北九州市漫画ミュージアムで北九州国際漫画フェスタ初開催！　『サカサマのパテマ』監督・吉浦康裕も登場

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『サカサマのパテマ』展示の様子。

　9月6日より、北九州市漫画ミュージアムにて北九州国際漫画フェスタが開催中だ。北九州国際漫画フェスタは今回が初開催。その展示内容は3つに分かれており、文化庁メディア芸術祭北九州特別企画「越境するマンガとメディア」、ニコラ・ド・クレシー展「京都手帳 CARNETS DE KYOTO」、「IKKI TO THE NEXT STAGE!! 北九州編」となっている。

「越境するマンガとメディア」の初日には、今年の第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞した『はちみつ色のユン』の上映会が行われた。このほか会期中のイベントとしては、「越境するマンガとメディア」内で9月14日に吉浦康裕『サカサマのパテマ』トークと上映会、9月15日に原正人「グローバル化するMANGAとバンド・デシネ」、9月23日に竹熊健太郎「オンラインマガジン『電脳マヴォ』の挑戦」がある。「IKKI TO THE NEXT STAGE!!」では、9月27日に五十嵐大介×西島大介トークライブを実施する。本稿では、9月14日に行われた吉浦監督による『サカサマのパテマ』トークと上映会の様子を簡単ながらお届けしよう。

『サカサマのパテマ』は、昨年のアヌシー国際アニメーションフェスティバルでワールドプレミア（世界初公開）、東京国際映画祭でジャパンプレミア（日本初公開）、そして同年13年11月9日より日本国内で一般興行を開始した作品。角川シネマ新宿では、明けて1月9日までのロングランと息の長い上映となり、第17回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門では優秀賞を受賞。今回、「同人マンガや自主制作アニメとキャリアパスの多様化」と題されたサブテーマ内で展示されることとなった。

吉浦康裕監督トークイベントの様子。

　吉浦監督が育ったのは福岡市で、北九州市が同じ福岡県内であることから、トークイベントでは在学していた九州芸術工科大学（現：九州大学芸術工学部）で『キクマナ』や『水のコトバ』などを自主制作、卒業後に初の商用短編『ペイル・コクーン』を制作していた頃の話から始まる。そして上京してからの『イヴの時間』や『サカサマのパテマ』とメイキングを織り交ぜつつたどっていった。

　そして、話は展示のサブテーマを受けて、アニメ業界でのキャリアパスについて展開されていく。一般的に、既存のアニメ業界でのキャリアの積み方として、監督になりたいなら演出か制作進行を経由する必要がある。加えて、黙っていてはダメで常に「監督になりたい」と公言して声が掛かるのを待つのだという。一方、吉浦監督自身は自主制作あがりであるため、業界叩き上げの作画監督・又賀大輔さんや美術監督・金子雄司さんとは初期に壁があったということも吐露していた。しかし、クオリティを上げるために少数精鋭だったこと、世界観の意思疎通を図るために1年くらいと長い準備期間を設けたことが両者間の壁を取り払う結果になったと語る。さらには、『サカサマのパテマ』は割と低予算での制作で、それを感じさせないように作るのが大変だったという裏話まで飛び出した。

　現在『サカサマのパテマ』は、日本ではパッケージ販売までされているが、海外では引き続き上映が続いている。海外の配給では日本よりもファミリー向けに本作をアピールしていることもあり、日本以上に子供が見てくれているという。また登場キャラクターのイザムラが分かりやすい悪役であることが、海外ではかえって珍しく受け止めてもらえているそうだ。このほか、本作はクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で、海外向け豪華パッケージ制作の出資が成立しているという。ファンにとっては日本版との違いが気になるところだろう。

　こうして、吉浦監督のこれまでの来歴から、自主制作出身監督のキャリアパス、海外需要などなど、話は広範にわたり、盛況のままトークイベントは終了した。北九州国際漫画フェスタは9月28日まで開催している。見応えのある展示が多いので、トークイベント以外でも、会期中に是非とも足を運んでおきたい。
（取材・文／真狩祐志）

■北九州市漫画ミュージアム
http://www.ktqmm.jp/
■『サカサマのパテマ』
http://patema.jp/