話題沸騰! 超ド級の×××アニメ『ユーリ!!! on ICE』とは一体何だったのか

161229_yuri_01.jpg『ユーリ!!! on ICE』。

 今期の覇権アニメといえば『ユーリ!!! on ICE』(テレビ朝日系。以下、『ユーリ』)。前情報は少なく、スケートのアニメって珍しいね~から始まった怒涛の展開に、腐女子はもちろんスケオタや男子ファン、海外まで各地で話題を攫っていった全12話。最終話を見終わった今、各地で台風一過のように「ユーリとは一体なんだったのか…」と囁かれている話題作を、筆者(14年目の古漬け腐女子)なりの観点でまとめてみました。

 勝生勇利、どこにでもいる日本のフィギュアスケート特別強化選手。グランプリファイナルでボロ負けして実家に帰ってきたある日、憧れの選手、ヴィクトル・ニキフォルフが「君のコーチになる」とやってくる。そして彼の元で練習と努力を重ねて”愛”を知り、中国大会、ロシア大会をなんとか勝ち抜いて2度目のグランプリファイナル出場へ。そして現役最後のスケートが始まる……。
 というあらすじでは、まっっっっったく説明できないこのアニメ。そもそもフィギュアスケート特別強化選手、普通じゃね―から! あらゆる前提が裏切られまくった後半はもはやミステリかと見紛うほどでしたね……。

 さて、そんな本作でダントツに目立っていたのは、やはりヴィクトルと勇利の「愛」。いまどき同人誌でも出てこないようなイチャつきぶりに「ホモすぎてやばい!」という軽率THE腐女子の妄言(と言い切れないのもこのアニメのすごいところ……)から、彼らの世界はLGBTを肯定しているという社会的な感想まで。逆に男同士の恋愛描写に尺を割きすぎでは?という意見もあり様々でした。

 私は6話までの裸のおつきあい♡(※温泉)やオトコの取り合い♡(※スケート対決)を見て「はぁ~これぐらいのホモならFree!で見たやろ」とナメてたところ、7話の熱烈なキッスで椅子から転げ落ちて、10話の指輪交換で何が何だかわからなくなってきた腐女子です。推しカプが公式でエンゲージリング交換したこと、人生でありました? 私はこれが初めて!!

161229_yuri_02.jpgいろいろありすぎた10話……。/『ユーリ!!! on ICE』公式サイトより。

 もはや腐向けってレベルの描写じゃなくない? やりすぎじゃない? いや、やりすぎだと思うのは腐女子だからじゃない!?(困惑)

 とテンションを上げてみましたが、作中でヴィクトルと勇利って「結婚おめでとー!」と言われて否定はしなかったけど、「好きだ(=LOVE)」という明確な告白はないんですよね。ヴィクトルの意味深な発言も冗談といえる範疇。なのでこのアニメを「男性同士の恋愛を描いたもの」と定義するのは違うと思っていて、海外ドラマの『SHERLOCK』や『TIGER & BUNNY』のようなブロマンス、バディ、『Free!』『おそ松さん』のような男子の青春群像劇、何かそういった系列だけど明確に”腐向け”ではない、と個人的に分類しています。

 そもそも男同士の恋愛をガチで描いていたとしたら、こんなに気軽に「ホモじゃんww」とは言えない!この微妙な腐女心、わかります!?

 そんなヴィクトルと勇利をはじめ、作中でも何度も「愛」という単語が出てきました。ユーリのアガペーな気持ちやミケーレの家族愛、ギオルギーの失恋など(笑)、あらゆる愛のかたちが描かれていて、成長するユーリをリリアが「愛を探している時ほど人は輝く」と評していましたが、まさにそれ。そして誰かが誰かの関係を否定することが一度もなく、例えば女性の婚約者を連れ歩くリア充JJが勇利とヴィクトルの結婚を否定せず、同じ恋する者同士として扱っている。

 これってとても重要だと思っていて、少女期に読んでいた「ホモは禁断の関係」「受け入れられない美しさ」といった世界観が妄想に根付いている古漬け腐女子としては、『ユーリ』のあっけらかんとした扱いに結構驚いていたりします。かといって全員がホモのBLによるBLのための世界でもなく、ただ日常の中にヴィクトルと勇利の関係がある……人間の価値観が変われば、BLのお約束も変わっていくのでしょうか。男同士の不毛さという萌えにオメガバースが芽生えたように、『ユーリ』は視聴者に「愛」を提唱している。

