"アニメ”と”歴史”を創るアニメスタジオ【第1回/後編】

現行ビジネスモデルの走り!?サンライズがアニメ業界にもたらしたもの

現行ビジネスモデルの走り!?サンライズがアニメ業界にもたらしたものの画像1サンライズアニメ2001(辰巳出版)※参考書籍『サンライズアニメ大全史』の改訂版。

――アニメはアニメ制作会社によって作られる! それは当然のことながら、これまでアニメスタジオは、「スタジオジブリ」を除いて、一部の好事家によって語られる存在に過ぎなかった。しかし、近年アニメスタジオはブランド化が進み、古くは「サンライズ」から「東映アニメーション」、近年では「京アニ」「シャフト」など、アニメ制作会社は広く語られるようになっている。そこで文献などを参考に、改めて各アニメスタジオを概観。アニメ制作会社を通じて、アニメ業界の歴史とその変遷を紐解いていこう。

【第1回】サンライズ
前編はこちら

■アニメ業界の変遷とともに歩んだ~1980年代後半

・キータイトル……『シティハンター』
         (TM NETWORKの主題歌もヒットした、原作ものアニメ)
         『鎧伝サムライトルーパー』
         (女性人気が爆発。声優が歌うレコードもヒット)
・キーパーソン……今川泰宏
         (『ミスター味っ子』を監督。ダイナミックな演出が話題を呼んだ)
         池田成
         (『サムライトルーパー』前半の監督。
          以降、サンライズ美少年アニメを数多く手がけることになる)
・キーワード……原作ものアニメ、美少年、実写映画

 80年代半ば頃より、ファミコン人気や「ビックリマンシール」など、新たなホビーの出現の影響でロボットアニメブームにも陰りが見え始める。この頃よりサンライズは原作ものも手掛け始める。と、同時にそれまでの「ロボットもの」「SFもの」のサンライズというイメージを払しょくするかのように、さまざまなジャンルの作品を発表するようになる。『クラッシャージョウ』と同じく、高千穂遙原作の小説をアニメ化した『ダーティペア』(85年)ではSF的な作風でありながら、セクシーなコスチュームに身を包んだ美女の活躍を描くという内容で、いわゆるオタク層を中心に人気が集中。美少女ものの走りといえる。

 株式会社サンライズに社名を変更した1987年には、劇場用作品『バツ&テリー』、テレビアニメシリーズ『シティハンター』『ミスター味っ子』を発表した。『ミスター味っ子』は、それまでサンライズがロボットアニメで培ってきたダイナミックな演出で原作を凌駕するパワーを作品にもたらし、『シティハンター』はスタイリッシュな映像とメリハリの効いたアクション描写で好評を得た。特に『シティハンター』はサンライズの原作ものアニメとしては、アニメファンのみならず一般層を巻き込んでヒットを記録した最初のタイトルとなった。

 また、この頃東映動画(現・東映アニメーション)制作の、美少年がプロテクターを装着する等身大ヒーローものアニメ『聖闘士星矢』が大ヒット。そのフォロワーである『鎧伝サムライトルーパー』も大きな話題を呼んだ。商業的にはヒットしたとは言い難い本作だが、主人公の少年5人組に女性アニメファンの人気が集中。キャラクターを演じる声優たちによるユニットのレコードや、OVAが次々と制作された。いわば本作は、玩具やお菓子といったライセンス商品で利益を得る従来の収益構造から、キャラクターグッズやパッケージ商品で製作費をリクープする現在のスタイルへの転換を予見させるタイトルだったといえる。

 このように振り返ると、80年代のサンライズは『ガンダム』を通じてアニメの新時代到来を宣言し、様々なアニメを提示することでサブカルチャーとして世の中に定着させ、そしてパッケージ商品が商売として定着するようになる90年代への橋渡しを80年代末の『サムライトルーパー』で示したと言える。70年代、「アマチュア」と揶揄されていたサンライズは、80年代に入り持ち前の開拓精神を総動員しアニメ業界の最先端を切り開き続けた、まさに開拓者だったのだ。

 ちなみにこの時期にサンライズは、『ガンヘッド』(1989年)、『チャイナシャドー』(1990年)の2作品で実写映像にも進出していた。しかし、その後この手の企画には一切かかわっていないことから、両作品の結果はお察しいただきたい。やはり向き不向きはあるようだ。

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