“Flashアニメ”が引き起こした混乱 新珍語“HTML5アニメ”はどうなる?

1402_keroro.jpg『フラッシュアニメーション ケロロ』公式HPより。

 3月22日にアニメ『ケロロ軍曹』が、新シリーズ『ケロロ』としてアニマックスで放送される。この『ケロロ』は“Flashアニメ”によるものとしても注目されている。現在、当たり前のように使われている“Flashアニメ”という言葉だが、これまでその使用法をめぐって、さまざまな混乱を引き起こしてきた。

 先の『ケロロ』のサイトでは、“Flashアニメ”についての説明がなされている。そこでは「フラッシュアニメーションとは、主にAdobeのアニメーション制作ツールであるFlashというソフトウェアを使用して制作されるアニメーションである。<後略>」とある。この説明はまだマシなほうで、アニメ業界界隈の雑誌などでは紙幅の関係などもあるとはいえ、“Flashアニメ”について散々これまでされてきた説明は、不十分としか言えなかった。

 では“Flash”アニメとは一体何なのか? 結論を先に記すと、アニメーション制作においては、「制作のソフトウェアとして、Flashをメインで使用したアニメ」というだけのことに尽きる。しかし、完成したアニメ作品だけを見ても、そのアニメがFlashによって制作されたかどうかは、視聴者にはわからない。

 例えば『秘密結社鷹の爪』などを手がけるDLEは、Flashでのアニメ制作で知られている。しかし、同社の『かよえ!チュー学』などは、一見するとFlashで制作されているように見えるが、実はFlashで制作されていない。Flashを使うことが多いスタジオだからといって、その作品がすなわち“Flashアニメ”ということはできないのだ。

 反対に、過去の例として、03年に動画やゲームを配信していた「Shockwave.com(日本版)」にて、アニメーション作家・加藤久仁生さんの『或る旅人の日記』が人気を博していた。09年に『つみきのいえ』でアカデミー賞を受賞する加藤久仁生さんだが、もともとは映像制作ソフト「After Effects」のユーザーとして知られていた。しかし、『或る旅人の日記』のみ、Flashで制作するという試みが採られていたのだ。こうしたことからもわかるように、「この作品は“Flashアニメ”か?」という問いに対する答えは、制作者の自己申告に委ねられる。

 加えて、Flashについてややこしいのは、同ソフトが、アニメーション制作だけでなくYouTubeやニコニコ動画などのサイト構築に至るまで、多面的に用いられてきたところにある。90年代後半に登場した時点で、Flashはイラストやアニメーション、ミニゲームの制作が主な目的として利用されていたが、十数年を経て、あらゆる場面で利用されるという、アニメーション制作の側面でしか見ていなかった人が気づかないうちに劇的変化を遂げた。

 そのためFlashを使う人々の中でも、制作者が所属する界隈や業界(IT業界やアニメ業界)によって、Flashについて得ている情報が異なるため、同ソフトに対する認識にズレが生じたままだ。その影響もあり、“ネットで公開されている作品=Flashアニメ”だと、今でも視聴者から思われている可能性が大いにある。

 この原因は、ネット上において“Flashアニメ”の定義は「Flashで制作しているかどうか」でなく、「Flashプレイヤーで動作する設定のアニメ」という認識となる場合があるからだ。アニメ作品を見ただけで、「このアニメはFlashを使って制作されたかどうか?」というのを見分けるのは、制作側でも不可能だ。そのため、この混乱が視聴者のリテラシー不足によって生じているとは言えない。ときに「紙芝居」の意味合いで使用されるなど、視聴者がイメージする“Flashアニメ”の印象が必ずしも一致していないからでもある。

 一方、10年には、アップルがiPhoneやiPadにて動作環境からFlashを拒否したことが大々的に報じられ、各サイトが対応に追われた。またFlashを提供するアドビも、11年にAndroid向けのFlashプレイヤーの開発を終了した。

 こうした動きを受けて、スマートフォンとタブレットでのアプリやブラウザの動作環境として、一気に導入が進んだのがHTML5である。アドビはアドビでスマートフォンとタブレットの市場を看過できないことから、同年にHTML5向けの開発ソフトとして「Adobe Edge Animate」などをリリースしている。

 HTML5は平たく言うと、サイト構築のためのHTMLなどの表記方法がバージョンアップしたものだが、そのソフトの副産物としてなのか“HTML5アニメ”という呼称も登場している。

 ちなみにアドビはこのAdobe Edge Animateを使用して制作した作品を“HTMLアニメーション”と呼んでいる。Flashについて、当時の開発元のマクロメディアは、“Webアニメーション”とも呼んでいた。

 今後、HTML5にどのような歴史が刻まれていくのかは今のところ不明であるが、ソフトの「Flash」が“Flashアニメ”という言葉の混乱を引き起こしたことが教訓として生かされるかどうか、今後を注視しておきたい。
(文/真狩祐志)

■『ケロロ軍曹』
http://www.keroro.com/flashanime/

“Flashアニメ”が引き起こした混乱 新珍語“HTML5アニメ”はどうなる?のページです。おたぽるは、アニメ話題・騒動の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!