「愛」とは、個人と個人の間に作られる関係性ひとつひとつのことである……と、私は定義しています。これからも変化し続けるけど決して離れることはない、世界でたった1つのヴィクトルと勇利の関係。その最高峰が最終話のエキシビジョンで、スケートにつまらなさを感じていたヴィクトルが演じた「離れずそばにいて」を、人生のどん底にいた勇利が演じたことで物語が始まり、最後には二人で手を取って演じることにより完結する。勇利もヴィクトルも相手の幸せと自分の理想だけを描いて、結果的にエゴを生み出して何度となくすれ違ったけれど、もうこの二人の愛が揺らぐことはないんだな……としんみり震えました。そしてそんな尊いものに「師弟愛」「性愛」「敬愛」など名前をつけてしまうのはあまりにももったいないなぁ、と。

161229_yuri_03.jpg『ユーリ!!! on ICE』公式Twitter(@yurionice_PR)より。

 勇利とヴィクトルの関係を象徴する言葉といえばプログラム名であり勇利の名言である「離れずそばにいて」、そして「僕が勝つって僕より信じて」。細かい関係性はいろいろあれど、愛という大枠は「誰よりも相手を信じて受け止める」という行為なのかと思います。ミケーレとサーラがお互いを信じて離れ……て……いまいち離れてないけど離れたことも、ボロボロのJJを支える婚約者の涙も。この物語はどの選手にも必ず信じて支えてくれる人がいて、それがすごくいいなぁと作中ずっと感じていました。だから彼らは何度も氷上に立てるんだな、と。

 そして去年のグランプリファイナルで惨敗して彷徨う勇利に必要なものは圧倒的強者(=ヴィクトル)からの無条件の肯定で、たくさんのヴィクトルで満たされた今、勇利はもうヴィクトルが側にいなくても自分で勝利を確信できるようになった。だからヴィクトルは、同じリンクで争う選手として新たな関係を作ることを決められた……う、美しすぎるやろ~~!!!

 そして勇利とヴィクトルを語るのに欠かせない第二の主人公、ユーリ・プリセツキー。ダメな大人2人に挟まれて一番まともな15歳!(笑)
 最初こそ何このロシアンヤンキー……と思いましたが、本当に美しいロシアの妖精に成長して驚くばかり。その成長を支えたのは勇利とは真逆の「離別」「反発」そして「プライド」。ヤコフとヴィクトルの元でのびのび暮らしていたユーリが外の世界に飛び出して、友達やライバルを知る。その離別にこそ信頼がある、もう一人のユーリとヴィクトルの関係もまた「愛」だなぁと思います。

161229_yuri_04.jpg『ユーリ!!! on ICE』公式Twitter(@yurionice_PR)より。

 前半ではヴィクトルと勇利から見て子供のように描かれていたユーリが、最終話でヴィクトルから”勇利をリンクに連れて来られる対等なシニアスケート選手”として想いを託され、そしてヴィクトルにしか目を輝かせなかった勇利を覚醒させた瞬間、本当に強くなったな……! と胸が熱くなりました。引退がもう遠くない場所に見えている27歳のヴィクトル、23歳の勇利にとって、これから10年以上滑れるユーリの存在はどれほど眩しくて駆り立てられるものなんだろう……。勇利の中にヴィクトルがいて、ヤコフがユーリのスケートにヴィクトルを見出したように、ヴィクトルの中にもきっと勇利とユーリがたくさんいるのだと思います。
 しかしヴィクトル、抱きつけば許されると思ってないか。この諏訪部!

さて、『ユーリ!!! on ICE』とは一体何だったのか。

 結論、私は『ユーリ』って見る人を写す鏡のような作品だなと思っています。今回はヴィクトルと勇利をメインに考察しましたが、ピチットやクリスやJJにもそれぞれ信じてくれる人がいて、ここまでたどり着くまでの過去があって。そこにある関係に名前をつけようとした時、見る人の心がほんのりと映し出される。そしてこの物語を「面白い!」と感じる……のかもしれません。
 まさに『終わりのない物語ほど美しいものはない』という久保先生の名言を(最終話にも出てきましたね!)見事走りきった名作でした。

 1期が終わっても彼らの戦いはまだまだ続く。そんな日々の中でどうか彼らが、氷の上のすべてを、氷からつながっているすべてを、愛と呼ぶ世界でありますように。
(文/祭屋みきちんぽぽ)

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