析する。

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