【初心者歓迎! アメコミ道場 Vol.1】

アメコミの表現規制が『キック・アス』原作者を育んだ!? アメコミの自己批評性が生み出したマーク・ミラーという作家

――空を見ろ! 鳥だ! 飛行機だ! いや、スーパーマンだ!! バットマンだ!!! スパイダーマンだ!!!! アイアンマンだ!!!!! X-MENだ!!!!!! ヤツラは、そう……アメコミだ!!!!!!! コミックはもちろん、映画やテレビドラマ、ゲームなどあらゆるメディアを席巻し、世界のエンターテインメント界の中心に位置するアメコミ宇宙(ユニバース)。そして、その波は確実に日本にも押し寄せている。

 公開が迫る『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『アメイジング・スパイダーマン2』を筆頭に、今年はアメコミ映画が目白押し、テレビでも、マーベル初の男児向けアニメシリーズ『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』の放送が始まり、もはやエンターテインメントを語る上で、不可欠の存在となったアメコミ文化。本コーナーでは、そんなアメコミ作品の魅力や基礎知識、映画・ゲームなどの関連情報を紹介していこう。

【第0回はこちら】

 記念すべき【アメコミ道場】第1回で取り上げる作品は、第0回の次回予告で申し上げたとおり、みんな大好き『キック・アス』! 日本では、アーロン・ジョンソンとクロエ・グレース・モレッツ主演の映画版で有名となった本作です。先日、続編の『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』も公開された本作ですが、もとはマーベルコミックスの一レーベル“アイコン”から発売されている、れっきとしたアメコミ作品。それもDCコミックやマーべルコミックスにおける“スーパーヒーローもの”の歴史と問題点を踏まえた上で、それをエンターテインメントとして昇華させた画期的な作品なのです。

「イヤだ! 僕は人殺しはしない! だって僕はスーパーヒーローだからさ!」

「はぁ、何ソレ!? シルバーエイジか!」

(『キック・アス』マーク・ミラー/ジョン・ロミータ・Jr. 小学館集英社プロダクション刊)

 キック・アスことデイヴ・リゼウスキが、ヒットガールことミンディ・マクレイディから仲間になるように誘われたときの会話です。ここでヒットガールの台詞にある“シルバーエイジ”とは、アメコミの歴史における時代区分を指す用語で、1950年代から70年代にかけてを指しています。当時、アメコミの世界は『スーパーマン』のテレビシリーズが人気を呼び、マーベルコミックの編集者兼原作者のスタン・リーによって“ファンタスティック・フォー”“アイアンマン”“スパイダーマン”“X-メン”“アベンジャーズ”といった、今なお活躍するヒーローたちが次々と生み出され、第二次ヒーローブームといえる時代でした。

 しかし、その一方で、暴力表現や残酷描写の子どもたちへの悪影響が問題とされ、それらを規制する“コミックス倫理規定委員会”が、アメコミにおける事実上の検閲機関として機能し始めた時代でもあります。バイオレンスや犯罪、反社会的行為の描写を制限されたアメコミは“明るく正しい健全な作品”の制作を強いられました。前述のヒットガールの台詞「はぁ、何ソレ!? シルバーエイジか!」は、そうしたアメコミの歴史に触れながら、本作が“健全で勧善懲悪なヒーローものではない”という宣言でもあります。

 さて、そうした規制に、数々のクリエイターたちが抵抗を続けたものの、青年から成人にかけての年長の読者離れは激しく、“アメコミは大人の読書に堪えうるものではない”という社会的評価は、こうして固まっていきました。ところが1986年、アメコミの歴史にさん然と輝く二つの作品が、奇しくもほぼ同時に発表されます。

 アラン・ムーア原作、デイブ・ギボンズ作画による『ウォッチメン』と、フランク・ミラーが原作と作画を手がけた『バットマン:ダークナイト・リターンズ』です。

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