【劇場アニメレビュー】原作ファンも喜ぶ高クオリティー、清水富美加(現:千眼美子)も存在感を発揮!『東京喰種 トーキョーグール』

1707_tokyo490.jpg映画『東京喰種 トーキョーグール』公式サイトより

 今や漫画やアニメの実写映画化は珍しくもなんでもない事象ではあるが、SNSなどの発達に伴ってか、常に原作ファンからの厳しい目にさらされ、その分作る側も慎重に取り組まなければならなくなっているのもたしか。

 それこそ私が子どもの頃に作られた『あしたのジョー』(70年)だの『ゴルゴ13』(73&77年)だの、『男組』(75、76年)『野球狂の詩』(77年)『ドカベン』(77年)『サーキットの狼』(77年)『ドーベルマン刑事』(77)『瞳の中の訪問者』(77年・原作『ブラック・ジャック』)『火の鳥』(78)などなどなどなど(!?)、原作をリスペクトしながら作られた実写映画が当時どれだけあったかを考えると(せんだみつお主演の77年作『こちら葛飾区亀有公園前派出所』なんて、今なお封印作品になっている始末だ……。まあ、実はみんな憎めない映画ばかりでもありますけどね)、今のファンはある意味めぐまれていると思う。

 実際、結果としての出来不出来はともかくとして、原作と真摯に向き合う今の作り手側の姿勢は多くの作品で十分確立されているように思える。この7月だけでも『銀魂』や『心が叫びたがってるんだ。』といったマンガやアニメを原作とした実写化作品がお目見えしているが、それなりの評価を得ているようだし、私個人もかなり面白く見させてもらった(余談だが『銀魂』試写会の後、その内容に呆れ返って激怒していた老人、いやベテラン映画評論家の姿をお見かけしたが、逆にそれって作り手側の思うツボだなあと痛感することしきり)。

 7月29日に公開となった『東京喰種 トーキョーグール』の場合、ダーク・ファンタジーというジャンルゆえに、演出やキャスティングのセンスなどは必要最低限としても、今の日本の映像技術でその世界観をきちんと確立できるかということも大きな焦点となるだろうが、これが映画デビュー作となった萩原健太郎監督の目線は確実に原作をリスペクトしていることが容易に読み取れ、また人肉を喰らう異形の種族“喰種(グール)”を主題とすることでの数々の残酷描写を臆することなく、それでいてスタイリッシュな映像美で魅せることで、原作の非情な世界観を損なうことなくPG12のレイティングを実現させていることは大いに称賛すべきかと思う。

 キャスティングも、今回はグールの血を輸血されて半人半喰種と化した主人公の青年カネキ役の窪田正孝は、原作者・石田スイ自身のお墨付きもあって、まさにどんぴしゃり。気弱で優しく、しかし時折グールとしての残忍さをのぞかせてしまう二面性の発露もお見事で、その熱演ぶりにも嫌みがない。

 また、映画完成前からワイドショーを騒がせしてしまった清水富美加(現在は千眼美子と改名)だが、彼女が演じるヒロインのトーカも人を喰らうことでしか生きる術を持たないグールの哀しみをきちんと醸し出しており、巷では食人としての設定をかなり忌み嫌い、悩んでいたと報道されたりもしたが、それが本当だとしたら、逆にその苦境をバネにしての好演であったと讃えていいとも思うし、そもそも『仮面ライダーフォーゼ』(11~12年)はともかく、映画『HK 変態仮面』2部作(13&16年)ヒロインなど体を張った役どころを果敢にこなしてきた彼女ゆえ、本当にこの役が嫌だったのかと疑問に思ってしまうほどであった。

 逆に、カネキを最初に喰らおうとするリゼ役の蒼井優の切れっぷりや、飄々としたイメージを逆手に取ったCCG捜査官・真戸役の大泉洋もノリノリの怪演であったが、グールの隠れ家的存在の喫茶店あんていくの店長・吉村役の村井國夫のさりげない存在感に、この作品に潜むハートの温かさを感じた。

 また『東京喰種』はTVアニメシリーズ化(14~15年)が先になされており、そちらもかなりのハイクオリティを保持しているのだが、それゆえに実写版は原作漫画ファンとアニメファンの、微妙に異なったこだわりの視線にさらされる運命にもある(たとえば実写版『銀魂』は、私の周りではアニメ・ファンの評価が高く、原作漫画ファンの評価は低い)。

 しかし実写版『東京喰種』は漫画とアニメ、双方のファンの支持を大方得られると見た。それはやはり原作の世界観を違和感なく実写世界に再現することに心を砕き、それなりの成果が画から醸し出されているからに他ならない。さすがにグールの捕食器官・赫子を用いたバトル・シーンなどCG臭が否めない部分もあり、それは今後の課題かとも思われたが、それを補って余りあるのがドン・デイヴィスの音楽で、『マトリックス』3部作で知られる才人をハリウッドから招いての成果は十二分にもたらされていた。

『東京喰種』の根底に流れるものは、人の形をしながらも人を喰らわざるを得ないグールの“異形の哀しみ”という、これまで『サイボーグ009』『デビルマン』など日本の漫画やアニメで幾度も綴られてきたテーマであるが、そのモチーフを映画でも決しておろそかにせず大事にしながら取り組んだことが栄光の要因ではないだろうか。

 このスタッフ、このキャストならば、続編も見てみたいと思う(さすがに清水富美加だけは代えざるを得ないけど。でも、ならば誰が良いのだろう?)。
(文=増當竜也)

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