アニメ『日本沈没2020』沈没した日本の運命は消滅?それとも再生?第10話

Netflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』公式サイトより

 最初から物議を醸しだしていたこの作品も、とうとう最終回を迎えた。

 目の前で波にさらわれてしまった古賀にショックを受ける面々。だが、そこで立ち止まっているわけにはいかない。彼が命がけで守ったデータがあるのだ。

 カイトの操作でそのデータから地図を読み取ることができることがわかる。その地図を見てカイトはすぐさまソレが何を示すものかを理解したようだ。

 その地図が示していたのは、沈んだ日本が再度隆起する場所。そう、田所博士と小野寺さんは日本が沈む場所だけでなく隆起する場所も予測しデータとして残していたのだ。この情報を聞いた歩たちは早くこのデータが示す場所に行きたい! と言い出し、近くに浮いていたものを利用して即席の筏を作り始めに隆起してくる場所へと向かうことに。

 今まで電動で動くものにのって移動していただけに、手作り筏は進むのも遅いが、なんとか目的の地点に到着。だが、隆起が今すぐ起きるかどうかなどわからない、といわれてしまう。だが、この地点にはなんとも都合よくカイトのマークがついた気球が落ちていた。カイトはその気球に空気を入れ、あっという間に一人上空へと飛び立っていってしまう。
 
 沈没した後、そこそこ苦楽を共にしてきた歩と剛は突如一人でいってしまったカイトの行動に呆然とするしかない。振り返ってみれば1話から極端にサバイバル能力のなかった二人。それゆえに姉弟と小野寺さんだけが残されてしまうと一気に生存率が下がってしまったように見える。だが、予想に反してこの3人の元にはすぐに迎えがやってくるのだ。

 それはカイトのおかげ。彼はただたんにこの姉弟たちを置いていったのではなく、上空にあるだろう電波を拾い、助けを呼ぼうとしていたのだ。カイトが飛び立って本当にすぐにやってきたのでそんな偶然あるわけないと言いたくなるけれどもいかんせん尺もないから仕方ない。

 カイトのおかげで、姉弟と小野寺は救助され、日本だった場所から海外の病院へと搬送された。

 怪我を負っていた歩の足は感染症を引き起こし、足の切断を余儀なくされる。陸上選手だった歩にとって足は武器である。辛い出来事ではあるが、今まで沢山の命が失われていった姿をみていたのだから、選択は一つである。

 手術を終えた歩が寝ていると、彼女の手元に残ったスマホにメッセージが届く。それは亡くなったはずの母や古賀などがスマホで彼女の誕生日を祝って撮っていた動画だった。15歳の誕生日になったら届くようにと設定されていたらしく、今は剛以外の者は近くにいないことを思うと、ただただ泣けてくる動画だ。

 そこから時は流れ8年後。日本は沈没し、一度人口はゼロになったものの生存者が志願し、「日本人」というカテゴリーは残された。さらに田所博士と小野寺の研究データのおかげで隆起する場所の特定ができ、少しずつではあるが復興が進んでいる。その時はオリンピックが開催され、日本代表の選手も参加している様子が描かれた。

 さらに日本のデータをバーチャル的にみる手法が発達し、誰でも好きなように過去の日本をアーカイブで閲覧することが可能になった。

 今私たちの前に当たり前にある日常の日本。沈没後に見ると、そのなんと愛しいことか。

 歩と剛は日本沈没にあたっての体験記を本にまとめ出版。剛はeスポーツの日本代表に、そして歩は足を切断した後も陸上を続けパラリンピックのアスリートとして走り幅跳びの選手として活躍していた。

 小野寺はカイトとして体が動かせないながらもテクノロジーの力で動画の配信などを行っていた。肝心のカイト本人は生きているのか死んでいるのか、曖昧な描写がされていた。そもそも彼が女だったかもしれないみたいな描写もあって、混乱させられた。
 
 スタートから一貫して、理不尽な自然の猛威に脅かされてきた主人公たち。ツッコミどころも多く、ありえないと思う場面も多々あったがそれでも、あっという間に人は死に、運命を分ける。だが、多少の思いやりや助け合いが小さく命を救っていき歩たちは未来に生きることができた。

 日本が本当に沈没してしまう未来はやってくるかもしれない。日本だけでなく世界中で様々な自然の猛威が人間を脅かしている。

 そんな時にカイトのような特別キャラクターが自分の周りに登場してくれる確率はほぼないだろう。

 自分の持っている身体能力と知識を総動員して生き残らなければならなくなった時、自分を活かすのは誰かに差し伸べた手なのかもしれない。
 
 今作や「マグニチュード8.0」など地震や台風、津波など身近に起こる自然災害を題材にした作品は、身近な題材であるからこそ余計に恐怖が増す。そこから目を背けず、変に揶揄せず自分をその世界に投影することで見えてくるものがあると強く思わされた。来てほしくない未来。だけどいつか来るかもしれない未来。私たちは歩たちがたどり着いたように、日本の死を受け入れて前に進めるのだろうか。
(文=三澤凛)

アニメ『日本沈没2020』沈没した日本の運命は消滅?それとも再生?第10話のページです。おたぽるは、アニメ作品レビューの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!