【ルポルタージュ】コスプレイヤー……それは、ただの現在に過ぎない自分。『アスペちゃん』そして、オフパコマンガ。赤木クロの目指す世界

【ルポルタージュ】コスプレイヤー……それは、ただの現在に過ぎない自分。『アスペちゃん』そして、オフパコマンガ。赤木クロの目指す世界の画像5

 パラパラとページをめくり、裏表紙を見た時。その本以上のものを、この夏のコミックマーケットで手に入れることはできないのではないかと思った。そこには、水着ネロの衣装を身にまとった赤木自身の写真。丸く囲まれた写真の下には、こう記されていた。

“私が描きました”

 スーパーマーケットで販売されている野菜に、時々ついている表示。「私が作りました」という言葉が添えられた農家の人たちが微笑む写真のようだった。それは、奇妙だけど、ほのぼのとしていた。そして、精魂込めて描いたのだということを、押しつけがましくなく伝えてくれているような気がした。

 帰宅してから、改めてページを開くと、今度は「えっ!」と、声を出して驚いてしまった。

 1ページ目に記されたのは人物紹介。そこには、エロマンガの必然として男に凌辱されるヒロインと、凌辱するほうの男。そして、その他大勢の設定が記されていた。

曖昧みぃ(19)
 キャスネロのコスプレをしている普通のコスプレイヤー。バイトを探している。

菌 太魔男(47)
 同人コスプレAVサークル「GOLDBOY」を運営している。GOLDBOYは金を持っている男という意味でつけた。(註:赤木によれば、元ネタは『1・2の三四郎』の金田麻男だという)

 エロマンガの文法として、わざわざ1ページ目に人物紹介を記載するという手法は、ついぞみたことがない。それに、名付けのセンスが独特すぎた。昭和のエロマンガだったらあったかも知れない一周回った泥臭さを感じさせる独特のセンス。それを、平成最後の年に最先端のジャンルともいえる「コスROM」のサークルが。それも、被写体であるコスプレイヤー本人がやっている。それは、別にウケ狙いでやっているようには見えなかった。なぜなら、絵の巧拙も気にならない生々しいドラマ性が本編にはあったからだ。

 物語は、とある有名レイヤーが、菌太魔男の運営する同人コスプレAVサークルの動画に出演しているかのようなツイートをバラ撒かれる風評被害を受けるところから始まり、太魔男がさらなる利益追求のために曖昧みぃというレイヤーを騙して、コミケ会場でハメ撮り撮影を敢行するというストーリー。

 近年、倫理規制の強化を避けてアダルトビデオを制作する業者が同人コスプレAVへと移行している動きは実際にある。そこでは、注目を高めるために、あたかも本物の人気コスプレイヤーが、顔をモザイクで隠して出演しているかのような情報が振りまかれることがしばしばある。なにより「コスプレイヤー」には敷居の低さがある。会場に行ってコスプレをすれば「コスプレイヤーである」と、言い切れてしまう。そうした、ともすれば「いかがわしい」とも評される背景を知っていればこその生々しさがページの端々から匂っている。そうした血の通った人間の匂いのする生々しさは、登場人物の吐くセリフにも現れていた。

「女を間近に見れないオタク共は、同じ衣装ってだけで本人だと思い込むからな~!」

「エロ同人よりやっぱ本物だよな」

「あいつレイヤーは全員エロいとか裏●ノ マガジンのクソ記事並みのこと言ってたし」

 一面では、読者に対してすら容赦ない言葉が、あちこちに散りばめられていた。裏表のない言葉で描かれる『アスペちゃん』。一方、こちらの作品では突き刺さるような言葉を次から次へと重ねていく。

『アスペちゃん』が読者と寄り添っているような感覚を与えるのに対して、こちらは股間と脳とを混乱と興奮の渦へとたたき込もうとする情念に満ちている。エロマンガにおいて、絵の巧拙はさほど重要なことではない。リピドーとか情念とかは、インクと紙を通して伝わってくる。もし、それがなければ、どんなに美麗な絵であっても読者にインパクトを与えることはない。

『パコり手のバラッド』には、常識的な性的な興奮ともまた違う興奮があった。「ほかに、どんな作品があるのだろうか、もっと読んでみたい……」。もう一冊、同じくコスプレイヤーを題材にした同人誌があったのに購入しなかったことを後悔した。

 赤木のTwitterを見ると、翌日、別のサークルでも同人誌を頒布していることがわかった。慌てて駆けつけて購入した、その同人誌『19才Gカップコスプレイヤー 浜風ちゃん』もまた、手に取ると熱さのある同人誌だった。こちらもまた読者が「これ絶対に登場人物は実在するだろう」と確信する作品だった。

【ルポルタージュ】コスプレイヤー……それは、ただの現在に過ぎない自分。『アスペちゃん』そして、オフパコマンガ。赤木クロの目指す世界の画像6
※画像の一部を編集部で加工しております

 赤木に、なにかを期待して取材を提案したのは同行していた編集者のほうだった。彼女は、また別の視点から赤木の頒布している姿を見ていた。

「あの楽しさは、なんなんでしょう。隣にいた売り子の男性(のちに赤木に尋ねたところ「格ゲーの師匠である『ストIII3rd』勢」とのことだった)も一緒になって、買いに来る人と一緒にお祭りの屋台みたいに楽しんでいる雰囲気……」

 それを創り出しているのは、赤木の存在感ではないかと思った。だったら、どうしてそういうものが生まれたのか。そして、これからどうなっていくのか。俄然興味がわいた。

「単にエッチなコスプレイヤーの紹介記事だったらやらないけど……そうじゃないのだったら、話を聞いてみたいな」

「もちろんですよ」

 もう数年の付き合いになる編集者は、話が早かった。

【ルポルタージュ】コスプレイヤー……それは、ただの現在に過ぎない自分。『アスペちゃん』そして、オフパコマンガ。赤木クロの目指す世界のページです。おたぽるは、コスプレギャラリーホビーの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

PICK UP ギャラリー
写真new
写真
写真
写真
写真
写真

ギャラリー一覧

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!