『ルパン三世 THE FIRST』はちょっと……という人はモンキー・パンチ監督『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』を観よう!

■原作マンガの面影残すハードボイルドさが格好いい!

『ルパン三世』は、TVアニメシリーズが全6シリーズ、劇場アニメが10本、TVアニメスペシャルが27本も制作されています。アニメクリエーターによって解釈が微妙に異なりますから、明るいルパンもいれば、シリアスなルパンもいますし、その中間ぐらいのルパンもいます。

『ルパン三世 THE FIRST』はトレーラーなどを見る限り、明るくお人好しでファミリー向けなルパンとして描かれていそうですが、『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』は割とハードボイルド寄りです。

 お話からして、「国王と王子パニシュを殺害した首狩将軍が独裁政権となっていたズフ国。将軍は国王が残した漂流島財宝を狙っていたが、ナノマシンを用いた防備の前に、軍隊を動かしても、財宝を手にすることができなかった。ルパンもその財宝を狙うが、あえなく撤退。

 ルパンは漂流島の秘密の鍵を握るとされる将軍の娘エメラをさらうが、銭形が仕掛けたおとり作戦にはまってしまい、アジトを将軍の軍隊に急襲される。そしてエメラの身代わりとなってルパンのアジトに潜入した女性工作員オーリは、ルパンたちから奇妙な話を聞かされる」……というシリアスな構成になっています。

 作中でそれなりにサクサクとキャラクターは死にますし、独裁国家を舞台としているだけあって、重苦しさもあります。コミカルなシーンも抑えめ。

 加えて、『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』は、キャラクターたちの距離感が素晴らしいんです。ルパン一味は必要以上にべたべたと仲良くありません。一臂狼たちがたまたま集結しただけといった風情で、ルパンとの不二子との絡みも少ないです。

 銭形警部は座ったまま警官3人を軽く捻り、一度ならず2度3度ルパンをやり込めるなど優秀に描かれており、ルパンと慣れあうこともありません。

 そういえば、『ルパン三世 THE FIRST』では銭形警部もルパン一味みたいな距離になっていますよね。「あれではいかんのだ、銭型はルパンにとって不倶戴天のライバルではなくては」という方であれば、『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』は気持ちよく観れるはずです。

■何より『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』パンフレットが素晴らしい件

『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』は、実在の兵器T-72や重機関銃、自走榴弾砲、RPG-7などを格好良く描いていますし、キャラクタービジュアルも原作マンガに近く、骨太です。

 また、ルパン三世が変装の達人である、という設定が物語の根幹に大きく関わっている点なども、古くからのファンにはうれしいところ。ストーリーの切り返しは見事ですし、先述のゲストヒロイン・オーリとの関係性もアダルトで格好いい。

 なにせ、オーリがルパンの変装に気づいたのも、「(キスを交わしたとき)彼、タバコ吸わなかったから」という理由ですから。ゲストヒロインをチヤホヤして、助けて守るだけではないルパンとオーリの関係性は、サスペンスフルでとても魅力的です。

 さて、制作にモンキー・パンチ先生自らがガッツリと関わった『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』のパンフレットには、先生のロングインタビューが掲載されています。その内容が素晴らしいんです。

 銭形警部のフルネームは、当初は銭型平一だったはずが、写植ミスで幸一になってしまったこと。五右エ門は、沖田総司をイメージしていたこと。

 特に興味深いのは、『ルパン三世』の各アニメ作品に対する、原作者の思いです。

「宮崎(駿)のルパンは、カップラーメンなんて食べてますけれどネ。そうじゃない。ラーメン喰うのは銭型の方で、自分はステーキを食べているというのがボクのルパンなんだヨ」

「ボクはいろいろなルパンがあっていいと思うんですヨ。それぞれ味があってネ。やはり原点はあくまでも第一回目のテレビシリーズですから、それさえ踏まえてもらえればネ。だから宮崎流ルパンがあってもかまわない。(中略)あの人の功績はタイヘンなモノですヨ」

「ただネ、その後に続いてくれる演出の人たちというのが皆、宮崎さんに引っ張られているんだネ。ルパンたるモノ女性とか子供に優しくみたいなところがあって、ワイルドな感じや、どこかに危険性をハラんでいるみたいな、そういう匂いが消えてしまっているのですヨ」

 こういったモンキー・パンチ先生の言葉が、山崎貴監督に届いているといいのですが。

 なお、『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(12年)に始まり、『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(14年)、『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』(17年)、『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』(19年)とシリーズを重ねているスピンオフシリーズは、ハードボイルドな作品となっていますので、『ルパン三世 THE FIRST』がアレだった時は、『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』とあわせてチェックしてみましょう。
(文・馬場ゆうすけ)

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