『アルモニ』パッケージ発売で吉浦康裕監督を直撃! 劇中ラノベ『絶対零度のクラウディア』は出版可能!?

1411_harmonie1.jpg北九州市漫画ミュージアムにて、吉浦康裕監督。9月14日、北九州国際漫画フェスタの「吉浦康裕『サカサマのパテマ』トークと上映会」で来場した。

――11月28日、短編アニメ『アルモニ』のBlu-ray&DVDが発売になった。コレクターズ・エディションということもあり、特典が満載なパッケージになっているのが魅力だ。この『アルモニ』は、文化庁の若手人材育成事業の一環であるアニメ・オムニバスプロジェクト「アニメミライ2014」4作品のうちの1作品として制作された。4作品はともに映画館での上映、テレビでの放送、4作をまとめたパッケージでの発売も行われている。このたび『アルモニ』単体のパッケージ発売に際し、吉浦康裕監督にお話をうかがってみた。

■制作の経緯と反響 個人制作出身にとって有利に働いたタイトなスケジュール

 すでに『アルモニ』を見ているファンであれば、本作は密度の濃い作品であることがわかるだろう。改めて吉浦監督の話を聞くと、“濃さ”を想定した上で制作されたことが見えてくる。

吉浦康裕(以下、吉浦)「最初はアニメミライ用だから短編だったんですけど、アニメミライって制作した作品の権利は全て制作側に帰属するので、『その後にシリーズ展開できるものがあるといいよね』ってプロデューサーに言われて、テレビシリーズ想定なら1クールか半クールくらいの話を考えた上での第1話って位置づけで作り始めました。

 でも、さすがにそれだと“ただの第1話”になってしまうんです。そこで本来だったらある程度の話数をかけて消化する話を凝縮して、いろんなどんでん返しとか、オチも含めて1話で完結させないといけないかなと思って、1話+後半の話数のいいところを持ってきました。一応、1話でも完結するところに落とし込めて良かったです。『これで(「アルモニ」)全シリーズを作ってくれ』と言われても作れますが」

 アニメミライは3月の募集から5月の採択後、翌年2月の完成に向け、丸1年かけて25分のアニメを制作する。1作品当たり3800万円の予算、テレビシリーズ以上、映画未満のクオリティーを目指すプロジェクトだ。とはいえ、本来の目的は若手アニメーター育成なので、彼らの指導も含まれるなど、実際はタイトなスケジュールを余儀なくされる。さらに『アルモニ』の場合は、学校のシーンに夢の世界のシーンと、世界観が2つある。

吉浦「不思議なもので、一般的なプロダクションワークのスタジオにしてみれば確かにキツいんですけど、僕は慣れてて、わりといつも通りでした。自分はスタートダッシュで1人で動けますし、学校内での出来事だからそんなに設定も要らない作品なのでワークフローも決め込んで、冒険をして失敗するかもしれない作品よりも安全パイで突き詰めようって、あえて狙ってやったんです。

 2つの世界観といっても、学校のほうはいつもの得意なやり方(=3DCGで背景セットを組む)ですし、夢の世界のほうはPV的な作り方をしました。夢の世界はカットワークのすり合わせとかが要らないので、ある程度コンテで描いて、あとは美術と作画の力で持ってったところがあります。夢の世界のシーンは(アニメミライから)許可をもらった上でやってますが、若手は一切関わってないです。若手がやるところは、なんとか自分が支えきれるような作り方にして、あとはいつもの作り方にしてますから、いい意味でクオリティーコントロールができたと思います」

 以上のような点から、アニメミライ2014の4作品の中でも、特に『アルモニ』の企画は密度が濃かったと選定委員からの声も耳にした。吉浦監督がタイトなスケジュールに対応可能なのも、キャリアのスタートが個人での制作からなのが大きい。小回りが利く少人数での制作に長けているからこその強みだ。

吉浦「短編にしては密度の濃い作品になってると思いますが、最初に伏線つけて、それがちゃんと意味としてつながっていくようにはしてます。作品の尺が短いので、序盤で油断してても後で『あ、そうだったんだ!』って、細かいとこでも気づけますよね。例えば、最初にヒロイン・真境名樹里が携帯のマナーモードを解除しちゃうとか、ちゃんとすべて、話に絡んでるんですよ。授業中に携帯が鳴り出すために、どうしたら自然に鳴らせるかを考えました」

 長編やテレビシリーズはともかく、短編であれば序盤からいくつか伏線を張って、即座に回収をかけていかないと間に合わないところもある。密度の濃い『アルモニ』の場合でも、アバンタイトルをすでに伏線にしているのがわかる。ちなみに『アルモニ』は、吉浦監督の前々作『イヴの時間』での学校のシーンでやってみたかったことでもあるそう。その『イヴの時間』でも、例えば第1話、主人公・向坂リクオがコーヒーを飲んで、「ん?」と言うところが伏線であることに気づけるかどうかも焦点になっている。

吉浦「リクオがコーヒーを飲むとこは演出の力量というか、丁寧にすべきだったのに、わかりづらくなっちゃったなと。あれを士郎正宗さん的な“狙ったわかりにくさ”だと解釈してくれる人が多くて助かりました(笑)。最初の頃って『これでわかるだろう』って思いがちなんですよね。どの作品でも『ああすればよかった』とか後悔が残るんですけど、『アルモニ』は比較的自分の中で満足度が高い作品で、やりきったなって。今までの中で、一番まとまり感はあるなと思ってます。

 不自然なところは余韻ということで流してるんですけど、それも含めて意外と良かったのは、予想してたよりも『これはこれで完結してる』って意見が多かったんです。もちろん『続きが気になる』って人もいますし、MBSで放送された時【編注:2014年3月31日にテレビ放送された】は新番組の開始時期と重なってるから『2話あると思ったら、なかった』とか(笑)。『夢の世界の話も、もっと見てみたい』って意見もありますが、面白いことに『あそこで話が終わってるからいいんだ』って意見もあって助かってます」

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