CGWORLD2014 クリエイティブカンファレンス・レポート

『ウサビッチ』制作のカナバングラフィックス10周年! 「CGクリエイターを目指すのではなく、目指すものを考える」

■CGクリエイターを目指すのではなく、CGクリエイターが目指すものを考える。

 子供の頃より辿った話から、翻って話は現在へ。富岡さんは「ゲーム会社はゲームを売る」「アニメ会社はアニメを売る」という一方で、「CG会社は何を売ればいいのか?」がまだ見えておらず、予算の関係からも難しいと感じている。韓国は、「ジャンプ」系のようなキャラクターが出てくる作品をテレビシリーズや映画として欧米に売っている。しかし、それらは本来、日本のアニメ会社がすべきなのに、まだまだ日本のアニメ会社はグローバルの視点を持てないのでは? と感じる場面もあるという。いずれにしても、ビジネスを動かしている業界の人たちに頼っている状態であり、待っているだけでも仕事は来るものの、海外に展開するしないにかかわらず、自ら動けば道が何かしら拓けて楽しくなるのでは? と展望を明かした。

1412_kanaban2.jpgカナバングラフィックス代表の富岡聡さん。

 そして、カナバングラフィックスが“好きなものを作っているクリエイター集団”だと思われていることに対しても、組織的にビジネスライクで物事を進めていることを強調した。逆に受託案件のみをこなしている会社がクリエイター集団に見えるという。「先日もアーティスト集団と言われたが、劣悪な環境で過酷な修行でもしてるわけではない。受託の案件でも、ただ作るだけでなくクリエイティブ面に積極的に提案するように心がけている」(富岡さん)と述べた。

 また、10年前は「CG映画やアニメを作りたい」とか、「ハリウッド映画のVFXを担当したい」と言う尖っている人が多かったが、今はほとんど見かけないので、ベテランの人には昔の情熱を取り戻してほしいとの希望を吐露。一方で若い人に対しては、ビジネスのことは考えずに、今しか作れない、多くの人の記憶に残るような圧倒的な作品で爪跡を残してほしいとエールを送った。

 最後に、トークのお題「CGクリエイターを目指す」については、「そうではなくて、“CGクリエイターが目指すもの”を考えないといけない」と、本質に触れた。

 カナバングラフィックスはやはりオリジナルで食べていきたいということで、現在の取り組みとしては、自社でコンテンツの開発とプロデュースを行っている『やんやんマチコ』がある。本編制作、DVD発売イベント、SNS運営、通販、アプリ開発、雑貨のOEM生産など、プロダクション1社でやるのはなかなか難しいものの、ファンの人達はこう思うんだとか、ライセンシングや流通の人たちと関わっていくためにはこうしなければならないとか、貴重な情報が得られる。そこで得られる情報があるからこそほかのことができる。富岡さんにとって、『マチコ』で儲けたいというよりは、ビジネスをしていくという意識を失わないために続けていきたいそうだ。

「自分たちにはない力を持ったパートナーと組みたい」という取り組みでは、求人サイト「an」のコンテンツ『アンドーくん』がある。『アンドーくん』は、「an」を運営するインテリジェンスと広告代理店の電通、そしてカナバングラフィックスの3社で権利を持っており、ただキャラクターを制作するだけでなく、ライセンシングやプロモーションも提案している。これは実績などを踏まえた信頼の上で対等につきあってくれているそうだ。

 このほか、すでにマーケットを持っているキャラクターのスピンアウトの提案もある。実際に商品の売り場はあるものの、アニメ化されていないキャラクターの版元を尋ねる。商品は定期的に入れ替えていかないとならないので、ちょっと切り口を変えると売り場が賑わうという目算だ。キャラクターものはキャラクターを支えるバックグラウンドがないものが多いので、背景や世界観を補って厚みを持たせるためのアニメ化という提案である。

 一方、カナバングラフィックス内部の取り組みとしてはクリエイターが育つ土壌作りを行っている。同社には絵描きのモデラーが多く、デザインの落とし込みを各人で共有し、脚本と演出はブレインストーミングを行っている。全員でネタ出しをしながら組み立てていくため、脚本の厚みが増したものの、出てきたネタをどう構築していくのかが今後の課題とのこと。

 今年はスタッフが個展をやったりデザインフェスタに出展した際に経費が大変だ、ということを受け、会社で経費を負担してカナバングループ展を実施。こちらは福利厚生のようなものになっている。

 トークの終わりに、今後の戦略として、クリエイティブは組織で行うことを挙げた。20代や30代はセンスやトレンドがハマれば、相手のことやマーケットを考えず、ひとりよがりでも仕事が成り立つが、年をとって時代にあわなくなればそうはいかなくなる。しかし、組織で考えればお互いの知識も技術もアップデートし続けることが可能になる、というのがその理由である。

 このように自身のこれまでを振り返る形で現在まで俯瞰した富岡さん。「情報を共有して業界を盛り上げられたらいいな」と、会社説明会も含めて今後も定期的にこうした話をする場を設けていきたいとしていた。
(取材・文/真狩祐志)

■カナバングラフィックス
http://www.kanaban.com/
■CGWORLD2014 クリエイティブカンファレンス
http://cgw.borndigital.jp/2014/

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